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悪魔の天使-Sacred Knight-

マルクト神国とマスティマ連邦の現国境――オルレアン。

そこでは、今日もマルクト神国軍と反マルクト軍の戦いが続いていた。

その戦場にあるのはチーム・ブローウィングの姿。

「激しいな……さすがに反マルクト筆頭の国――マスティマ連邦との境目だ」

「ですわねぇ……駆逐装騎もそうですが、いろいろと手を尽くしているみたいですわ」

撃ち放たれる駆逐装騎ベルフェゴールのカートリッジレールガンの弾丸の他、魔電霊子砲の光線も見える。

それは駆逐装騎の攻撃ではない。

「あれが噂の牽引型の魔電霊子砲」

「牽いてるのは支援装騎ベルベリト、ですね」

支援装騎ベルベリト――――マルクトの猛攻に対し、投入されたその装騎は、ベルゼビュートほどの性能も、ベルフェゴールのような長射程攻撃も行えない。

しかし、その特徴は戦闘能力を削ってまで増加させたアズル保有量。

ベルゼビュートに無理矢理アズルタンクを増設した為、移動などに難が出てしまった駆逐装騎ベルフェゴールと違い、予めのそういうことを織り込み済みで設計されている。

と言っても、足回りは良いが、腕部に重量があり関節の可動域が狭い為、自ら武器を使用し戦う――と言うことは難しくなってしまったのだが。

代わりに牽引式の魔電霊子砲を持ち、その牽引霊子砲を扱い駆逐装騎のような動きをするのがこの装騎の戦い方だった。

「でもま、イマドキあの程度の魔電霊子砲でビビることはないな」

「ぶっ飛ばしてやるんですよォ!!」

インディゴシステムにより莫大なアズルを行使できるマルクト装騎であれば、あの程度の魔電霊子砲なら防ぐことは容易。

最も、その扱い方になれてない騎使がまだまだ多い為、中々この戦線を突破できないということもあるだろうが。

「それでも油断は大敵ですわ」

「そうですね……ツバサ先輩、行きますか?」

「ああ。GO! ブローウィング――」

「「「「GO!!」」」」

アズルの輝きを纏い、装騎メゾサイクロン、装騎スネグーラチカЛ、装騎ジェイペッパー、装騎スパロー2Rが駆け抜ける。

次々と装騎ベルゼビュート、ベルフェゴール、ベルベリトを撃破していく中、スズメが一騎の奇妙な装騎と遭遇した。

「こちらスパロー、奇妙な機甲装騎と接触。データにありません!」

「奇妙な装騎……どんな装騎だ?」

「何か――人形パネンカみたいな……」

「人形、ですの?」

スズメの言う通り、それは人形の――白銀の甲冑を着こんだ金髪の、少女のような姿をした機甲装騎。

装騎スパロー2Rのウェーブナイフと、“パネンカ”の持つ突撃槍ランスがぶつかり合う。

その瞬間、スズメは思った。

「この騎使――――強い! チャイカ先輩!」

「行きますわ!」

スズメは素早くチャイカへと援護射撃を要請する。

装騎スネグーラチカЛはリディニーク・ザ・ヴァースの銃口をパネンカへと向けると、アズルをパネンカへと撃ち放った。

装騎スパロー2Rはパネンカを引き付け、瞬時に回避行動をとる。

刹那、アズルの閃きがパネンカへと走った。

「! 魔力障壁!!」

リディニーク・ザ・ヴァースの砲撃がパネンカへと命中する直前、空間の歪みがその1撃を阻む。

「もしかして、魔術騎――――ううん、違う」

「魔術騎の反応を確認しましたわ! データにはありませんが……」

操舵輪シュトイアラドみたいなのを背負ってる機甲装騎か!」

「ええ」

ツバサの言う通り、その装騎は背後に操舵輪のような突起物の出た円形のパーツをつけている。

どことなくマルクト装騎っぽさもあり、恐らくはマルクト神国の装騎を改造したものだろう。

「何でもいいんですよォ! ぶっ飛ばせばいいんですよォ!!」

「迂闊に近づくとぶっ飛ばす前にぶっ飛ばされるから!」

逸るマッハにツバサがそう叫んだ。

「とりあえず、このパネンカは私が何とかしてみます!」

先ほどからパネンカと交戦を続けているスズメだが、改めてそうツバサたちに知らせる。

「分かった。マッハちゃんをスズメちゃんの援護に回す。いいな?」

「助かります!」

「そんじゃあ、チャイカ。アタシらはあのシュトイアラドを何とかするぞ!」

「ええ」

装騎スパロー2Rがパネンカと白兵戦を繰り広げる間に、装騎ジェイペッパーが合流した。

「マッハ先輩、互いの間合いを意識しましょう。時間差を付けての連携攻撃です!」

「分かってやがるんですよォ!! マハの力、ジェイペッパーの力、見せつけてやるんですよォ!!」

装騎スパロー2Rがまず先陣を切る。

ブレードエッジを展開し、レイ・エッジソードを交叉させる切断攻撃を放つが、その1撃をパネンカは回避する。

そこへ装騎ジェイペッパーが素早く接近、右足を横薙ぎに払い、蹴りを放つ。

その蹴りを軽くいなしながらパネンカが放った突撃槍ランスの1撃。

その1撃は装騎ジェイペッパーの肩部装甲を削っただけではあったが、鋭い1撃だ。

モチロン、その1撃のスキをスズメが見逃す筈もなく、そこへとレイ・エッジを撃ち込む。

「ロンゴミニアド内蔵型!? マリアさんと同じ武器……!」

だが、そのレイ・エッジは突撃槍ランスから放たれた魔電霊子砲ロンゴミニアドによって防がれた。

アズルの輝きがスズメとマッハの視界を奪ったその瞬間に、激しい衝撃が襲い掛かる。

「ぐぅっ!」

「うおぁ!?」

それは、パネンカが横薙ぎに払った突撃槍ランスが装騎スパロー2R、装騎ジェイペッパーを打ち付けた衝撃。

装騎スパロー2Rと装騎ジェイペッパーは素早く後退し、パネンカから間合いを取った。

「マッハ先輩! ブルーミングウィンドで行きましょう!」

「合点承知の助なんですよ!」

スズメの言葉にマッハが頷き、装騎ジェイペッパーがパネンカに向かって駆け出す。

インディゴドライブによる超加速により、一瞬でパネンカの正面に飛び出した。

そこを狙って放たれる、パネンカの持つ突撃槍の1撃。

「その攻撃は予想済み何ですよォ!」

大人しく当たる訳はもちろんない。

そのまま、全速力で装騎ジェイペッパーはパネンカも周りをグルグルと回る。

「行きます、レイ・エッジ!」

そこに装騎スパロー2Rがレイ・エッジを撃ち込んだ。

相手の周囲を装騎ジェイペッパーが高速移動をすることで撹乱。

そこに、装騎スパロー2Rがレイ・エッジによる射撃攻撃を行うというのがこのブルーミングウィンドと言う作戦だった。

「マハも行くんですよォ!」

もちろん、装騎ジェイペッパーも相手の動きを見て蹴りを加える。

装騎スパロー2Rも跳躍をし、走り回り、ポジションを変えながら敵に狙われないようにする。

「シミュレーターで死ぬほど練習したこのマハ様とスズメ後輩のコンビネーションアタック! 抜け出せるものなら抜け出してみやがるんですよ!!」

意気揚々と言い放つマッハだが、スズメはどこか落ち着きを感じる相手の姿に不安を感じた。

不意に、パネンカが突撃槍を地面に向ける。

「――――! マッハ先輩、下がって!」

刹那、アズルの輝きが一気に放出される。

「うおおお!?」

アズルの輝きが周囲を照らすと同時に、強烈な衝撃が周囲に放たれた。

装騎ジェイペッパーの体も衝撃が揺らし、そしてアズルの熱が焼き付ける。

「バースト技でやがりますか!? それとも自爆!?」

「ある意味どっちも! マッハ先輩、気を付け――――」

「うごぁ!!??」

スズメが声を上げた瞬間、装騎ジェイペッパーの体をパネンカが殴り飛ばした。

その衝撃に叫び声を上げるマッハ。

アズルの輝きと、立ち上がった土煙が晴れた後――そこに立っていたのは。

「鎧が――脱げてますね」

鎧が脱げ、人形のような素体が露わになったパネンカの姿だった。

パネンカは地面に突き刺さったバーストにより自壊した突撃槍をつかみ取る。

焼け焦げ、まるで片手剣ような長さになっているが、だが攻撃に使えると睨んだのだろう。

パネンカはそれを構えると装騎ジェイペッパーに接近。

格闘戦を装騎ジェイペッパーへと挑んできた。

「うおっ、なんなんですかこの動き! これが装騎の動きでやがりますかァ!?」

「マッハ先輩、援護をします!」

装騎スパロー2Rがレイ・エッジを撃ち放つが、それを軽々と回避する。

元々軽快な動きを見せていたパネンカが、その鎧を脱いだことでさらに柔軟な高速戦闘を行う。

その性能はマルクト装騎と互角か――――

「それ以上かも」

スズメは考えを巡らせる。

幸か不幸か、今この近場で交戦しているのはスズメとマッハの2人とパネンカだけ。

「援護は頼めそうもないし、これ以上長引かせたら増援が来る――――っ、マッハ先輩!」

「まさか、敵も倒せてないのに撤退する気でやがりますかぁ!?」

「合流です!」

「同じようなモンなんですよォ!」

「マッハ先輩だってステラソフィアに入れるほどの騎使ならわかりますよね!?」

いつも以上に語気が強くなるスズメ。

スズメは、それだけ危険を感じていた。

あの装騎は、あの騎使は、危険だと。

「うがぁぁあああ、撤退的前進なんですよォ! 味方と合流しやがりますよ!!」

「そうしましょう!」

装騎スパロー2Rがレイ・エッジをパネンカへと撃ち放ち、足止めをする。

そのスキに、装騎ジェイペッパーは加速したままパネンカの元から離脱。

そのまま、装騎スパロー2Rも共にその場から離れた。

「友軍も下がってますね……」

「どうやら撤退命令が出てるようだね」

スズメの言葉にツバサの声が答える。

「ツバサ先輩! 無事ですか!?」

「ああ。スズメちゃん達も大丈夫みたいだな……」

「それであの魔術騎は――――」

「シュトイアラドには逃げられた――――スズメちゃんもか」

「はい……あの騎使、強かったです。とても――――とても」

その後、チーム・ブローウィングにも撤退命令が出、ブローウィングも撤退をすることになる。

実地戦後のブリーフィングで判明したことだが、あの戦場にはマルクト神国製の機甲装騎も何騎が居たらしい。

スズメとマッハが戦った「パネンカ」や、ツバサとチャイカが戦った「シュトイアラド」も、マルクト装騎をベースとした改造騎ではないかと言う予測も。

何はともあれ、今回の実地戦も無事に幕を閉じたのだった。


暗い光の世界――――1人の少女の姿があった。

「反体制派が本格的に動き出したみたいね」

そう言う少女の声色はどこか楽しそう。

「もうそろそろね。彼女への最初の大きな試練は……」

少女の周りを取り囲むように、虚空に浮かぶ、複数の映像。

それは、今まで少女が見てきたスズメの姿。

「そして――――もうすぐ出してあげられるよ。あなたを――この、檻の中から」

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