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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:年末年始編
181/322

かるたをしよう!

「みんな、新年最初の授業よ! 元気いっぱいいってみよー!!」

「おー……」

冬休みが明けて最初のニーベルング・レイニ先生担当のチームワーク実践演習の授業が始まった。

「休み明けだからかなぁ? 元気が無いぞォ! 元気いっぱいいってみよー!!!」

「おー」

「と、いうことで今日のチームワーク実践演習は――――かるたをしてもらいまーす!」

「かるた! かるた!」

いまいちテンションの低い1年生達の中で、ただ1人異様にノリノリなのはチーム・リリィワーズ所属のアルク・アン・トワイ。

「かるた、ね……」

レイニ先生の言葉を聞いて、イザナが明らかにやる気のない声を上げる。

「イザナちゃんってかるたとか得意そうだよね」

「まぁ、ね」

「イザナちゃんのカッコイイところみたいなぁ!」

「――――ふっ」

だが、スズメの一声で態度が一変。

「何カッコつけてるのよ……」

「現金さー」

呆れたサリナとイヴァの言葉にも、だがイザナは動じない。

「それじゃあ、みんな! 4人1組チームを組んでね。その4人でかるたをやっちゃおう!」

と、言うことでスズメ達はかるたをすることになった。

チームにそれぞれ配られたかるたは共通のもの。

レイニ先生が読んだ読み札に対応する絵札を取るという形になる。

「それじゃ、いっくよ! いつ――」

「はいドーン」

レイニ先生が読み札を読み始めた瞬間、イザナが1枚の絵札を叩きとった。

「いつか私もMVK――――いの札ゲットよ」

「は、速かったね」

「速かったわね……」

「神速さー」

その速さに驚愕するスズメ達3人。

そんな空気にも構わず、レイニ先生は次の札を読み始める。

「ろう――」

「はいロー!」

イザナが手にしたのは“廊下の壁に装騎の武装”の絵札。

それからも、イザナの圧倒的な攻勢は続く。

「花より装騎」

「はの札ね」

「人気1番ソレイユ先輩」

「にっ!」

「本気のバトル! スズメVSイザナ」

「ほっ!」

結果は、言うまでもなくイザナの圧勝だった。

後半、スズメやサリナも何枚か取ることはできたのだが、どうしてもイザナには敵わない。

かるたが一段落付いたところでレイニ先生がこんなことを口にする。

「それじゃあ、それぞれのチームで勝った人は前に出てきてね!」

「…………え?」

レイニ先生の言葉にイザナは思わずそんな声を漏らす。

それぞれのチームから勝者となった1人がぞろぞろと前に出てくる。

その表情は、揚々と出てくるトワイを除いてイマイチ表情が浮かない。

まるで、これから起こる出来事を理解しているかのように……。

そして、その予感は的中した。

「今、前にちょうど8人いるから…………4人4人に分かれてもう1戦しちゃおうか!」

そう、それはこの機甲科1年の中で誰が1番かるたが強いのかを選ぶ戦いだったのだ!

「……ふぅ、何とか前に出ることは回避できましたね」

「いやいやいやいや、スズメちゃんって結構あくどい?」

「だからイザナちゃんをでーじ持ち上げてたば?」

「結果的にそうなるかな」

そうなったのだ。

「それじゃあ、2回戦! いってみよー!」

「おおーっ!!!!」

イザナと対戦する3人はトワイに加え、チーム・ミコマジック所属のアーチペラゴ・ミュティレネ、チーム・ヤソガミガハラ所属のアクアクリアス・ミヅハの3人だ。

そして2回戦が始まるが、最初の調子とは打って変わってイザナは中々動かない。

「イザナちゃん――!」

スズメの声にイザナが振り向く。

「私、見てるよ!」

「――――っ!!」

スズメの言葉に再びイザナの心に火が付いた。

「ヘンタ」

「へ、ねっ」

イザナの神速の如し素早さに、トワイ、ミュティレネ、ミヅハの3人の動きが止まる。

「はやーい!!」

「おお、ヒラサカ殿の本気! これはかわゆすですしー」

「ねむれる……しし」

“ヘンタイか!? 新聞部員の盗撮音”の絵札をヒラヒラしながら余裕が戻ってきているイザナ。

「スズメちゃんやけにイザナちゃんを煽るさー。どーしたば?」「実は……さっきレイニ先生がひのき・ひいらぎを持ってるのが見えたんです」

「ひのき・ひいらぎってまさか……」

サリナの呟きに続き、イヴァも何か合点のいったような表情を浮かべた。

「跳び上がれ! 装騎スパロー!」

「とっ!」

「チームメイトは第2の家族」

「ち、ですね」

「リスタート、ステラソフィアで本当の私デビュー!」

「り――――っ!」

「沼地で演習、泥合戦!」

「ぬは頂きました」

意外に、大人しそうなアクアクリアス・ミヅハがイザナの動きに負けず劣らずついてくる。

気づけば、イザナとミヅハの2人の戦いへと移り変わっていた。

そして、札は次々に取り、取られ――――そして、最後の1枚に。

この状況になると、最早刹那の見斬り。

互いに緊迫した空気でレイニ先生の言葉を待つ。

「る――――」

そして、決着はついた。

勝ったのは――――

「負けましたわ」

「ふっ」

スズメの応援が力になっているのか、イザナがミヅハより一瞬早く“ルートビア、なぜかカフェで飲み放題”の絵札を手にした。

そして、戦いはついに決勝戦。

ここまで勝ち上がってきたイザナの対戦相手は、チーム・アマリリス所属の1年フィルマメント・ルイースヒェンーーおっとりとしたその様子に反し、かなりの実力を持っているよう。

「それじゃ、大盛り上がりの決勝戦! ヒラサカ・イザナVSフィルマメント・ルイースヒェン、いってみよう!」

斯くして、決勝戦の幕は上がった。

「王道を往け! 合体技が勝利の秘訣」

「これはおーーいや、を、ね」

「お先に取らせていただきます」

「っ――しま」

イザナの一瞬の隙を狙い、ルイースヒェンが先に「を」の札を手にする。

「ワイドショー、刻む私の黒歴史」

「今度こそ――わっ」

「――さすがヒラサカ様ですわ」

「カトレーンの料理の毒牙にまた1人」

「か、です――」

「呼び出し音。実地演習はじまりの合図」

「よ――――っ」

「タイマンは女と女の真剣勝負!」

「た、頂きます」

「霊が出る!? 3号館のトイレのウワサ」

「れ――――」

勝利は互角のまま進んでいき、そして最後の1枚。

状況はさっきと同じ――――しかし、相手の実力は……

(ヘタしたら――――)

“装騎バトルは乙女の嗜み”の絵札を睨み合う2人の眼差しは真剣そのもの。

そんな中、イザナが口を開いた。

「スズメ――――もう1回。もう1回だけ私に力を……」

イザナの言葉にスズメが頷く。

「イザナちゃんに――力を! がんばって! イザナちゃん!!」

「――――頑張るわ!」

「……楽な仕事ね」

「だからよー」

そして――――最後の一戦が始まる。

イザナは、スズメの応援を最後の力にして――――最後の一枚を――――――

「獲ったァァアアアアア!!!」


「イザナちゃん、ありがとう!」

「ふっ、別にいいわよ」

授業が終わり、かるたで優勝した景品であるひのきの林を食べながらスズメが言った。

「ヒラサカさん、意外と将来悪い男に捕まったりしそうね……」

「それはないと思うわけよ」

「どうして?」

「アレはもうスズメちゃんに完全に心奪われてるさ」

「…………確かに」

スズメに感謝の言葉を言われ、テレくさそうなイザナだが、その傍でサリナとイヴァがそんなことをいう。

いろいろと言いたいことはある中、イザナの表情は幸せそうなので2人はそっとしておくことにした。

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