プリティーキュートな日常
「では第253回、チーム名改称会議を始めたいと思います」
チーム・プリティーキュート所属の3年生ツンベルギア・マイの声がプリティーキュートの寮室に響く。
リビングに用意されたちゃぶ台の周りにマイをはじめ、4年ハンフリィ・アイデンティ、2年フィゴウル・ミーシア、1年エスポワール・マインの姿もあった。
これはチーム名に抵抗を覚えてきた数代前の先輩達の代からチーム・プリティーキュート内で伝統的に行われるチーム名改称会議。
その名前通り、プリティーキュートと言うチーム名を改めるため、新たなチーム名を考えようという会議だ。
「正月早々ですが、そろそろ新しいチーム名の案もあると思います。……どうでしょう?」
「はいはいはーい!!」
最初に手を上げたのはマイン。
「はい、マインちゃんどうぞ」
声を張り上げ、両手を思い切り振りながらマインは言った。
「チーム・マインちゃんと愉快な仲間たち!!」
「おお、さっすがマイン! なんて素敵なチーム名なんだ!」
マインの口にしたチーム名案に、そう称賛の声を上げたのはミーシア。
しかし、
「却下です。個人名が入ってるのはダメです」
「問題はそこじゃないと思うけど~、そうよねぇ」
あっさり却下するマイに、その傍でうんうんとマイの言葉に同意しているアイデンティ。
「私はハンフリィ☆フリーダムってチーム名が良いと思うわ」
「……あの、アイ先輩、私の言ったことに同意してましたよね?」
「そうねぇ~」
「ハンフリィって個人名じゃないですか」
「名じゃないわよ。姓よ?」
「同じです!」
「同じか~」
失敗失敗――とでも言いたげに、アイデンティは舌を出しながら額を手で打つ。
そんな先輩の姿に、マイは「ハァ」とため息をついた。
「それじゃ、ハンフリーダムならどう? ハンフリィ・ダムじゃないわよ。ハン・フリーダムよ?」
「半フリーダムだとあんまりフリーな感じがしないので却下です」
「そっちか~」
「はいはいはーい! それじゃあ、オレが取って置きのチーム名を言ってやるゼイ!!」
「はい、ミーシャちゃん」
満を持して――と言う雰囲気も全くないが、ここだと思ったのか今まで相槌を打つだけだったミーシアが手を上げる。
マイの合図で、ミーシアは思いっきり息を吸うと、言った。
「チーム・サティスファクションだゼーイ!!」
「却下です」
「ミーシャせんぱーい。そんなんじゃ満足できないよ~」
「あらあら、素敵な名前だと思いましたけどねぇ~」
「ナンデダヨ! カッコイイじゃんサーティスファークション!! 何だよ何だよマイ先輩はサ! さっきから却下却下って!!」
「確かに確かに~ソレは思ったよマインも思ったよ~」
「マイ先輩もチーム名の案を何か上げろよ~!!」
「分かりました」
後輩2人からそう言われ、マイはメガネをクイと上げると静かに口を開く。
「私の考えているチーム名案――それは」
「それは?」
「チーム・シーザーです!!」
「シーザー……サラダかしら?」
「違いますよ!」
「ねー、アイせんぱ~い。お腹空いたー」
「確かになぁ~。オレもナニかタベたいゼイ!!」
「あらあら、それじゃあ何か食べに行きましょう」
「ちょっと、マインちゃん、ミーシャちゃん! アイ先輩!!」
突如として、転換する話の内容。
それについていけないのはマイただ1人だけ。
「そうと決まったら行きましょう。私はシーザーサラダが食べたいわぁ」
「マインはサンドイッチー!」
「オレはパフェが食べたいゼー!!」
「って本当に食べに行くんですか!?」
「当たり前じゃな~い」
「トーゼンなんだよ!」
「いっくぜー!!」
「マイちゃんは何が食べたい?」
完全に、外食ムードになっている3人。
そんな3人に、マイは言った。
「私は、ペペロンチーノで」
こんな感じで、“今回も”チーム名改称会議はうやむやのまま終わりを迎えた。