二日目第一試合
演習場西口のエントランスホール。
そこには、第1回戦のチームの姿もあった。
「お、マジェスティックフォーか! 1回戦頑張れよ!」
「チーム・ブローウィング……そっちは2回戦だっけ?」
「おう!」
4年デイリア・H・ケイを筆頭に勢揃いしたBブロック第1回戦参加チーム。
チーム・マジェスティックフォー。
「あっ、後半戦で司会してた人だ」
その言葉に反応したのか、3年イリエ・ユカがスズメに手を振った。
「それじゃ、ブローウィング。お互いに勝てたら次の試合で会いましょう」
「そうだな、頑張れよ!」
そう言葉を交わすと、チーム・マジェスティックフォーは控室へと入って行った。
「この試合で勝ったチームが私達の次の相手なんですね……」
「アタシ達がシーサイドランデブーに勝てれば、な」
「チーム・マジェスティックフォーとチーム・リリィワーズ……どっちが勝つか楽しみですわ」
「そんなことより早く走りたいんですよぉ!」
そして、1回戦の始まる時刻を迎えた。
「レディース、アーン、ジェントルメーン!! 新入生歓迎大会2日目! 司会は1日目午前の部でお馴染みミウラ・リタが務めさせていただきます!」
エントランスホールに設置された大型モニターから、会場の様子が伝えられてくる。
「いやぁ、私達のチーム・ソルフェージュは1回戦で負けちゃいましたけど、他のチームには是非頑張ってもらいたいですね! では、紹介に移らせてもらいます!」
そして、画面が切り替わり、2日目Aブロック第1試合のチームが表示される。
「Aブロック! 希望は我らに。オラシオン!! 対するは、いつか大人になるその時まで。アララト!!」
盛り上がりの中それぞれの装騎と騎使が映されていく。
「Bブロック! ようこそ、ヒミツの花園へ。リリィワーズ!! 対するは、私達、皆ヒロイン! マジェスティックフォー!!」
「一体、どっちのチームが勝つんでしょうか……」
「今までの戦績的にはどっちもどっちだな……爆発力はマジェスティックフォーの方がある気もするが……」
「それでは、試合、開始です!!」
ミウラ・リタの言葉と共に、戦いの幕が上がった。
マジェスティックフォーのケイの装騎アメジストが地面に何かを突き刺ししばらくその動きを止める。
「あれは――」
「ソナーだ」
「ソナー?」
「ケイはソナーから感じる音の動きで相手の配置や動きを読むのが得意なんだよ」
「ある意味、ウチの魔力索敵と同じようなものですわ」
相手の鳴らす音や、地面の動きを感知して相手の位置や種類を探るケイの得意技。
ケイの先天的な能力によって、その範囲は常人を遥かに凌駕する。
この演習場程度の広さならば、全域が索敵範囲内だろう。
そこからケイの指示を受けて、他の3騎が動き出す。
3年イリエ・ユカの装騎クレナイ、2年シュヴァルツバルト・アンジェリカの装騎ブラックアッシュ、1年パーピュリア・シャクヤと装騎カクヤク。
装騎クレナイを先頭にリリィワーズへと攻撃を仕掛ける。
一見、上手く陣形を取れているように見える。
だが――
「ああ…………やっちまったな」
「?」
過剰に前に出過ぎたクレナイがリリィワーズの装騎の間を突っ切ってってしまう。
ブラックアッシュの激しい銃撃がそのままクレナイにも撃ち込まれ、カクヤクが慌てたようにおどおどとしているのが分かる。
「今頃すっげー怒ってるぞケイ……」
チーム・マジェスティックフォーは上手く噛みあえばかなりの力を期待できるチーム。
しかし、その反面、僅かなズレから大失態を招くことも少なくない。
そのチャンスをチーム・リリィワーズは見逃さなかった。
チーム・リリィワーズのリーダー4年ナガトキヤ・ライユとその装騎キラ。
彼女が動いた。
突如、キラの姿が揺らぎ――消えた。
「――っステルス迷彩!?」
「ああ、チーム・リリィワーズのリーダー、ナガトキヤ・ライユの装騎キラの能力だ」
「でも、あんなのされたら――」
「まぁ、レーダーには映るし、よく見てみたら空間がゆらゆらしてるからな。意外と役には立たん。だけど、相手がテンパってる状態なら……」
不意に、ブラックアッシュの背後から、空気の揺らぎが閃きその身を引き裂いた。
キラの武装、可動式戦闘鎌インコンシステント・ラヴ。
それは、先についた刃が収納される事で杖として、また横に固定されることで鎌として、縦に固定されることで戦闘鎌として扱えると言う武器だ。
「すごいです。あの装騎は初めて見ました……なんて装騎なんですか!?」
「PS-S-S2サリエル。ステルス型の装騎だよ。スズメちゃんは見た事無いのか――」
「は、はい――初めて見ました!! すごい、すごいです! 流石ステラソフィアです!!」
初めて見る機甲装騎の姿に大興奮のスズメ。
そんなスズメの姿にツバサの口元には優しい笑みが溢れる。
「せっかくステラソフィアに来たんだし、色んな装騎を見て行けな。学園都市内なら、全装騎のデータも見れるし、実物だって申請すれば実際に触れるしな」
「ほ、本当ですか――!!??」
「ああ、新歓終わってヒマが出来たら一緒に行くか?」
「はい!! 是非!!!!」
そんな会話の傍で、試合はどんどん進んでいく。
先ほど行われた装騎キラの奇襲。
そこからリリィワーズの反撃が始まった。
3年ハクツキ・クレスとその装騎クレセントムーン。
巨大なチャクラム・アニュラーイクリプスを両手に構え、舞うように相手を切り裂く。
2年オルフェシア・リュディケとその装騎リラライラ。
刃が付いた銃弾を連射するダガーガン・トロイメライを主武装として扱う。
1年アルク・アン・トワイとその装騎レーゲンボーゲン。
ホバー移動で滑走し、17mm銃撃砲グリュンドラヒェで味方を後方から支援する。
結果は――――
「Bブロック第一試合は――チーム・リリィワーズの勝利です!!!」
チーム・マジェスティックフォーの4人が試合から戻ってくる。
「ザンネンだったねぇ」
「本当……全くどうしてこの子達はいつもいつも……」
「まぁ、うん、心中お察しいたしますってとこだな」
「ブローウィングも爆弾抱えてるんだから人のこと言えないわよ」
「全くですよ!」
「アンタよアンタ――――まぁ、とりあえず、私達は負けちゃったけどブローウィングはちゃんと勝ちなさいよ?」
「当たり前だろ、じゃあなケイ。お疲れ!」
チーム・マジェスティックフォーの4人がその場を去り、ついにブローウィングの試合の時が近づいてきていた。