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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:年末年始編
176/322

ステラソフィアで大掃除

「それじゃ、予告した通り今日は大掃除をしてもらうから!」

サヤカ先生が担当する年内最後の授業でサヤカ先生がそう言った。

その言葉に、多少覚悟していたとは言え、やはりやりたくないという空気が1年生の間に漂う。

そんな中、サヤカ先生がそんなことを言いだすきっかけになった4人がやけに姿勢を正して口元を固く結んでいた。

「そんじゃ掃除場所の分担をするわ。とりあえず――4人1チームになりなさい」

と言うことでスズメ、イザナ、サリナ、イヴァの4人はチームを組んだ。

「掃除場所はここに纏めてるわ。チームの代表者は前に出てきてクジを引きなさい」

掃除場所の候補は8か所。

1年生がメインで使う2号館3階にある多目的教室とその隣にあるかなり広いトイレにそれらの前の廊下。

1号館の玄関と、その1階の多目的ホールにその前の廊下。

そして1号館4階のシミュレーター室とその隣にある倉庫――その8か所だ。

「あたしたちの掃除場所は……」

スズメ達のチームは代表としてサリナが前に出た。

そして手に取ったクジを開き、自らの分担場所を確認する。

「げ、トイレじゃない……」

と、言うことでスズメ、イザナ、サリナ、イヴァのチームは2号館3階のトイレを担当することとなった。

「トイレ掃除ってどうやんのよ」

「水を撒いて、洗剤撒いて、ゴシゴシすれば良いんじゃないかな?」

「便座とかも洗わないといけないわね」

「窓とかも掃除しろって言われてるさー」

ステラソフィア女学園機甲科校舎にはいくつかトイレがあるが、その大きさは大小さまざま。

そんな中、どういうわけかここのトイレは個室が4つに広々とした空間を持つ、ゆとりのある空間だった。

「とりあえず、水をぶちまけるねー!」

スズメはそう言うと、そそくさとホースを蛇口に繋ぎ水を床へと撒く。

「全く、よりによってトイレ掃除だなんて……」

「確かにね……トイレ掃除なんて外れクジってイメージが強いわよね」

ボヤくイザナに、そう同意するサリナ。

「スズメちゃんは結構楽しそうさー」

だが、スズメは意外と楽しそうに掃除を進めていた。

「私は結構、トイレ掃除好きだよー」

「だあるば?」

「何で?」

不思議そうにそう尋ねるイザナにスズメも首を傾げる。

「何でだろう? もしかしたら、結構楽しい思い出が多いからかなぁ」

「トイレ掃除の楽しい思い出って」

「小学生の頃、結構トイレ掃除好きだった覚えがあるんだよね。同じグループの人と一緒に泡まみれになった床を滑ったりさ」

「男子か」

イザナの突っ込みにスズメは苦笑しながら「確かに」と呟いた。

「それに、どうしてもトイレをしたい子とかが入ってこようとする時に、掃除中だからって止めるのが楽しかったな」

「スズメちゃんSなの?」

「トイレをしたいのに、入れて貰えなかった時のその表情――楽しかったな」

「スズメちゃんSでしょ」

「そんなことないよー!」

そんな会話をしながら、スズメは洗剤を床に撒きデッキブラシでこすり始める。

イザナも少し高所にある窓によじ登り窓やその桟を拭いていた。

便座の掃除を始めるサリナに、手洗い場を必死でブラシでこするイヴァ。

「でも、そう言えば私も教室の掃除の時とか男子と箒でチャンバラしてたわ」

ふと思い出したようにイザナがそんなことを口にする。

「男子か!」

それにサリナがすかさずつっこんだ。

「サリナちゃんは、そういう子に『ちゃんと掃除しなさい!』とか言ってそうだよね」

「そうね」

「確かに言ってたけど……イヴァちゃんはどうだったの?」

「イヴァは1人でもくもくもくと掃き掃除をしていたさー」

「ああー、周りが遊んでても気にしないでひたすら掃除をしてるタイプなのね」

「であるわけさ。教室の前方の掃き掃除が終わって机を寄せようとしたら、やっとクラスメイトも掃除をしはじめるわけさ」

「イヴァちゃんって結構マジメなのね」

「結構ってなんだばー」

そんな会話をしながらも、必死に手を動かし、細かい汚れを落とそうとしているイヴァは確かに結構マジメなのだろう。

「でも、私は掃除って結構好きなんだけど、自分の部屋は中々掃除しないんだよねぇ」

「だからよだからよ! イヴァもそうであるわけさ!」

「自分の部屋だと、掃除以外にも何でもできるからかなぁ……」

「だからよー。イヴァもついつい他のことをやってしまうさー」

「あはは……でも確かにそういう気持ちは分からないでもないけど」

「部屋なんて物がなければ片付ける必要なんてないじゃない」

イザナの言葉に3人は「そうなんだけどね」と適当に相槌を打つ。

確かに物がなければ片付ける必要は無いが、そうもいかないのがこの3人であった。

「っていうか、ヒラサカさんはどれだけストイックな生活してるのよ……」

サリナの言葉に、イザナは少し胸を張るようにして口を開く。

「私にはスズメと装騎があれば十分なのよ」

「……今の、カッコイイこと言ったつもりなのかしら?」

「どういう意味よソレは」

「イザナちゃん、床流す前に窓を流しちゃっていい?」

床掃除を終えたスズメがホースを手に持ちながらイザナへと尋ねる。

「いいわよ」

イザナはそう言うと、床へと足を降ろし水がかからないように退避。

そして、スズメはイザナが埃などを取った窓に向かって水を掛け、最後の仕上げをした。

それから、便座も手洗いも床も最後に水で洗い流しトイレ掃除は終了。

「やっぱり、掃除をすると気持ちいいね!」

「だからよー!」

どこか清々しい雰囲気のスズメとイヴァに釣られ、サリナとイザナもわずかに口元をほころばせる。

「今日は帰ったら早速部屋掃除かしらね」

「そうね……片付けるものは無くても掃除はしなくちゃ」

サリナとイザナが口にした言葉にスズメとイヴァも頷いた。

「さて、とりあえずサヤカ先生に報告してこよ!」

掃除が終わり清々しい気分でトイレを後にする4人。

こんな感じで授業での大掃除は終わりを迎えた。

そして、それぞれが寮に戻ったその夜――――スズメ達4人が部屋掃除をすることはなかった。


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