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ルシリアーナの秘密兵騎-General Frost-

12月24日木曜日。

チーム・ブローウィングは再度ルシリアーナ帝国への侵攻部隊に加わっていた。

「全く、クリスマスイブだって言うのに実地戦とは」

「本職の方々は明日も忙しいらしいですわよ?」

「フィクションだとクリスマスは休戦するモンなんですよ!!」

「そういうお話多いですよね!」

何だかんだと愚痴りながらも、相変わらずの調子で白い世界を進み行く。

場所はもうすでにルシリアーナ帝国領へと踏み入っており、チーム・ブローウィング含めたマルクト神国軍のとりあえずの目標はルシリアーナ帝国レーニングラット区の侵攻。

遂に自国への侵入を許したという事から、ルシリアーナ帝国軍の攻撃も一層激しくなってきていた。

「今日の夕飯どうする?」

「マハは鍋がいーんですよォ!!」

「鍋ですか! モツ? チゲ? タジン?」

「タジン鍋はちょっと無いのですわ」

そんな雑談を交えながらも、装騎の圧倒的な性能差もあって易々と敵の装騎を返り討ちにしていく。

「バーストライフルが弾切れか……レクス、予備弾倉を頼む!」

『今出す銃ダス』

ツバサの言葉に従い、サポートチーム第3班4年シュービル・レクスにより後方の支援用陸上艇からバーストライフル用の予備弾倉が射撃され、装騎メゾサイクロンの手に収まった。

素早くリロードすると、その銃口を雪原に紛れていたつもりの装騎ベロボーグへと向ける。

そして、銃撃――――撃破した。

「まだまだ居ますわね……そこですわっ!」

チャイカも自身の魔力探知も併せ敵装騎を素早く発見すると、リディニーク・ザ・ヴァースの霊子砲撃により装騎を素早く撃破していく。

そして、

「魔力障壁ですわ!」

駆逐装騎ペルーンの魔電霊子砲を魔力障壁で防いでいった。

そんな装騎スネグーラチカЛの横を飛び出すようにアズルを吹き出しながら駆け出して行ったのは装騎ジェイペッパー。

「マハの一撃、喰らうんですよォォオオオオ!!!」

そう叫びながら、レーザーキックブレードで敵装騎を切断。

キックをしたその流れで回転するように他の装騎へと近づくと、キックバンカーで2度蹴りをお見舞いする。

さらにその頭上を飛び越えていくのは装騎スパロー2R。

「ムーンサルト……」

華麗に体を捻りながら、敵装騎ペルーンの背後へと着地。

「ストライク!」

そして、超振動ナイフを一閃。

「そして、ムーンエッジ・」

そのまま、腕部ブレードエッジを展開し、そこにアズルの刃を形成する。

「レイライト!!」

アズルブレードを横に薙ぎ払い、周囲にいた数騎の装騎ベロボーグ、装騎ペルーンを切断した。

「…………!! 機甲装騎の反応ですわ!! これは、これは……?」

「どうしたチャイカ!」

装騎の反応を感じ取ったチャイカ。

だが、どこか様子がオカシイ。

「これは魔術騎? いえ、どうなのでしょう……それに、この反応は、機甲装騎、なのでしょうか」

「チャイカ! 何でもいい、今感じているものを正直に報告してくれ!」

「あっ――――そ、そう、ですわ!」

ひたすら何かを考えるように思考を巡らせていたチャイカ。

だが、ツバサの言葉で我に返ったように肩を震わせると口を開いた。

「それが、魔術騎にも似た機甲装騎の反応を感じ取ったのですわ。ですが――」

「だけど?」

「その反応が、異様に大きくて」

「反応が大きい、ですか?」

スズメがチャイカに尋ねた瞬間、不意に地鳴りが響き渡る。

ズズズズズズズズと細かな振動――それに合わせて周囲の木々や雪山から雪が滑り落ち、何かの接近を感じさせた。

「これは……」

スズメは雪で霞んだ視界の奥に、何かの影を発見する。

「何だ?」

「うお……巨大な機甲装騎なんですよォ」

「さっきの反応はアレ、でしたのね」

それはそう15mほど――通常の機甲装騎の3倍くらいの大きさがある巨大な機甲装騎の姿だった。

『ジェネラル・フロスト……』

そうポツリと呟いたのは、通信でその様子を見ていたサポートチーム第3班1年コクテンシ・ヒバリだった。

「ジェネラル・フロスト?」

『ソー言えば聞いたコトがあるナ。るしりあーなテーコクが極秘デ作ってイルとイウ、機甲装騎ダッケか』

『古来よりルシリアーナ帝国には冬将軍ジェネラル・フロストと言う秘密兵器があるという噂がありますぅ』

「本当の所、厳しい冬のことをそう呼んだものなのですけど……」

第3班2年ケツァール・カトレ、3年フローレシア・マラードの言葉にチャイカが補足する。

「重装騎を超える巨大な装騎――言うなれば、超重装騎ですね」

「って、ダベってる場合じゃないぞ!!」

不意に超重装騎ジェネラル・フロストから魔電霊子砲が放たれた。

巨大な機甲装騎だけあって、その威力も高そうな強力な魔電霊子砲。

チーム・ブローウィングは咄嗟に散開――回避することができたが、先ほどまでブローウィングがいたところには魔電霊子によって雪が溶かされ――さらにその下の大地がむき出しになっていた。

「うわっ、強力ですね……」

「チャイカ、砲撃を頼むぞ!」

「モチロンですわ! 魔力、砲撃!!」

ツバサの言葉にチャイカは頷き、装騎スネグーラチカЛがリディニーク・ザ・ヴァースの銃口を超重装騎ジェネラル・フロストへと向ける。

そして、魔力を帯びた魔電霊子を超重装騎ジェネラル・フロストへと撃ち放った。

その一撃は――――

「やっぱり魔力障壁か……!」

ツバサの言葉通り、魔力障壁に寄って阻まれた。

それも、いとも容易く。

装騎スネグーラチカЛの魔力砲撃に打ち返すように、超重装騎ジェネラル・フロストの胸部にアズルの輝きが灯る。

「うわっ、各員防御態勢!」

明らかにヤバそうな輝きに、ツバサは咄嗟にブローウィングへと指示を出した。

「魔力障壁――――ピーカヴァヤ・ダーマ!」

「スパロー・ホープムーン・バリア!」

装騎スネグーラチカЛが魔力障壁を、装騎スパロー2Rが盾のようにアズルブレードを展開。

「さてと、新技のお披露目といくか――――ブローウィング・ネスト!」

それに合わせるように、装騎メゾサイクロンもアズルウィングを展開すると、アズルの翼をチャイカの魔力障壁へと重ね合わせた。

その瞬間に超重装騎ジェネラル・フロストの胸部霊子砲が放たれる。

それは弾け、強力な魔電霊子砲を周囲へと雨のように降り注がせた。

「拡散霊子砲か――――!!」

降り注ぐ魔電霊子砲を防ぎながらツバサが声を上げる

「また厄介な武装ですわね……」

「魔力障壁に魔電霊子砲――それもかなりの威力です! 突破、できますかね」

「ガンガンガンガン行きやがるんですよォ!!」

何にせよこの状態をなんとか打開しなくてはいけないと言うことは事実。

「とりあえずは……なんとか魔力障壁を突破できないか試してみるか」

「ですわね……ウチとリーダーで魔力障壁の誘発。スズメちゃんとマッハちゃんでジェネラル・フロストへの本命――それでどうですの?」

「そうするか。スズメちゃん、マッハちゃん、いいな?」

「諒解です!」

「合点承知の助なんですよォ!!」

そう言うと、スズメの装騎スパロー2R、マッハの装騎ジェイペッパーは一気に超重装騎ジェネラル・フロストへと接近する。

「アタシらもやるか」

「ええ」

その後を追うように、ツバサの装騎メゾサイクロンとチャイカの装騎スネグーラチカЛも前進。

その間も降り注ぐ超重装騎ジェネラル・フロストの魔電霊子砲を掻い潜ると、装騎スパロー2Rと装騎ジェイペッパーは超重装騎ジェネラル・フロストの背後へと回り込んだ。

「行くぞ!!」

装騎メゾサイクロンはウィングへとアズルを集中させた。

蒼く輝くアズルの翼を纏い、強烈な加速により一気に超重装騎ジェネラル・フロストへと接近する。

「チャイカ!」

「ええ!」

ツバサの言葉にチャイカも応答。

リディニーク・ザ・ヴァースを構えると、インディゴドライブによるアズル供給も併せ、自身の魔力をその銃口へと集中させた。

「魔力砲撃――――シェルクンチク!! ですわ!!!」

「メゾサイクロン・ヴォルティカルウィング!!」

装騎スネグーラチカЛの魔力砲撃と、装騎メゾサイクロンのアズルウィングの羽撃きが重なり合い、超重装騎ジェネラル・フロストへと叩きつけられる。

「やはり魔力障壁ですわね」

「ああ、頼むぞスズメちゃん、マッハちゃん!」

最大出力を用いた強力な1撃――――だが、その攻撃は超重装騎ジェネラル・フロストの魔力障壁によって防がれた。

だが、ここまで想定の範囲内だと言うことは言うまでもないだろう。

「行きます!」

「ウォラァ!!」

背後に回っていた装騎スパロー2Rと装騎ジェイペッパーがアズルの輝きを吐き出しながら構えた。

狙いは脚部――――ジェネラル・フロストのことの巨体なら脚部を破壊できれば一気に突き崩せると踏んだのだ。

「スパロー・無限駆動インフィニットドライブ!!」

さらにスズメは装騎スパロー2Rを無限駆動の域へと押し上げる。

装騎スパロー2Rから噴き出すアズルが、スパロー2Rの周囲でスズメの意志によって固定された。

「うぉっしゃァ!! マッハな一撃見せやがるんですよォォォォオオオオオ!!!!」

「行きます! スパロー・ピアスィングブレード!!」

装騎ジェイペッパーと装騎スパロー2Rは跳躍すると、装騎ジェイペッパーは脚部キックバンカーからアズルを吹き出しながら光を纏っての跳び蹴りを。

装騎スパロー2Rはブレードエッジを展開しアズルの刃を全身に纏うとアズルの噴射により急加速。

魔電霊子の弾丸となった装騎スパロー2Rが超重装騎ジェネラル・フロストへと突っ込んだ。

「イきやがれェェェエエエエエエエエエエ!!!!」

「お願いしますっ!!」

装騎ジェイペッパーと装騎スパロー2Rの同時攻撃が、超重装騎ジェネラル・フロストの魔力障壁と激しくぶつかり合う。

アズルの輝きと魔力の揺らぎがせめぎ合う。

その結果は――――

「ダメか……っ」

ツバサの言葉通りだった。

魔力障壁は激しく揺らぎ、今にも綻びそうに見える――――しかし、今一歩、及ばない。

「スズメちゃん、マッハちゃん、退け!」

「は、はいっ!」

「チックショォ!!」

ツバサの指示に装騎スパロー2Rと装騎ジェイペッパーはすぐにその場を離れる。

その上空から超重装騎ジェネラル・フロストの魔電霊子が2騎を焼き尽くさんと激しく降り注いだ。

「頼みの全力攻撃もダメか。何か突破口は無いのか?」

「ちょっと待ってほしいのですわ」

「どうした?」

チャイカがふと装騎スネグーラチカЛの画面を見ながら言った。

「これは――シャダイ・コンピュータからの作戦指示が来ましたわ」

「シャダイからの? 攻略法が見つかったのか!」

画面に表示されていたのは、今までの戦闘から集めたデータや超重装騎ジェネラル・フロストの構造を解析したその結果。

そして、そういう諸々の情報から導き出された超重装騎ジェネラル・フロストの破壊方法だった。

ツバサ、スズメ、マッハもそれぞれディスプレイに表示された情報に目を通す。

「これであの超重装騎ジェネラル・フロストを撃破できるんですね」

「なるほど、その逆か。やるぞ!」

「ええ」

「うおっしゃァ!!」

「チャイカは全力で砲撃準備を。アタシらは一斉攻撃で魔力障壁を発動させるぞ!」

「「「諒解!!!」」」

装騎メゾサイクロン、装騎スパロー2R、装騎ジェイペッパーは超重装騎ジェネラル・フロストに向かって一気に駆け出す。

基本的には先ほどの作戦と大した変わりはない。

違いは3騎で超重装騎ジェネラル・フロストの足元を一斉攻撃――そして、魔力障壁が発動したその瞬間にチャイカがシャダイから指示のあった場所を狙撃する。

データ上はこれで破壊ができるという事らしい。

「もう一回全力だ! 頼むぜメゾサイクロン!!」

「一緒に行こう、スパロー!」

「ガンガンガンガンッ!!!」

3人はより一層気合いを入れて、アズルを自身の機甲装騎から放出した。

「ヴォルティカルウィング!!」

「ピアスィングブレード!!」

「最強マッハキーック!!」

装騎メゾサイクロンのアズルウィングが、装騎スパロー2Rの体当たりが、装騎ジェイペッパーの跳び蹴りが超重装騎ジェネラル・フロストの魔力障壁に阻まれる。

「今だチャイカァ!!」

「弱点は首元の余剰アズル排出口スリット――――そこですわ! シーリヌィ・ヴェーチェル!!」

チャイカの魔力銃撃が超重装騎ジェネラル・フロストの喉元に向かって撃ち放たれた。

3騎の同時攻撃により障壁が薄くなっている超重装騎ジェネラル・フロストの喉元。

さらにそこはチャイカが言ったように余剰アズルの排出口となっていた。

超重装騎ジェネラル・フロストが障壁を発生させたその瞬間、急速に生成されたアズルをそこから放出する。

その放出時に障壁とぶつかり合い微妙な歪みができるという。

そこにチャイカの全身全霊の魔力銃撃シーリヌィ・ヴェーチェルが命中した。

「鍵はアズルの放出による障壁の歪み――――そして、ジェネラル・フロストの欠陥、ですわ!」

その瞬間、超重装騎ジェネラル・フロストの魔力障壁は撃ち破られ、チャイカの魔力がアズル排出口から超重装騎ジェネラル・フロストの内部へと入りこむ。

刹那――――

「やったか!」

「やりましたね!」

「うぉう!!」

全身にアズルが誘爆するかのように広がると、一気に超重装騎ジェネラル・フロストを焼き尽くした。

「作戦終了、ですわね」


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