表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/322

白中の戦い-Bílá Válka-

「と、言うことでステラソフィアとミュンヘン市のマスドライヴァー使用許可をもらってきましたわ」

にこやかにそう言いながら、ブローウィングの寮室へと帰ってくるチャイカ。

「どういうことですか……?」

「雪合戦さ!!」

チャイカの言葉に首を傾げるスズメに向かって、ツバサが言った。

それは、何時ぞや出た雪合戦をしようと言う話。

チャイカは雪合戦ができる場所を探し、そこに行くための移動手段としてマスドライヴァーの使用許可を取っていたのだ。

「わ、わざわざマスドライヴァーを使ってまで行くんですね……」

「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお、やる気が出てくるんですよォ!!!」

苦笑するスズメに、見るからにやる気満々で両腕をグルグルと振り回すマッハ。

「ミュンヘンには私たち4人で行くんですか?」

「いや、バーチャルスターも呼んだぞ」

「ソレイユ先輩たちも一緒ですか!」

「ああ。本当はウィリアムバトラーとかミステリオーソも呼びたかったけど……」

「大人数でマスドライヴァーの使用許可を取るのは難しいのですわ」

と言うことで12月20日の日曜日。

スズメ達チーム・ブローウィングはチーム・バーチャルスターの4人と共に雪が降り積もるミュンヘン――その外れへと来ていた。

「おお、さみーなぁ!」

「そうね。みんな、防寒対策は大丈夫?」

「うにゃっはぁ!! 寧ろ体が熱くなってくるのですよ!」

「本当、すごい雪ですね」

バーチャルスターの4人が周囲を見渡しながら言う。

周囲に茂った木々や、積もった雪の山が自然のフィールドを構築している。

「それじゃあ、ブローウィングとバーチャルスターに分かれてやるか!」

「そうだな。負けねーぜツバサ!」

「こっちこそ!」

ツバサの言葉にソレイユも頷いた。

「ルールはワンショットキルのフラッグ戦で良いかな?」

勝利条件は敵の殲滅。

もしくは、敵拠点に設置されたフラッグの奪取と言うルールだ。

「良いぜ。そんじゃ、やっか!」

と、言うことでチーム・ブローウィングとチーム・バーチャルスターに分かれての雪合戦が始まった。

「行くぞ、GO! ブローウィング」

「「「GO!!」」」

「バーチャルスター!」

「「「アタック!」」」

それぞれ掛け声を上げ、木々の影々に散開。

「さーて、どうしようかなー」

「マハがぶっ飛ばすんですよォ!!!」

ツバサの呟きに、マッハが我先にと木々の間を縫い、一気にチーム・バーチャルスターのスタート位置へと接近する。

「マッハのヤロォが来たのですよ!!」

最前線でチーム・ブローウィングの動きを見張っていたミズナが声を上げた。

「その声――――ミズナのヤローでやがりますね! ぶっ飛ばすんですよォ!!!!!!」

その声に気づいたマッハが、一気にミズナの潜む木の影へと接近する。

「うにゃっ、しまったのですよ……!」

「迂闊に声を出すなって言っておいたのにな……」

ミズナの声から、マッハに見つかったと言うことを悟ったソレイユは、ため息を吐きながらそう呟いた。

「何とかマッハのヤロォにこの雪玉をぶつけてやるのですよ!!」

ミズナは、そう意気込むとその手に雪玉を掴み取ると、マッハの足音がする方へと素早く顔を出し、マッハの姿を補足。

思いっきり雪玉を投げつける。

その雪玉はかなりのスピード――――そして、的確にマッハを狙い放たれた。

だが――“生身では”凄まじい強さを発揮するマッハ――――雪玉を紙一重でかわすとスピードを落とすことなくミズナへと接近する。

「うにゃあ!? 援護! 援護を要請するのですよ!!」

「ロズ!」

ソレイユのハンドサインを受けて、ロズが頷いた。

「全く……手のかかる後輩よね本当」

「ロズ先輩、あたしが援護します」

「ええ、お願いね」

サリナが雪玉を作り、ロズに投げ渡したソレを、一気にマッハへと投げつけるという流れ作業。

合間を見て、ソレイユとサリナもミズナの援護をするが、激しい放火を易々と避けるマッハ。

「いやもうなんだよアレ! 反則レベルの強さだな!?」

「装騎バトルだと弱いのにね……」

驚愕の声を上げるソレイユにロズ。

前線でマッハの接近を受けるミズナと、ロズの後方で支援をするサリナも同じことを思っているだろう。

だが、そんな思いを抱いているのはバーチャルスターだけではなかった。

「装騎バトルでもアレだけやってくれたらな……」

「全くですわ」

マッハの後方で、マッハの頑張りを目にしてそう言わずにはいられないツバサとチャイカの2人。

「とりあえず、マッハちゃんの援護するか……」

「ええ、やりますわ」

そう言いながら、雪玉をチーム・バーチャルスターに向かって投げつけるツバサとチャイカ。

チャイカはその細い体とは似合わず――だが、彼女自身のバトルスタイル通り、遠方からの投擲を得意としていた。

チャイカの投げた球は、弓なりに上空からチーム・バーチャルスターを目指し飛ぶ。

木々に弾道を邪魔されないポジションを計算して移動――そして投擲。

「うわっ、あぶねっ! チャイカか……相変わらず厄介だな」

「お姉ちゃん、私がミズナちゃんの援護に入ってマッハちゃんを足止めするわ。だから――――」

「ああ、とりあえずの標的は――――チャイカ、かな」

ロズが前に出ると、その後を追ってサリナもその一方後ろを行く。

それとは別に、ソレイユが単独の別動隊としてチーム・ブローウィングへの奇襲を目指す。

「さて、行くぜ……!」

チーム・ブローウィングとチーム・バーチャルスターの残りのメンバーが戦う喧噪をよそに、静まり返った木々を駆け抜け、ソレイユは一気に敵陣の背後を目指す。

「このままフラッグを取りに行っても良さそうだが……まっ、さすがにそれは無理か」

ソレイユは一旦、足を止めて木の陰から顔をのぞかせる。

そこは、チーム・ブローウィングの拠点であり、フラッグの設置場所。

フラッグ代わりに雪上に突き刺された50cmほどの刃渡りのナイフー――その影で、チャイカが雪玉を投擲し狙撃をしていた。

その少し前にはツバサの姿もある。

「さて――――ここから慎重にいかねーとな」

だが、ここでソレイユは違和感を覚える。

フラッグ代わりのナイフに何か引っかかりを感じた。

「ナイフ? ナイフ…………チッ、しまった!」

何かに気づき、焦ったように駆け出すソレイユ。

その足は一目散にフラッグ代わりのナイフへと向けられている。

その足音にチャイカが気づいた。

「ツバサ先輩、背後を取られましたわ!」

「ソレイユかっ!! スズメちゃん!!!!」

「フラッグ、取りましたぁ!!!!!!」

ツバサの声へと応答するように、スズメの声がチーム・バーチャルスターの陣地から響いてきた。

「クッソ、マジかよ!!」

「奇襲はスズメちゃんの本分だからね」

悔しそうに声を上げるソレイユに、得意げに胸を張るツバサ。

(本当は殲滅するつもりだったんだけどな……)

などと内心思ってたのは内緒だ。

「やれやれ、やられたわね」

「ミズナのヤロォに気を取られ過ぎたのですよぉ……」

「そうだったわね。スズメちゃんはこういうの得意なのに」

チーム・ブローウィングとチーム・バーチャルスターの8人が顔を出し、それぞれが戦いの結果に一喜一憂。

「おい、ツバサ! もう1回だ!」

「ああ、良いよ。今度もアタシらが勝つけどね」

「それはどうかな――?」

そして、2回戦の幕が上がる。

「ツミカワ・ミズナァアァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

「カスアリウス・マッハァァァァアアアァアアアァアアアアアアア!!!!」

「ピンポイントに、行きますわ!」

「お姉ちゃん、またスズメちゃんがいないわよ!」

「サエズリ・スズメ、奇襲ナーイェズトします!」

「って、スズメちゃん木の枝を伝って来たの!?」

「うおおおっ!? ソレイユ、マジのマジじゃん!!??」

「当たりめーよ! さ、行くぜ行くぜ行くぜ!!」

2回戦はチーム・バーチャルスターが勝利し、そして3回戦、4回戦と雪合戦は続く。

最後、両チームのメンバーが疲れ果て雪原へとへたり込んだ時の結果はタイ。

最後の1戦をするような体力も残っておらず、結果は引き分けと言うことでステラソフィアへの帰路へとついたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ