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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:ドタバタ編
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ニユの学芸会

「ちょっと、サエズリ・スズメ」

「……ニユちゃん?」

12月11日金曜日の放課後、スズメに声を掛けてきたのはサヤカ先生の子どもの1人ニユ。

「あら、あなたは確か遊園地で会った」

「サヤカ先生の子どもだばーよ!」

「……そうだっけ?」

ニユの顔に見覚えのある面々がそれぞれの反応をする。

その傍で、スズメはニユに視線を合わせると、

「何か用かな?」

と尋ねた。

「スズメは、日曜日にあるイベントを知ってるかしら?」

「日曜にある、イベント……?」

スズメはしばらく何かを考えるような素振りを見せるが、思い当たるものは何もなく首をかしげる。

「日曜に何かあるの……?」

スズメの問いに、ニユも何かを考えるような素振りをする。

だが、小さく首を横に振ると

「別に……何でもないわ」

とそれだけ残し、スズメたちの前から去っていった。

「……何だったんでしょう」

「日曜日――イベント……あっ」

ふと、サリナが何かに気づいたように声を上げた。

「何かあるの?」

「12月13日の日曜日――――確か、初等部の学芸会の日よ」

「学芸会!?」

スズメはSIDパッドでステラソフィアのホームページを開くと、初等部の行事を確認する。

そこには確かに「ステラソフィア初等部学芸会」の文字があった。

学芸会とは日ごろの学習の成果を発表する行事であり、ステラソフィアでは学園祭などとは別に開催されている。

「なるほど、分かりました」

そして、13日日曜日。

「でも、学芸会って何をするんでしょう……」

そう呟きながら、スズメはステラソフィア初等部の屋内装騎場へと足を運んだ。

周りにいるほとんどは、ステラソフィア初等部に属する小学生の家族たち。

「ニユちゃんは4年生、だっけ」

学芸会が始まり、次々と出し物が進んでいく。

学芸会の出し物は、その学年やクラスによって様々……劇が基本ではあるが、中には装騎を扱う出し物をするところもある。

そんな中、ニユが出る演目は“ハクツキ流装騎舞踊”と言う主に小学4年生以上の有志の生徒が出る演目だった。

「ハクツキ流舞踊! これは見ものですね」

ハクツキ流装騎舞踊とは、その名の通り機甲装騎に乗って踊る舞踊である。

どこか和風な趣が感じられると共に、舞踊でありながら装騎の操縦技術の上達にもつながることから近頃は子どもに習わせる親も多いらしい。

その舞踊で身に着けた動きは戦闘に於いても有用だということは、チーム・リリィワーズの3年生ハクツキ・クレスも見せてくれた。

「あっ、ニユちゃん!」

入場者の中にニユの姿を見つけたスズメは、慌ててSIDパッドのカメラ機能をオンにする。

思いのほか楽しい学芸会にテンションも上がっていたスズメは、SIDパッドのカメラを連射で撮り始める。

ニユが礼をし、自らの機甲装騎に乗りこんだところでスズメはカメラをムービーに切り替えた。

そして、ハクツキ流装騎舞踊が始まる。

「さすがはステラソフィア……小学生って言ってもレベルが高いです」

小学生ながら、装騎の操作技術は大人も顔負けのステラソフィア初等部生。

ゆったりとした曲に合わせながら、戦うように舞い踊る姿は優雅の一言に尽きる。

基本的には円を思わせる動きが多く、途中で2人1組になり、組み手をするかのように舞い踊る。

やがて、静かな礼と共に装騎舞踊は終わり、ニユ達は退場した。

「ニユちゃーん!!」

学芸会が終わり、生徒たちも解散を始めたころ、スズメはニユの姿を見つけると駆け寄る。

スズメの声と、その姿に気付いたニユは一瞬、驚いたような表情を浮かべた。

「なんでスズメがここにいるのよ!?」

「なんでって、今日は初等部の学芸会があるみたいだからニユちゃんも出るのかなーって思って」

「それでわざわざ見に来たの!? ヒマジンなのかしら!!?」

そう言うニユだが、どこか嬉しそう。

それもそのはず。

ニユはその性格も相俟って行事の時、知り合いが見に来てくれるということがほとんどなかった。

孤児であるため実の両親はモチロン、サヤカ先生も仕事で忙しく来れなかったり、年下の子の行事と被ったり。

そして、ニユ自ら行事には来ないように言い含めているというのもある。

「ニユちゃん、ハクツキ装騎舞踊してたよね! すっごいカッコよかったよ!!」

「写真に動画まで撮ったの? アンタはニユの親か何か!?」

「でも、上手だったし、ついつい撮っちゃったんだよね。これサヤカ先生にも見せようよ!」

「やめてよ恥ずかしい!」

そう言いながら、2人は1緒に帰路についた。

「帰りにケーキ屋さん行こう!」

「何でよ」

「私が小学生の頃は運動会とか学芸会とか終わった後、お母さんにケーキ屋さんに連れて行ってもらってたんだぁ」

「はぁ? だから行くっていうのかしら?」

「うん! 私が奢るから」

「まぁ、スズメのオゴリなら行ってあげても良いわよ」

挿絵(By みてみん)

ウィンターリア・ニユ

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