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雪中行軍-Sněhový Pochod-

季節は12月にもなり、寒さも一入ひとしお

そんな中、チーム・ブローウィング擁するマルクト神国軍は北東を目指し進軍していた。

マルクト神国の北東――――それはルシリアーナ帝国の領地。

新型装騎による快進撃に沸くマルクト神国は、ルシリアーナ帝国、そしてマスティマ連邦と言う高い装騎製造技術を見せつけてきた各国への本格的な攻撃をはじめていた。

今までは支配地を増やし管理するということに重きを置いていたマルクト神国。

しかし、今回の侵攻は脅威となりうる装騎製造の拠点を破壊することであり、明確に破壊行動を主とした作戦だ。

と、言うことでルシリアーナ帝国に向かう可能な限り最短ルートを進む最前線部隊にスズメ達チーム・ブローウィングも配置されていた。

「ラトガラントに入ったな……ルシリアーナ帝国はもう少しか」

白く雪が積もった道を進みながら、ツバサがポツリと呟く。

ラトガラントとは、マルクト神国の北東にあるポートレヒア国からリタウン国を進んだ先にあるルシリアーナ帝国と国境を接する国だ。

その前のリタウン国も含め、事実上ルシリアーナ帝国の属国と言う扱いであり、ほとんどルシリアーナ帝国領だと言っても良い。

今までも何度か交戦があったが、それもルシリアーナ帝国軍の装備で固めた各国軍だったりとルシリアーナ帝国の力が透けて見える。

「この辺り……かなり雪が積もってますわね」

チャイカの言葉通り、辺りに積もるのは雪――空からもチラチラと白い粉が舞い降りている。

これからどんどん北上を進めるマルクト神国軍にとってこの辺りの雪原はまだまだ序の口ではあるが。

「雪合戦がしたいんですよォー!!」

積もる雪を目にし、マッハがそんなことを叫びながら装騎ジェイペッパーの蹴りをラトガラント軍の装騎ベロボーグへと叩きつけた。

「マルクトでやれな」

「そろそろうちでも降りそうですよね」

「では、雪が降ったらみんなで雪合戦、ですわね」

そう雑談をしながらも、ツバサの装騎メゾサイクロンがバーストライフルを斉射し、装騎ベロボーグの動揺を誘う。

回避運動でバラけた敵に向かって、スズメの装騎スパロー2Rがレイ・エッジソードで切断。

突っ込んできた装騎スパロー2Rを攻撃しようとする敵装騎ベロボーグに向かってチャイカの装騎スネグーラチカЛのリディニーク・ザ・ヴァースが撃ち抜いていった。

「氷合戦になりそうだけどな」

「死者出ますよ……レイ・エッジ!」

装騎スパロー2Rがレイ・エッジを放ち、駆逐装騎ペルーンが撃ち放った魔電霊子砲を防御。

そのまま、インディゴ・ドライブにより高出力になっているレイ・エッジを直接撃ち込みペルーンを破壊する。

「よし、どんどん進むぞ!」

ツバサの言葉に従い、足を進めるチーム・ブローウィング。

「チャイカ先輩――この辺りに機甲装騎の反応って無いですか?」

「どーしたんですよスズメ後輩!」

「ちょっと待つのですわ――――」

首を傾げるマッハに、静かに魔力を周囲へと染み渡らせるチャイカ。

暫くして、チャイカは静かに首を横に振り言った。

「反応はありませんが……何か感じたんですの?」

「ちょっと違和感があるような気がしたんですけど……気のせいですかね」

「いや、チャイカは引き続き周囲の警戒を。何があるか分からないからな」

「ええ、そうしますわ」

スズメが口にした違和感――結論から言うと、その違和感は的中することとなる。

チャイカの魔力探知は非常に優秀で便利ではあるが、それに欠点があることも周知の事実。

ツバサの言葉に従い、魔力探知とレーダーによる情報収集をチャイカは行う。

そんな折、

「!! 装騎の起動反応が8つ――後方ですわ!」

「起動反応――後方だと!?」

チャイカが8つの反応を後方に感じ取る。

慌てて振り返るチーム・ブローウィングの4騎――そこにはすでに起動を完了し、その手に持った魔電霊子砲をブローウィングへと向ける駆逐装騎ペルーンの姿があった。

「行きますわ!」

その射線上に装騎スネグーラチカЛは仁王立ちをする。

刹那、装騎ペルーンの魔電霊子砲が一斉に放たれた。

「魔力障壁……」

その一斉射撃に対して、装騎スネグーラチカЛは魔力とアズルで補いあった大規模な魔力障壁を張る。

しかし、障壁と言っても、普段使うような魔力障壁とは少し性質が違っていた。

装騎ペルーンの魔電霊子砲を防ぐ――と言うよりは受け流すように障壁上を走らせ明後日の方向へと散らす。

「ピーカヴァヤ・ダーマですわ!」

何も敵の攻撃全てを受け止め、防ぐ必要などない――少しだけ軸をずらして味方に被害が出ないようにすればいい。

そんな考えから魔力消費の軽減にも成功した魔力障壁ピーカヴァヤ・ダーマ。

それは部隊を守る女神の力のように、敵を惑わす幻惑のようにブローウィングを包み込む。

「新技か――!」

「ええ、そうですわ」

そんな会話をしている間にも、ブローウィングの周囲で数騎の起動反応が再び感知された。

雪の中から飛び出し、装騎スパロー2Rへと斬りかかってくるのは4騎の装騎ベロボーグ。

「フルムーン・バースト!!」

装騎スパロー2Rに四方から襲い掛かるように、装騎ベロボーグは超振動ブレードを閃かせる。

だが、スズメの言葉と共に、装騎スパロー2Rは素早く無限駆動インフィニットドライブの状態へと移り変わった。

そしてアズルが爆発するように装騎スパロー2Rの体中から放たれる。

空気中のアズルをも操る無限駆動の状態で、周囲へとアズルを放出するその技によって、装甲と視界を焼き付けられた装騎ベロボーグが怯んだ。

「ムーンレイ・ストライク!」

そのまま、視界に入っている2騎のベロボーグへと、全身からアズルブレードを放ち串刺しにする。

「貰ったんですよォォォオオ」

装騎スパロー2Rの背後にいる装騎ベロボーグを破壊したのは、装騎ジェイペッパー。

1騎目のベロボーグから2騎目のベロボーグへ飛び移るように蹴りつけ、2騎目のベロボーグにも蹴りを叩きつけ地面へと着地した。

その蹴りの瞬間に足の裏にあるキックバンカーからアズルを注入。

一瞬遅れて、注入されたアズルによって2騎の装騎ベロボーグは爆炎を上げて機能を停止する。

「きっと敵は罠に掛けたつもりなんだろうけど、残念だな。チャージウィング!!」

最後に、アズルの翼を展開した装騎メゾサイクロンが、正面に構えたチェーンブレードと共に突貫攻撃。

チェーンブレードで装騎ベロボーグを串刺しにしながら、その周囲にいるベロボーグやペルーンをアズルウィングによって切断、撃破した。

『そろそろ“上がり”の時間だ。シャダイコンピュータの簡易中継施設の設置もあるしな……ご苦労だった。すぐに帰還しろ』

「諒解! さーって、マルクトに帰るぞ」

「なんだかあったかいお風呂に入りたいのですわ」

「大浴場に行くんですよー!!」

「良いですね! みんなも帰ってきてるかなぁ」

そう笑いあいながらマルクト神国への帰路につくチーム・ブローウィングの4人。

この調子でいけば、ルシリアーナ帝国本土への攻撃もそう遠い話ではないだろう。


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