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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:交流編
165/322

サヤカ先生の子供たち

「私たちが、子守りですか!?」

「そうよ」

それは11月20日金曜日の放課後。

サヤカ先生に呼び出され、スズメ他チーム・ブローウィングの4人は機甲科の職員室へと来ていた。

「でもなんで急に……」

「明後日の日曜日、本当だったら遊園地に連れていくって約束してたのに仕事が入っちゃったのよ。日曜じゃ、預かってくれる施設もほとんど無いし、今から探すのも大変だしね」

サヤカ先生のチーム・ブローウィングへの用事とは、サヤカ先生が引き取り、育てている16人の子ども達――――日曜日にその面倒を見てほしいというもの。

「ちゃんと報酬はあげるわ」

「それは良いですけど……またまた、なんでアタシ達に?」

アンタ達ブローウィングが1番適任だと思ったのよ。面倒見の良いチャイカに、中身が子どものマッハ」

「今何て言いやがったですか!?」

「で、スズメはニユと知り合いだし」

「そうですね」

「無視するんじゃねーんですよ!!」

ニユとは、以前スズメがイザナやサリナ、イヴァと一緒に遊園地へ行った際に出会ったステラソフィア初等部の少女。

スズメと、そしてイザナの弟ナギと共に三つ巴の装騎バトルを繰り広げた。

「それに、ツバサは保育の知識があるでしょ? 適任じゃない」

「そうですねぇ。ま、アタシは全然構わないけど、みんなは?」

「私は大丈夫です!」

「ウチも問題ありませんわ~」

「しょーがないんですよ! ガキの相手は任せやがるんですよォ!」

と、いうことで22日の日曜日。

サヤカ先生の代わりに子ども達の面倒を見ることになったチーム・ブローウィングは16人の子ども達を引き連れケルンの遊園地へと来た。

子ども達は12歳の子が1人、10歳の子が2人、9歳の子が1人に6歳の子が4人、5歳の子が3人に4歳の子が3人、そして、3歳の子が2人の16人。

「よっしゃぁぁぁああああああ、遊ぶんですよォォォオオオオオオ!!!」

「マハおねーちゃん行こーぜ!」

「行こう行こう!」

「モチロンなんですよォ!!」

「っておい、マッハちゃん!!」

遊園地に着いて早々、遊具に向かって駆け出すマッハ――そしてマッハについていく5歳児の男子3人組。

その様子を呆れたような様子で見ていたツバサだったが、

「まぁ、マッハちゃんは何だかんだで面倒見がいい部分あるし……大丈夫だろう」

と呟く。

「とりあえず、小さい子たちはアタシとチャイカで面倒見るか」

「そうですわね~。スズメちゃんは年長さん達をお願いしますわ」

「分かりました! えっと、ニユちゃんと……」

まだ名前を覚えきれていないスズメに、1人の少女が静かに挨拶をした。

「わたしはナルルです。よろしくお願いします」

サヤカ先生の子ども達の中で最年長となる12歳で、名門校テレシコワ女学園の小学部に通っているという。

子ども達のお姉さん的存在で、サヤカ先生の手伝いもよくするという良心。

「うちはオム! スズメねーさんよろしくお願いします!」

そして、9歳で花丸元気印の少女オム。

明るく踊るような仕草でスズメへと挨拶をした。

そして、最後――――9歳以上の4人の中では唯一の男の子。

「えっと、あの……ボクは……」

「コイツの名前はポーレよ。ほらポーレ、ちゃんと挨拶しなさい!」

「よ、よろしくお願いします……」

ポーレは人見知りが激しく、内気な少年だった。

「私達はどこに行こっか?」

「わたしは、皆が行きたいところで良いです……」

「正直、こんなガキの来る場所に行きたい場所なんてないわよ!」

「うちは楽しければどこでもいいよん!」

ナルルもニユもオムも、特にここに行きたいという場所は無い様子。

そこで、4人の視線が一気にポーレの方へと向く。

「ポーレくんはどこか行きたい場所ある?」

「べ、別に……」

スズメの問い掛けにポーレは慌てて首を横に振った。

「そうだ、ちょっと待っててね!」

スズメは何かを思いついたように受付へと行くと、受付の人と何やら話をしている。

それから戻ってきたスズメの手には、この遊園地のパンフレットが握られていた。

「ほらほら見て見て、パンフレット! この中から行きたい場所を探そうよ!」

その遊園地にはいろいろな遊具があった。

ジェットコースターに観覧車、お化け屋敷に簡易な動物園、水族館も備えている。

「……あっ」

そのパンフレットを見ていたポーレがふと声を上げた。

「どこか行きたい場所があったの?」

スズメがそう問いかけると、ポーレは静かにアトラクションマップの一か所を指さす。

「子ども装騎ミュージアム! 面白そうですね!!」

と、言うことでスズメとナルル、ニユにポーレの4人は子ども装騎ミュージアムへと足を運んだ。

子ども装騎ミュージアムとは、この遊園地の目玉の1つでもあり、子ども向けに機甲装騎などを紹介している施設だった。

その表には装騎用のフィールドもあり、子ども用に調整された機甲装騎をレンタルすることで親子一緒に機甲装騎が動かせると評判である。

子ども装騎ミュージアムの中を1周してきたスズメ達は、子ども装騎ミュージアムの装騎レンタルコーナーへと来ていた。

「わぁ~、ここではいろんな機甲装騎に乗ることができるんですねぇ!!」

その子ども装騎ミュージアムの装騎レンタルコーナーでは、スズメも舌を巻く充実のラインナップ。

マルクト神国で運用される基本的な装騎は当然、一部の奇形装騎や特殊装騎までレンタル可能と言う。

ただ、悲しいかなそのほとんどが子ども用に換装、調整されている装騎であり、大人用のレンタル装騎はミカエル型やガブリエル型のようなベタな装騎ばかりなのが玉に瑕か。

「あれ、ここのレンタル装騎――――ハラリエル型がある!」

そんなレンタル装騎の中に、スズメは見知った姿を見つける。

スズメが使用していた装騎スパローのベース騎となった装騎ハラリエル。

そう、スズメの新歓での活躍によって有名になったその最新型装騎は、人気があるらしくこのレンタルコーナーにもちゃっかりと目玉装騎として置かれていた。

「ハラリエルってスズメが乗ってる装騎じゃない」

「なかなか良い装騎ですよ。どう、ポーレくん、乗ってみる?」

スズメにそう尋ねられ、やはりハラリエル型装騎に興味があったのだろう。

ポーレは、

「……うん」

と頷いた。

「うんうん、良い調子良い調子!」

スズメ自身も、大人用に調整されているハラリエル型のレンタル騎に乗りながら、必死にハラリエル型装騎を動かそうとするポーレのコーチをする。

まず、関節が逆に曲がるという特徴のあるこのハラリエル型装騎は、人によっては最初の歩くという段階が壁になる人も多い。

「大体はコンピューターが助けてくれるからテキトーで良いんですよテキトーで!」

コンピュータの補助があるとは言え、人によっては感覚と動作が釣り合わない場合もあり、そう言う場合は歩行ですら困難なのだが、どうやらポーレの場合はその点は問題ないようだった。

スズメの助言や助けもあり、見る見るうちにポーレはハラリエル型装騎での歩調を速めていく。

ついに走れるようになったポーレにスズメが言った。

「それじゃあ、次は跳んでみましょう!」

「えっ!?」

あからさまに驚いたような声を上げるポーレ。

「ハラリエル型の真骨頂は跳躍戦闘です! 跳べないハラリエルはただのハラリエルなんですよ!」

何を言ってるのかよく分からないが、スズメはポーレにジャンプをしてみるように勧める。

「意外とスパルタですね」

「いーんじゃないの。ポーレにはもっとドキョウを付けてもらわなきゃ」

「そーだねぇーぃ。ポレポレがんばってぇー!」

スズメの言葉と、そして仲間たちの応援にポーレは静かに深呼吸。

恐怖を感じながらも、頑張って――その足を踏み込んだ。

「うわっ、わわわわわぁぁああああああああああああ!??」

普通の装騎では簡単には跳べない高さまで軽々と到達するハラリエル型装騎の跳躍。

重力と浮遊感を感じ、ポーレは叫び声を上げた。

ハラリエル型装騎の跳躍がピークに達し、そして落下を始める。

ズドドォォオオン

激しい音を立て、ポーレの動かすハラリエル型は無事に地面へと着地した。

その後、みんなと合流してチャイカが作ったお弁当を食べながら、スズメがポーレへと尋ねる。

「どうだった? ポーレくん!」

ポーレはあの跳躍した時の感覚を思い出していた。

胸が激しく高鳴り、額に汗が伝い、体中が熱くなる感覚。

「こ、怖かった、です……でも」

「でも?」

「とても、楽しい……です」

そう言うポーレの顔には、満面の笑顔が浮かんでいた。

「なんだか、ポーレくんを見てたらわたしも装騎を動かしたくなりました」

「そーね、どうせヒマだしニユも練習でもしてみるわ」

「うほーい! うちも乗る乗るぅ~!!」

「それじゃあ、お弁当食べたらまた装騎に乗りましょう!」

昼食後、再びレンタルコーナーへと足を運び、交代ずつでハラリエル型を動かすナルルにニユ、そしてオムの3人娘。

最後は複座ユニットに換装したハラリエル型を使って、ムーンサルト・ストライク。

そうしてその1日は過ぎていった。

「スズメちゃん、なんか顔色悪いけど大丈夫か……?」

「いえ、さすがにあれだけぶっ通しで宙返りをしたら気分が……」

ちなみに、初めはポーレ達4人にムーンサルト・ストライクを体験してもらおうと思っていたのだが、当然ながらその姿は周囲の人々の目を引く。

結局、知らない子ども達にもムーンサルト・ストライク体験をさせることになってしまい、何度も何度も跳んだ結果、流石のスズメも疲労困憊。

「まぁでも……子ども達が喜んでくれて良かったです」

スズメが昼食のお弁当を口からぶちまけたのはそう言った直後だったという。

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