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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:動乱編
162/322

ステラソフィアのアヤカシ

「イザナちゃーん!!」

ある日の放課後、ユウレイがイザナの元へと姿を現した。

何やら目に涙を浮かべており、その顔は蒼ざめている。

「アンタが私に頼ってくるなんて――何があったのよ」

「そ、それがですね……私の住んでるトイレがあるじゃないですか」

「そのトイレがどうかしたの? 塩でも撒かれた?」

「なんか建ってるんですよ、ヘンな祠が!」

「祠って……誰がんなもん建てたのよ」

「それが分からないから、イザナちゃんを頼りにしてるんですよ!」

ユウレイの言葉に露骨にイヤそうな表情を浮かべながらも「まぁ、ヒマだし」と呟くと言った。

「とりあえず……最初に当たるならアイツらの処ね」

最初の心当たりとしてイザナとユウレイの2人が尋ねたのは機甲科寮チーム・ヴァイスシュベールトの部屋だった。

「と、言うことなんだけど――ドラゴンスレイヤーは何か心当たりある?」

「トイレに変な祠――でござるか……と言うか、それで真っ先に拙者たちのところにきたでござるか?」

「そうよ。アンタらには前科があるでしょ」

イザナの言葉に、ドランゴンスレイヤーことトリュウが渋い表情をするが、その傍でクライスが

「それは認めるが――生憎、アタシ達に心当たりは無いんだ。すまないな」

と口にする。

「っていうか、アンタらのフューラー・ツンデレはどこに行ってるのよ」

「フューラー・ツィタデレでござるよ!」

「フューラーはまだ帰ってきておりません。なんでも、カスカ先輩から何か頼み事をされてるとかで……」

「カスカ――――?」

ランマの言葉にイザナが「誰それ」と問おうとした瞬間、バダン! と部屋の扉が勢いよく開けられ、フューラー・ツィタデレが帰ってきた。

「たっだいま~ってうおっ!? ヒラサカ・イザナ!」

「おかえりー。アンタ何しに行ってたのよ」

帰ってきて早々イザナに睨まれ、明らかにビビっている様子のフューラー・ツィタデレ。

そんなフューラー・ツィタデレは恐る恐る口を開いた。

「え、何、不倫がバレた旦那――的な?」

「そーいうボケは良いから!」

「ヨ、ヨミズの所に届け物を、だな」

「ヨミズって誰よ。さっきのカスカってのと同一人物?」

「カスカ・ヨミズ。ボクの同期で、チーム・アヤカシのリーダーさ!」

「何ソレ怪しい!!」

「それで、ツンデレさんはどーいう理由でそのカスカさんのところまで?」

「ツィタデレだ! ――何でも、祠に結界を張りたいから知恵を貸してくれと」

「それよ!!」

「それです!!」

それだった。

「とりあえず、アンタは1発殴らせなさい」

「なしてッ!?」

「「「フューラー!!!!」」」

「ふぅ、スッキリしたわ――――ユウレイ、行くわよ」

「はい! チーム・アヤカシの部屋ですね!!」

と、言うことで2人が尋ねたのはチーム・アヤカシの寮室だった。

「カスカ・ヨミズ出て来きなさい!!」

「一応先輩なんですから、先輩くらい付けた方が……」

「どうかしたの?」

イザナの言葉に出てきたのは、乱れたくすんだ茶髪に鋭い目つきの少女。

「あなたがカスカ・ヨミズさん?」

その少女が口を開こうとした時、イザナが言った。

「コイツは違うわ。コイツは私と同じ1年生よ」

「おおっ、イザナちゃんが人の顔を覚えてるなんて!!」

「名前は忘れたけど――アンタ確か、スタンプラリーでレイニ先生に板チョコを貰ってたわね」

「うん」

それは、4月のチームワーク実践演習初回の授業での話だ。

どういうわけか、その時板チョコを貰ったメンバーの顔はイザナの記憶に残っているようだった。

「イノメ・イクサ……」

「で、イクサ。アンタらのリーダーは?」

「取り込み中……部屋にいる」

「呼んできなさい」

「取り込み中……」

「良いから呼んできなさい!」

イザナの声に部屋の扉が開き、1人の女性が出てきた。

「何事か」

出てきたのは漆黒の長髪――イザナもなかなかの長髪だが、それ以上の長さの女性。

彼女がチーム・アヤカシ所属の4年生カスカ・ヨミズだった。

「アンタがカスカ・ヨミズね。ユウレ――トイレに変な祠を建てたのもアンタ?」

「左様……怪しげな気を感じたと言うのでな」

イザナの態度にも動じず、淡々と告げるヨミズ。

「ちょっとアレ邪魔なんだけど。どかしてくれない?」

「何故」

何故――と言われると確かにそうだ。

あのトイレは基本的に誰も使っておらず、最早、何かされた所で困るのはユウレイくらいだ。

しかし、ここでユウレイのことを説明するわけにもいかない。

「そこの女の子……」

不意に、部屋の隅から声が響き、イザナは肩を震わせる。

どういうわけか、部屋の隅に三角座りで座る怪しげな雰囲気の少女がいた。

「何か感じるのか? ウメ」

「うん」

静かに頷いたのはチーム・アヤカシ所属の2年生ワラシ・ウメ。

その瞳はしっかりとユウレイへと向けられている。

「そこの子――見たことない。それに……死んで、いる?」

「アンタ……」

「成程――トイレに住む幽霊……其処の女がそうか」

「イ、イザナちゃん……」

ユウレイが怯えたような目でイザナに助けを求めた。

「はぁ、んで、アンタたちはユウレイが幽霊だったら何だっていうの? 成仏でもさせようっての?」

そう問いかけたイザナだったが、ふと口元に手を当てると、

「……それは良いわね」

今まで、ヘンなテンションだったイザナが不意にクールダウンしたかのように真顔で呟いた。

「やめてくださいよ!!!」

さすがに成仏はしたくないユウレイがイザナを必死で説得し始める。

「あぁもう、うるさい!」

「成仏させるかどうか――それはウメに決めて貰おうか」

ヨミズに振られたウメが静かにユウレイの顔を覗き込んだ。

ジーッと深い瞳がユウレイを映す。

「どうだ?」

「コレは…………」

「ど、どーなんですか……?」

「まぁ、大丈夫そう」

「何だ、ガッカリだ」

「全くね、ガッカリだわ」

「何でガッカリするんですか!!」

「痛っ」

最早、ユウレイの味方をする気が無くなってるイザナの言葉にユウレイは思わずイザナの頭をはたいた。

「アンタ――ちょっと一発殴らせなさい」

「うわぁぁあああ、ごめんなさーい!!」

そんな会話を繰り広げる傍で、ヨミズは誰かに連絡を取っている。

「何だ、もう帰ってくるのか。まぁ何れ使う事もあるだろう」

「誰と話してんのよ」

「ヒムカに除霊道具の調達を頼んでいたのだが」

「除霊!?」

ヨミズの言葉にユウレイが明らかにビビっているのが分かる。

「それはもう良い――と連絡をしたがもう調達し終えて帰ってくるようなのだ」

「ただいまかえりました。折角買って来ましたのに、いらないの?」

「済まないなヒムカ。解決した」

「どういう風に解決いたしましたか?」

「そこにいる女が幽霊だ。邪気は無い」

「なるほどなるほどー」

ヨミズの言葉に驚いた様子も無く、ヒムカと呼ばれた女性はユウレイをマジマジと見つめた後、静かに1礼。

「チーム・アヤカシ所属の3年生。ヒムカ・ツゲグシですの。よろしくお願い申し上げます」

「ご、ご丁寧にどうも。ユウヤミ・レイミ、です……」

「えっとツゲグシ?」

「はい。――あら、貴女はヒラサカ・イザナさん。何でしょう?」

「除霊道具を買ってきたっていうけど、何を買って来たのよ」

イザナの言葉に、

「何でそんなこと聞くんですか!?」

ユウレイが叫び声を上げる。

「後学のためにね」

「何の後学なんですー!? 嫌な予感しかしないんですけどぉー!」

「良いから、ツゲグシ。アンタ何買って来たの?」

「はい、コレですよ」

そう言いながらツゲグシが取り出したのは、有名メーカーの消臭スプレーだった。

「ってなんで消臭スプレーなのよ」

「よく効く、と評判ですよ?」

「どこでよ」

「ネットで、です」

「ネットかよ」

「もしかして、私、消臭スプレーで除霊させられるところだったんですか……?」

「試してみよっか?」

「嫌ですよー!!」

何だかんだあったが、ユウレイが成仏させられることはなさそうだった。


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