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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:動乱編
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追跡! スズリコデート!?

「最近、スズメとリコの仲がやけに良いような気がする」

「リコ……クラスタリアス・リコリッタ?」

ふと、イザナの発したその言葉にモード・ヘレネが首を傾げた。

「そうよ」

イザナは頷くと、1枚のノートを取り出す。

『スズメノート』と書かれたそのノートのあるページを開くとヘレネへと向けた。

「これは……?」

「ここ最近、スズメの行動表よ」

その中にはちらほらと……ではあるが「リコリッタと外出」と言う文字が見える。

「どう言うわけか、リコと出掛ける事が多くなってるのよ!!!」

イザナの言葉にヘレネが口元へと手を当てた。

「どう読んでるの? それで。イザナは」

「私の読みではあの2人――付き合ってるわね」

「超絶飛躍……」

「そうかもしれないわ。でもこの前なんて、2人ともおそろいのTシャツを持ってるのを見たのよ!!」

いつぞやの商店街でのイベントでもらったTシャツなのだが、イザナがそれを知る由は無い。

「今日も2人で外出するみたいなのよ」

「尾行? つまり」

「ええ、あの2人の関係をしっかり調べるのよ」

と言うことでその日、スズメとリコリッタ――その2人が一緒に外出するのを後ろから尾行することになった。

「機関車に乗ったわね――行先は……カナンかしら」

「そうっぽい。行こう、私たちも」

ステラソフィア学園都市から機関車に乗り、神都カナンへと向かうスズメとリコリッタ。

その後ろから、イザナとヘレネも後を追いかける。

そのままの恰好だとスズメとリコリッタにバレると思い、ちゃっかり変装済み。

イザナの恰好は長髪を両サイドで結びサイドテールに、そしてヘレネから借りたゴシックロリータ系のドレスに身を包んでいる。

対してヘレネは大きなサングラスにトレンチコートを着、男性物のハットを深く被っていた。

正直な話――――逆に目立つ。

やがて、機関車が神都カナンの駅に着くと、スズメとリコリッタが連れ立って機関車を降りた。

「行くわよ」

「モチ」

その後を追いかける奇妙な2人組。

人々の視線が2人に注ぐが、そんなことはお構いなし。

2人の意識は、スズメとリコリッタの2人にだけ注がれている。

やがて、スズメとリコリッタは駅前にある大きな建物へと足を向けた。

「ここは……ミラヰビルね」

そこは数々の商業施設が集まった建物ミラヰビル。

女子――特におしゃれ女子であれば、足を運ぶことも何らおかしくもない建物だが、イザナは言った。

「普通のスズメがこんな所に来るはずがない!」

「何。普通って」

「リコだってこんなお高いお店に行くはずもないし……やっぱり、2人の意識を変える何かが……!」

「穿ちすぎじゃない。イザナは」

「そうかしら?」

「あ、乗った。エレベーター」

「エレベーター……さすがに一緒に乗るのは……まずいかしら」

「変装は完璧――筈」

「それじゃ、正面突破ね」

スズメとリコリッタが乗ったエレベーターの扉が閉まる直前。

「すみませぇーん」

声を必死に高くして、キャピキャピしながらエレベーターへと飛び乗るイザナ。

その後にヘレネも続く。

「うわ、すごい人……」

スズメの呟きが聞こえるが、イザナは必死で知らんふり。

さすがにすごい2人組が入ってきたと驚いてるのか、スズメとリコリッタが何やら小声で話をしているが、やっぱりイザナもヘレネも必死で知らん振り。

顔も見られないように必死必死に2人から背ける。

「2人の行先は――――映画館……なるほどね」

エレベーターの点灯しているボタンを見て、イザナは少し納得した。

さらに、そのエレベーターには映画館の上映作品リストが貼られており、その中には「劇場版ニャオニャンニャー」の文字が。

「コレ、見に来たのか。2人は」

「みたいね」

あまり会話をしていてはバレるかもしれないと、とりあえず2人は映画館に着くまで口を噤む。

エレベーターの扉が開き、イザナとヘレネ――その後に続いてスズメとリコリッタが映画館のフロアへと足を降ろした。

スズメとリコリッタの2人にそれとなく追い抜かせると、

「良かった……スズメはいつものスズメっぽいわ」

と安堵のため息を漏らす。

この2人は別にシャレオツなショップでショッピングする訳ではなく、単純にニャオニャンニャーの映画を見に来ただけだと言うことにどこか安心感を覚えていたのだ。

「でも、リコリッタは? キャラ、そんなん?」

しかし、安心したのも束の間。

ヘレネの言葉でイザナは一気に引き戻される。

「……確かに。リコリッタはラピッドピットは好きだけどアニメなんて見るタイプじゃないし、わざわざスズメと一緒に見に来るなんて……」

「ハマったパターン? 彼が好きなモノに」

「ッ!!!! なるほど……くっ…………とりあえず、私たちも映画を見るわよ」

「無いんじゃ、必要」

「そんな事無いわ。あわよくばスズメとリコの2人の様子を観察できるかもしれないし」

そして、映画のチケットを購入し、入場者特典のニャオニャンニャー・トレーディングデータカードを貰うとシアターへと足を運んだ。

席に座り周囲を見回してみる。

「見当たらないわね……」

「こうなる。やっぱり」

「まぁ、良いでしょ。映画終わるまで外で待ってるのも大変だし」

やがて、シアターの照明が落ち、映画が始まった。

「ひぅっ……ひっく……」

「うぅぅぅぅ」

映画が終わり、シアターを出たイザナとヘレネは――――どういうわけか号泣していた。

「まさか、あんな王道ストーリーにやられてしまうなんて……」

「全く。演技、演出――最高傑作」

「姫が身を挺してニャオニャンニャーに勝機を与えるシーンが最高だった……」

「敵が庇った。ニャンニャーを……泣いた…………」

「最後のニャオニャンニャーの演出……熱かったわね」

「ニャオニャンニャー・激情…………パンフ、載ってた」

子ども向けだと高を括っていたイザナとヘレネだが、思わぬ打撃を心に受けてスズメとリコリッタのことも忘れて映画の熱いシーンについて語りだす。

「グッズ、買いに行きましょうか」

「モチ。良いお店、聞いてみる。イヴァに」

「頼んだわ」

その後、スズメとリコリッタのことをすっかり忘れて、2人ともニャオニャンニャーグッズを大量に購入し、2人仲良くステラソフィアへと帰った。


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