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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアでハロウィンです!
158/322

Koledu, nebo vám něco provedu!

「ねえねえイザナちゃん! 今日、ステラソフィアでもハロウィンのイベントをするんだって!!」

10月31日――それはハロウィン。

この日、ステラソフィアでもちょっとしたイベントをしているようだった。

「イベントって……どんなのよ」

「なんでも、学園都市の対象のお店で仮装して“トリック・オア・トリート”っていうと、お菓子とかいろんなものがもらえるとか……」

スズメの言葉を聞いたイザナは「ああ」と何かを納得したような声を漏らすと、

「だから今日はステラソフィアがモンスターハウスみたいになってんのね」

と言った。

そう、その日ステラソフィアのあちこちで仮装したステラソフィア生が学園都市関係者の姿があり、イザナはそれとなく気がかりだったのだ。

「そう言えば、ヒミコとかも何かメイクしてたわね」

そして、イベント好きなヒンメルリヒト・ヒミコなどもやはりこのイベントに合わせて何らかの仮装をしているよう。

「それで――」

「それで、私たちも仮装をしようってことかしら?」

「イザナちゃん、仮装したいの……?」

スズメの言葉に、だがイザナは満更でもない様子で、

「そんな訳無いでしょ」

と言った。

「その顔はしたがってる顔だって!」

「そんな事無いわよ。抑々、当日になっていきなり準備なんて……」

「そーいうと思って、ユウレイが準備をしておきました!」

突然、壁からにゅっと生えるように出てきたのはユウレイ。

「イザナちゃんにピッタリの仮装を持ってきましたよ~!」

そう言うと、何かが入った袋をイザナへと差し出した。

「コレ、どうしたのよ」

「ユウレイが作りました!」

「アンタが? もしかして、霊感がない人にしか見えない服だったりしないわよね」

「王様の服はー霊の服ー!」

「それ違うの混じってる」

なんとなく、今日はユウレイに対してもどこか優しいイザナ。

「イザナちゃん大丈夫だよ。使ってる材料は普通の材料だし、誰でも見えるますよ」

少し心配そうなイザナに、スズメがそうフォローする。

「お陰で、ステラソフィアに“独りでに服を縫うミシン”っていう怪談が増えちゃったけど……」

「ダメじゃん……」

ユウレイが家庭科室を使って服を作っていたところを誰かに見られてしまい、そんな怪談がステラソフィアに広がっていた。

「まぁ、なーにはトモアレ! イザナちゃんはこのユウレイ自慢の衣装を着てもらっちゃいます!」

「一体どんな服なのよ」

「メイド服ですよメイド服!」

「メイド服――? 私のキャラには合わないけど……まぁ仕方ないわね」

そしてしばらく。

イザナがユウレイの作ったメイド服へと着替えて戻ってきた。

その姿を見たスズメが両手を合わせながら、声を上げる。

「おお、イザナちゃん似合ってる! ユウレイちゃん、このメイド服はどんなコンセプトなの?」

「はい! シンプルで美しい白い衣装がイザナちゃんの黒髪の艶やかさをさらに引き出し、清楚感を出してくれるこの衣装! それに三角巾を合わせることで、キュートな雰囲気で整え、さらに足袋と草履を履くことでどこかオリエンタルな雰囲気のメイド服です!」

「って言うかこれ、経帷子きょうかたびらじゃん!」

つまり、死に装束であった。

東方オリエントの血を持つイザナちゃんにはピッタリのオリエンタルメイドコーデですよ?」

冥土メイド違いだわ! ……まぁ、仕方ないわ。で、スズメはどんな仮装するの?」

イザナの言葉に、スズメは頷くと何やらダンボールの塊を持ってくる。

そのダンボールを着こむと、

「アブディエル型装騎の仮装です!」

と言い張った。

「どう見ても、ただダンボールを着ただけなんだけど」

「アブディエル型装騎の仮装です!!」

「ス、スズメがそういうならそれでいいけど……」

「みなさん準備できちゃいましたよねー! サリナちゃんとイヴァちゃんも待ってるはずです! 一緒に行きましょー!」

「ちょっと待ちなさい」

揚々と足を進めようとするユウレイをイザナが呼び止める。

「全くもう、なんですかぁ?」

「ユウレイ、アンタは仮装しないの?」

そう、ユウレイはいつものステラソフィア機甲科制服姿――ハロウィンだからと言って、仮装をしているわけではなかった。

「私ユウレイですよ? ユウレイがお着替えするなんて聞いたことありますー?」

「無いけど……アンタなら出来そうじゃん」

「確かに、ユウレイちゃんなら出来そうだよね!」

「うーん、そうですね~。ちょっと試してみちゃいます!」

しばらく、むむむむむーと何かを念じるように目を閉じるユウレイ。

すると不意に、点滅するようにユウレイの体が一瞬消え――――そして、現れたユウレイは――頭に傘がついていた。

「何それ……」

「唐傘お化けです!」

「いやいや、頭に傘のっけただけじゃん!」

「まぁまぁイザナちゃん。そろそろ時間がないですし、巻いていきましょーよ」

「巻くとか言わない」

なんだかんだで、スズメとイザナ、ユウレイの3人はサリナとイヴァと合流した。

「お待たせー」

「待たせたわね」

「来ましたー!」

出会って早々、サリナとイヴァの視線がイザナへと集中する。

「ヒラサカさん……何かすごい恰好ね」

「なんか東洋的で素敵さー。なんの服だば?」

イヴァの問掛けに、イザナではなくユウレイが声を上げた。

「オリエンタルメイド服です!」

「あの世の方のメイドだけどね――っていうか、サリナは無難に攻めてきたわね」

「まぁね」

そういうサリナの服装は、黒いローブに帽子、そして箒と普通に魔女の恰好。

対して、イヴァは……

「イヴァはダンボール2号?」

「ダンボールじゃないさー! メタトロン型装騎の仮装さ!!」

1号とはいうまでもなくスズメのことであり、イヴァもスズメとそう大差ないクオリティ。

ドレスのようになったダンボールを必死に指さし、メタトロン型装騎だと言い張っている。

「まぁまぁ、良いじゃない。それよりもどこかお店に行きましょう」

場の空気に充てられているのか、サリナもどこかノリノリの様子。

「でも、イベントに参加しているお店ってどこにあんの?」

「分からんさー」

「イベントに参加――してるかどうかは分からないけど、お菓子くらいならもらえそうな場所知ってるよ!」

「ほへー、スズメちゃん、どこのお店ですかー?」

「はい――――それは、ホシゾラ土産店です!」

と、言うことで場所はホシゾラ土産店。

「いらっしゃいませぇ。あぁら、スズメちゃんじゃない~」

スズメたち5人を迎えたのは、元チーム・ブローウィングの卒業生ナカモズ・ミドウ。

店の表に、イベント参加を示すジャック・オ・ランタンのシールが貼られていることから、このお店もイベントに参加しているらしい。

「ミドウ先輩、トリック・オア・トリート!」

「「「「トリック・オア・トリート」」」」

スズメに続いて、イザナ、サリナ、イヴァ、ユウレイが声を揃えて決まり文句を唱えた。

その様子を微笑みながら迎えると、

「あらあらぁ、それではお菓子をお出ししましょうかねぇ」

そう言いながら、カウンターの裏を探り始めるミドウ。

だが、困った表情で顔を上げた。

「先輩?」

「あらあらあらぁ……ハロウィンイベント用のお菓子が切れてしまってるみたいですねぇ」

「ええ!? それじゃあ、貰えないんですか……?」

落胆するようなスズメたちの表情に、ミドウは少し考えるように宙を仰いでいたが、

「ではぁ、こぉいうのはどーでしょう? わたしと、あなたたちの内の誰かが装騎バトルをする。もぉし、わたしに勝てましたらこのお店にある好きなものを1つあげましょう」

「ほ、本当ですか!?」

「えぇ」

と、言うことで戦いの幕が上がった。

ナカモズ・ミドウの装騎はアサリア型をベースにした装騎ヴュルガー。

ドラク、ドラクルカと言う細身の槍を2本その手に持った機甲装騎だった。

対して、スズメたちからは――――

「たまには私が出るわ」

そう自ら名乗りを上げたヒラサカ・イザナが戦うことになった。

なお、今回のバトルでは新型のX装騎ではなく旧装騎を使用することとなる。

「では、装騎バトル――――スタート!」

スズメの声で、ミドウの装騎ヴュルガーと、イザナの装騎アイロニィがぶつかり合った。

両手に持ったサブマシンガン・レッカを斉射しながら、装騎ヴュルガーへと接近する装騎アイロニィ。

その射撃を装騎ヴュルガーがドラクとドラクルカを使い巧みにあしらう。

「接近できれば十分よ」

もちろん、射撃で仕留められるほど甘くはないとイザナも理解している。

イザナはすぐにサブマシンガン・レッカを手放すと、ナイフ・クサナギを構えた。

そして――

「カマイタチ」

イザナの得意技――カマイタチを放つ。

風になった装騎アイロニィが装騎ヴュルガーの傍を通り過ぎる――だが、

「チッ」

舌打ちをするイザナ。

イザナの1撃は――だが、装騎ヴュルガーを切り裂くことはなかったからだ。

「さすがにあれだけの場で使った技は通用しないようね」

「えぇ、これでも元ステラソフィア生ですしねぇ~」

そう言うミドウの実力は本物。

そして、今度はミドウの装騎ヴュルガーが、右手に持ったドラクを構えた。

風になるように、しなやかに体を捻りながら装騎アイロニィの傍を通り過ぎる装騎ヴュルガー。

「この動きは!」

スズメが思わず声を上げる。

「『カマイタチ』――っぽい技ですぅ」

その動きはまんまカマイタチ――――その一撃は装騎アイロニィの左肩に、ドラクによる穴を穿った。

しかも、技名を言う声のトーンはイザナの声にそっくり――――

「わたしはぁ、人の技と声をモノマネするのが得意なんですよぅ~」

「人の技を――著作権料取るわよ」

そう、ミドウの一番の得意技は“模倣”。

人が使う技を見て、体験して、体感して、自分のモノにするという能力が非常に高かった。

「まだまだ行きますよぉ~『シューティングフレア』っぽい技ですぅ」

次は、ソレイユの声真似をしながら2本の槍で強烈な連撃を繰り出す。

一瞬にして複数の剣撃を放つソレイユの技「シューティングフレア」を模倣したその技は、得て物が槍である、そして両手の槍を使って行っている――と言う差異はあるものの、ソレイユが使用するその鋭さを正確に再現していた。

「さぁさぁさぁ、『突貫斬りチャージスラッシュ』っぽい技ぁ、からの『スィクルムーン・ストライク』っぽい技ぁ」

「うわぁ、私の技までぇ!」

「ったく、一々声真似がムカツクわね」

相手が先輩とはいえ、容赦ない暴言を吐くイザナ。

何とか凌いでいるとは言え、やはりミドウは強い。

「イザナちゃん! こういうパクリキャラは未公開の新技を公開すれば倒せるのが定石ですよ!」

「新技――なるほど」

スズメのアドバイスにイザナは口元を歪めた。

「ありがとうスズメ。分かったわ新技ね。それならあの技を使わせてもらうわ」

イザナはそんな呟きを漏らしながら意識を集中させる。

「もしかして、新技があっちゃったりするのー!?」

「ええ。本邦初公開よ――――私の新技……」

そう言いながら、イザナはナイフ・クサナギを静かに構えた。

「ツムジカゼ――」

そして、その技名と共に、装騎ヴュルガーの横腹を抉るように、ナイフをひらめかせた。

「って、コレもスィクルムーン・ストライクじゃないですかー!」

その動きはまんまスィクルムーン・ストライクのソレだった。

「まさかのパクリ合戦さー」

「うっさいわね」

イヴァの突っ込みに、口答えするだけの余裕はあるようだが、モチロンその1撃は装騎ヴュルガーには効かない。

「しょうがないじゃない、技のネタも技名のネタもないんだから!」

「それ誰の叫びだば」

「ええいっ、ならコレで行くわ。――――カコウリュウ!」

今度は、ナイフ・クサナギを上から振り下ろすように装騎ヴュルガーへと閃かせる。

「ハーフムーン・スラッシャーのようさー」

「ハーフムーン・スラッシャーはナイフを振り下ろしてるだけだからねぇ」

だが、ここでイザナは何かを閃いた。

イザナはあえて装騎アイロニィのナイフの振り下ろしを止めず、そのまま地面へと手を付ける。

「この動きは――?」

見たことのない技の振りに、警戒するミドウ。

装騎アイロニィはそのままナイフを地面に置き、そして右手を使い側転をするように体を回転させた。

「そしてこのまま――――」

不意に、装騎アイロニィの左手にアズルの輝きが灯る。

掌部にあるアズルの補給口からアズルを敢えて漏れさせ、その手をアズルで纏ったのだ。

「ぶん殴る!!」

そして、イザナの言葉通りアズルを纏った左手で、装騎ヴュルガーをぶん殴った。

「バトル終了!! 勝者は――ヒラサカ・イザナ!!」


「今日はちょっと得したね」

帰り道、ホシゾラ土産店でもらったモノをそれぞれ抱えながらスズメ達5人は歩いていた。

ハロウィン仕様のひのきの林1ダースセットを抱えたスズメの言葉に、

「でも、本当によかったのかしら……」

銘菓ステラソフィア・ミルフォーユの箱を持ったサリナが呟く。

「別にいいのよ。勝者は私たちなんだから」

そう言うイザナの手には、ステラソフィア新歓時にMVKを取ったことから作られた1/3スズメフィギュア。

「イヴァは満足さー」

「はい、太っ腹な先輩でした!」

満足そうなイヴァとユウレイの手にも、装騎メタトロンのプラモデル(一部メタルパーツ仕様)とパーティーメガネとそれぞれの欲しいものを手に持っている。

そんな感じで、スズメたちのハロウィンは終わりを迎えた。


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