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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
楽しい学園祭
154/322

チャンプ再び

ステラソフィア星礼祭、2日目。

フニーズド・ロコヴィシュカはその日も星礼祭へと足を運んでいた。

前日は結局、技術科のコクテンシ・ヒバリと夜遅くまで装騎について話をしてしまい、家に帰れなくなったロコはチーム・ブローウィングの寮室に泊めてもらったのだった。

「今日も盛況みたいだねー」

ロコは装騎喫茶で軽食ランチを食べながら、スズメと雑談を繰り広げる。

「そういえば、ロコちんはリラフィリア機甲学校に通ってるんだよね」

「そうだよ」

「リラフィリアってどんな所なの?」

「やっぱ、テレシコワ中やこことは全然雰囲気違うかな。不良もいるし……」

「そうなんだ……ちょっと怖いね」

「よっしゃ、あと1回じゃ。あと1回だけ引いてやるぜ!!」

「おお、お客さん行くねぇ! 5000ペニーゼ入ったよぉ!!! レッツ、11連!」

「なにか盛り上がってるね」

ふと、周囲のざわめきと熱狂が2人の意識にとまる。

「サリナちゃん、どうしたの?」

たまたま近くにいたサリナへと尋ねるスズメ。

「どうやら、ガチャに大金をはたいてる男の人がいるみたいね。それをトワイちゃんが煽っちゃってすごいことになってるみたい」

「ガチャってあの1回500ペニーゼのあれですよね……やっぱり、やる人っているんですね」

ロコの言葉に、スズメもサリナも頷いた。

「って、アレ……あの人」

「え、あの人って……うわ、マジ?」

そこでふと、スズメとロコがその男性の姿に気付くと、それぞれがそんな声を上げる。

「私、ちょっと行ってくるね!!」

「ええ!? ズメちんっ!!」

スズメを呼び止めるロコの声も虚しく、スズメは“その男性”の元へと駆けていった。

「チャンプー! こんな所で何してるんですかー?」

「うおっ、お前ぇはいつぞやの……本物のサエズリ・スズメ!!」

その男性とは、以前、ゲームセンターで戦ったことのあるリラフィリア機甲学校生だという少年ムルタ・リーガル、通称チャンプだった。

「チャンプは私の偽物に会ったことでもあるんですか……?」

「ねーけどよ。っていうか、チャンプって呼ぶんじゃねえぞオラ!!」

「前は自称してたじゃないですかー!」

「う、うっせーぞオイコラっ!」

黒歴史を掘り返されたように、どこか恥ずかしさを隠すように声を上げるチャンプ。

「名前で呼べよ名前で!」

「えっと確か――村田?」

「ムルタ! ムルタ・リーガル!!」

「チャンプほどしっくり来ないですね……」

何やら変なやり取りを始める2人の傍で、ロコがスズメの袖をくいくいと引っ張り、耳元でささやいた。

「ズメちん、それくらいにしたほうが良いんじゃない……?」

どこか怯えるような表情を浮かべるロコにスズメは首をかしげる。

「この人なんだよぉ。リラフィリア機甲学校にいる不良って……喧嘩も絶えないし、問題ばっかり起こしてるっていう……」

「おい、聞こえてんぞオラァ」

「ひぃっ、殺される!」

そんなロコの言葉に、チャンプが上げた声――それにロコは怯えたように、目に涙を浮かべた。

「大丈夫だよー。私が思うに、この人そんな悪い人って感じしないし」

「んだと!? 俺はワルだぜ! ガキにゲームの順番を譲らないくらいのワルなのはテメェも知っとるやろ」

「田舎のなんちゃってヤンキーみたいな感じですよ。プラヴダ中は意外とこういうキャラ多かったし、ちょっと慣れてるんだよね」

「誰がなんちゃってヤンキーじゃ!! いいか、俺はカナン東部の不良組織を牛耳る――」

「話を聞いたら結構面白いこと聞けそうですしね!」

「話を聞けコラァ!!!」

「ズメちんのそういうところはちょっと尊敬できるかも……」

チャンプの言葉を馬耳東風、本人そっちのけで彼の個人的な印象について話すスズメに、ロコも呆れと尊敬を覚えてくる。

「いいか? 俺は泣く子もさらに泣き出す大悪党――なめた口をきくと……」

「お、リーガルじゃん。お前がこんなところ来るなんて……明日は星が落ちるな」

「げっ、ツ、ツバサさん!?」

「ってアレ、ツバサ先輩――? チャンプと知り合いなんですか?」

「チャンプ? ああ、SBOか。そうそう、アタシも大会とかよく出てるしさ」

そう笑うツバサに、リーガルはどこか「不味い」という表情を浮かべてる。

その理由はすぐにわかった。

「んじゃ、リーガル。今度の日曜の初心者講習楽しみにしてるからな!」

そう言い置いて去っていくツバサの背を見ながら、リーガルはどこか気まずそうに宙を仰ぐ。

「チャンプ、初心者講習してるんですかー!?」

「う、うっせぇ!!!!!」

「なんだー、やっぱり良い人なんじゃないですかー。ロコちんも少しは怖くなくなったよね?」

「そう、ですね」

「別に怖くなくなる必要はねーんじゃぁ!! まったく、なんてタイミングだよ。厄日かよ!!」

「お客さん」

頭を抱えるリーガルの傍で、ふと今まで黙っていたトワイが口を開いた。

「ムーンサルト・ストライク体験券。当たっちゃったよ」

スズメとチャンプが会話を繰り広げる間でとっくに終わっていた11回連続ガチャが当たっちゃっていた。

「はぁ!? マジかよ」

そう声を上げながらも、どこか嬉し気なチャンプ。

「と、いうことでスズメちゃん!」

「当たったならしょうがないですねー。複座ユニットに換装してください!」

その後、ムーンサルト・ストライクを体験したチャンプの悲鳴が響き渡ることになる。


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