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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
楽しい学園祭
153/322

ステラソフィア星礼祭!!

10月23日金曜日。

この日、このステラソフィア学園都市はどこか色めき立っていた。

それもそのはず――――このステラソフィア学園都市は今日からの3日間、

「学園祭ですぅっ!!!」

学園祭が行われるからだ。

『星礼祭』と名付けられたステラソフィア学園都市を上げてのお祭りは、初日から大盛況を迎えていた。

実はこの10月23日はマルクト神国の建国記念日――それ故に、普段以上に初日からの盛り上がりを見せている。

「いらっしゃいませー装騎喫茶いかがですかー?」

そして、このステラソフィア星礼祭――スズメ達ステラソフィア高等部機甲科1年は装騎喫茶を開いていた。

場所はムーンサルト・ストライク体験などとの兼ね合いもあり、グラウンドに調理場や席を用意した開放的なオープンカフェの様相。

装騎喫茶と言う名の通り、ところどころに機甲装騎を思わせる意匠が凝らされていた。

展示スペースのようなところには機甲科生(主にウィリアムバトラー所属のイヴァ)が組み立てた装騎のプラモデルやジオラマなども飾られているのが見える。

グラウンドには、装騎スパローや装騎アイロニィなど機甲科1年生が搭乗している装騎の実物もあり、一部の装騎好きには堪らないだろう。

そこでステラソフィア機甲科1年生達は、それぞれの役割に勤しんでいるのだが、今回の主役は彼女達機甲科1年生ではない。

「いらっしゃいませ! 何名様ですかぁ~!!」

生徒の多くがステラソフィア機甲科の制服や、装騎搭乗用のツナギを着用する中どういうわけかメイド服に身を包んだチーム・リリィワーズ所属のアルク・アン・トワイ。

そんな彼女の言葉に、その少女は口を開いた。

「1人です」

「はい、いちめぇー様ですねぇ! お席へご案内しまーす!」

少女は誰かを探すように、周囲をきょろきょろしている。

「もしかして、ロコちん――!?」

そんな少女に1人の女子生徒が話しかけてきた。

「ああ、ズメちん!!」

「わぁ、久しぶり! 小学校以来だぁ!!」

そう手を取り合う2人――

「何、この子スズメの知り合い?」

その間からイザナがそう割って入る。

「うん。小学生のころの親友だよ!」

「初めまして。フニーズド・ロコヴィシュカです」

そう丁寧にあいさつをする姿から、かなり人の好さそうな子だとイザナが思った。

「まさかロコちんと会えるなんて思わなかった!」

「テレビで学園祭のことを見て、もしかしたらズメちんに会えるんじゃないかって思って来たんだ」

「嬉しい! 何か食べてく? ちょっとヘンなシステムだけど、普通に食べていく分にはそんなにお金かからないから!」

「うん、食べてく! でも、ヘンなシステムって……?」

首をかしげるロコに、イザナがメニュー表を持ってくる。

「ありがとうイザナちゃん!」

スズメはイザナからメニューを受け取ると、その説明を始めた。

「まず、入店時にドリンク料金として200ペニーゼがかかります。ドリンクはウーロン茶、アイスティー、アイスコーヒー、イノメ特製青汁の5つから選べて、プラス50ペニーゼでオレンジジュース、メロンソーダ、ホットティーなどのプレミアムドリンクが選べるようになります!」

「つまり、入店した時点で最低でも200ペニーゼは取られるってこと……?」

「はい!」

言うまでもなく、サヤカ先生とトワイの2人が考えたシステムだ。

「それにプラスで、各種単品メニュー、セットメニュー、スペシャルメニューとかから選んで注文するんだよ」

スズメに促され、ロコはメニューへと目を通す。

装騎喫茶ランチタイムセット、朝食風軽食ランチセットなど、一見普通なメニューが続く中、最後の『スペシャルメニュー』と題されたページを見たロコがスズメへと尋ねた。

「このハッピースペシャルガチャっていうのは?」

「これは、一回500ペニーゼでいろんな特典が当たるガチャができるんだよ!」

「なになに、ムーンサルト・ストライク体験券、好きな機甲科一年生とタンデム券、デート券30分、1時間、2時間、3時間……ランチセット無料券、セットメニュー無料券、単品メニュー無料券、次回入店割引券……なにこれ」

「サヤカ先生とトワイちゃんが2人で考えたんだって。5000ペニーゼ払うと特別に11回引けるんだよ!」

「11連ガチャ……」

ちなみに、いわゆるハズレである次回入店割引券と単品メニュー無料券以外は当たった人は今のところいない。

そう、サヤカもトワイもぼったくる気満々であった。

「えっと、オススメは?」

「オススメはこの装騎喫茶ランチタイムセットかなぁ! 装騎喫茶らしいメニューってことでイヴァちゃんが提案したんだ」

ちなみに、ステラソフィアセットというおもちゃが付いた子ども向けのランチセットもあったりする。

「じゃあ、それにしようかな。飲み物はアイスティーにしようかな」

「かしこまー!」

それから暫く、ロコの目の前に装騎喫茶ランチタイムセットが運ばれてきた。

「これは――――?」

メインとなるのは、豆腐や肉、野菜が一緒に混ぜられた炒め物。

それに、炊き込みご飯のようなものが添えられており、さらに刺身とどこかオリエンタルな雰囲気もある。

だが、それらはどうやらメインではないらしい。

それらが盛られたお皿の中心に、1個のどんぶりがドンと置かれている。

「ズメちん、これは何?」

「ソーキそばだよ!」

そう、幅が厚い平らな麺の上に骨が付いた肉の塊が“積まれて”おり、各種薬味が添えられているソレがこの装騎喫茶の看板料理――リサデル・コン・イヴァプロデュースのソーキそばだった。

「なるほど……装騎喫茶だからソーキそば――ってことなんだ」

装騎ソーキ繋がりという単純な洒落であった。

「味見したけどとっても美味しいよ! ダシから取ってるらしいからねー」

「ちょっと量が多いけど……い、いただきます! あ、本当だ美味しい!」

そんな感じでロコは昼食を済ませると、スズメと一緒に星礼祭を回ることにする。

「でも、お店の仕事とかよかったの?」

「うん。指名も無いし良いんだって。何かあったらチャットが来るだろうしね」

「指名って……」

「それで、ロコちんは気になる出し物とかある?」

「えっ!? あ、その――実は4年生の、映画が気になる、かな」

スズメの言葉にどこかソワソワしだすロコ。

「もしかして、4年生の誰かのファンなんだ!」

「ええ、何で分かったの!?」

「分かるよぉー。小学生の頃に隣のクラスのヴァーツラフくんが好きって言ってた時もそんな感じだったもん!」

「ちょ、やめてよぉ!」

「それで、誰のファンなの? やっぱりソレイユ先輩とか?」

「その……実は、ツバサ、さんが…………」

そう、ロコが憧れているステラソフィア4年生とは、スズメと同じチーム・ブローウィングに所属するワシミヤ・ツバサその人だった。

「ツバサ先輩のファンだったの? 手紙に書いてくれればよかったのに!」

「なんか、ほら、小学以来会ってなくて手紙でしかやり取りしてないし、友達だからってそういうこと頼むのは、ちょっと図々しいじゃない」

「そんなことないよぉ!」

そんな会話をしながら、2人が足を運んだのは機甲科4年生の出し物である映画上映が行われている視聴覚室だ。

今回の学園祭に備え、機甲科4年生はそれぞれで脚本、演出、役者に撮影と自分たちでオリジナルの映画を作り、上映をしていた。

「タイトルは……ピースチナ装騎隊? どんな映画なのかなズメちん」

「主演がクイーン先輩だ。……監督もクイーン先輩だ」

なぜかその配役に不安を覚えるスズメ。

とりあえず、2人はその“熱砂の装騎隊”を見るために視聴覚室へと入室する。

暫くすると、まるで本物の劇場のような前宣伝や注意が表示された後、本編が始まった。

「なんか、ヘンな映画だったね……」

「ツバサさんが、カッコよかったです!」

映画が終わった後、2人はそれぞれ感想を言い合う。

その内容は、砂漠での戦いで孤立してしまった主人公クイーンが、道中で様々なイケメンと出会い仲良くなりながら敵陣を突破――本隊と合流するというストーリー。

そのイケメン役として、ステラソフィア屈指の女性人気を誇るディアマン・ソレイユやワシミヤ・ツバサと言った面々が登場していた。

「お、スズメちゃん。もしかしてアタシらの映画を見てくれたのか?」

そんなスズメとロコに声を掛けてきたのは――

「ツバサ先輩!」

「ツ、ツツツ、ツバサさん!?」

もちろん、ワシミヤ・ツバサその人だ。

「そっちの子はスズメちゃんの友達?」

「はい、親友です!」

「フニーズド・ロコヴィシュカですっ。よ、よろしくお願いします!」

「ああ、よろしく!」

そう微笑むツバサを前に、舞い上がっているような様子のロコ。

「ロコちんはツバサ先輩のファンなんだって!」

「ちょっと、ズメちん!!」

「アタシのファン!? そうか――それなら何かサービスしないとな」

そう呟き、何か考え込むツバサ。

その様子を見て、

「いえいえいえ、いいですいいです! 気を遣わずに!!」

とロコは手足をばたつかせた。

「ツバサ先輩はヒマありますか?」

「ヒマか――ああ、作るよ」

ツバサはそう言うと、他の4年生に向かって何かを話始める。

それから暫く、スズメとロコの元へと戻ってくると、

「作ったぞー」

「さすがツバサ先輩です! では、一緒にお話しでもしながら学祭を回ろうロコちん!」

「えぇぇえええええ!!!???」

と、言うことでスズメとロコにツバサを加えた3人は雑談をしながら学祭を見て回った。

「そうかー、ロコちんとスズメちゃんは同じ小学校だったのか。中学は別なのか?」

「はい、わたしはその――カナンの中学に通ってましたから……」

「カナンの? どこ中?」

「テレシコワ中です」

「あー、チャイカのじいちゃんが理事長をしてるとこか。かなりの名門だよなあそこ」

「ええ、あそこってチャイカ先輩のおじいちゃんが理事長なんですか!?」

そういうことはあまり詳しくない――と言うか興味のないスズメは、今判明した事実に驚きが隠せない。

「そういえば、チャイカ先輩の名前を聞いたとき聞き覚えがあったようななかったような……」

と1人ブツブツ何かを呟いている。

「テレシコワ女学園も機甲装騎には力を入れてるはずだけど、ロコちんも騎使なのか?」

「いえ、わたしはどっちかっていうとメカニックです……テレシコワ中にも、装騎整備の勉強をしたくて入ったんですよ」

「小学生の頃、私が世界一の騎使に、ロコちんが世界一のメカニックになって2人で世界一のコンビになろうねって約束したことがあったね」

「あったねぇ!」

昔を思い出して、懐かしむスズメとロコ。

そこに、ツバサが率直だが、どこか空気を読めていない質問をぶつけた。

「ってことは、ロコちんもステラソフィアは受けたの?」

ツバサの質問に、ロコは少し苦い表情を浮かべる。

「はい、技術科を受験したんですけど……落ちちゃって…………」

どこか寂しげな表情を浮かべるロコだったが、そんな彼女にツバサが一言。

「それ正解」

「え?」

思わぬ返答にぽかんとなるロコ。

「いや、ステラソフィア――特に技術科って変人が多いからさ……ロコちんみたいな子が来たらダメになりそうなんだよな……」

「ああー、確かに……特に技術科って変な人多いですよねぇ」

「機甲科だとあまりないけど、技術科って意外とやめるヤツ多いしな。馴染めなくて」

「そ、そうなんですか……」

「んで、今はどこの学校行ってるの?」

「はい、リラフィリア機甲学校に行ってます」

「リラフィリアかー。あっちも変人は多いっちゃ多いか……機甲科にだけどな」

「リラフィリア――聞いたことありますねぇ! そうなんだぁ、ロコちんリラフィリアにいるんだ!」

比較的最近、リラフィリア機甲学校に属する中学時代の因縁の相手と拳を交えたばかりなのだが、スズメの中にその学校名はイマイチ定着していないようだった。

「そんじゃあ、メカニックのロコちんのためにもう一丁オススメの場所に行くか」

「オススメの場所、ですか……?」

「ツバサ先輩、どこに連れていく気ですか……?」

「技術科だよ技術科。スズメちゃんの装騎スパローの整備をしている子とか気になるだろ?」

「ま、まぁ、多少はそうです」

「ヒバリちゃんたちのところに行くんですかー?」

「おう、今日はたっぷり勉強していくと良いぜ!」

グイグイ引っ張るツバサに乗せられ、ロコは

「はい、頑張ります!」

と一言。

そのままその日1日ロコはヒバリの元で装騎スパロー、延いてはハラリエル型装騎の特徴や整備方法などを学ぶこととなった。


挿絵(By みてみん)

フニーズド・ロコヴィシュカ

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