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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
マルクト包囲網
152/322

天空の檻

10月16日金曜日。

“栓抜き作戦”の成功により活気づくマルクト神国軍に対し、マスティマ連邦、ブリタイキングダム、ルシリアーナ帝国3国を中心とし、マルクト周辺国家を総動員した1つの作戦が始まろうとしていた。

予てより、“マルクト包囲網”と称し、その準備を進めていた作戦――『天空の檻ニェーボ・クリェートカ作戦』が発令される。

「こちら西方第2連合装騎部隊。シエル・キャージュ作戦の準備完了」

「北部第4連合部隊――ヘヴンズ・ケイジ作戦よし」

「南方、第7連合装騎隊チェーロ・ガッビャ作戦の準備できました!」

「東部の第3装騎部隊です。イーグボルト・ケトレツ作戦問題ありません」

「天空の檻作戦――開始しろ!」

対マルクト連合軍の4方からの攻撃がマルクト神国国境警備隊へと浴びせられる。

その攻撃を受け、すぐさまマルクト神国のあらゆる機甲科学校へとスクランブルがかけられた。

そう、彼女達にも――――

「緊急発進!? ツバサ先輩!」

「どうやら敵国が攻めて来たらしい!」

「マスティマ連邦ですか? ルシリアーナ?」

「連合軍ですわ。東西南北――4方からの同時攻撃、らしいですの」

「!! マルクト包囲網――――っ!!」

「どうやら始まったみたいだな――――反マルクト国の反抗作戦が、な!」

その作戦が近いうちに始まる――そう知っていたスズメ達にそこまで大きな驚きはない。

しかし、それでも引っ掛かるモノを感じずにはいられない。

「今日攻めて来たってことは――何かしらの勝機、があるんですよね」

「マルクトの装騎を打ち破るだけの――か……」

「そうなりますわね……」

「とりあえず、さっさと出撃してさっさとブッ倒したいんですよォー!!」

ステラソフィアのマスドライヴァー・ダーウィーズによって順次、戦場へと射出されるステラソフィア機甲科生たち――――そして、スズメ達チーム・ブローウィングも戦場の1つである東部デブレツィンへと足を降ろした。

閃く猛火――――アズルの煌めきが交差する戦場へと降り立つチーム・ブローウィングの4騎は、対マルクト連合軍の戦い方を見る。

「相変わらず、駆逐装騎頼りのアウトレンジ攻撃か――――!」

「――――いえ、アレは!」

ツバサの叫びの傍で、1騎の機甲装騎が対霊子ジュエルを盾にした装騎が前へと飛び出した。

そこに1撃の弾丸が――魔電霊子砲の射程にも劣らない長射程を誇る弾丸が、対霊子ジュエルの盾を破壊する。

「スナイパーライフルか!?」

「ちょっと待つのですわ――――くっ、スキャンが遅いですわね…………っ」

シャダイコンピュータの通信圏からやや離れていると言うこともあり、いつもよりも遅いレーダースキャンにわずかな焦りを見せるチャイカ。

だが、スキャンが完了すると、そのデータがチーム・ブローウィングの4騎へと共有された。

「今の射撃――この装騎ですわ。見たところ新型――――それに、あの武器は……」

「ベルゼビュートと同じ――霊莢型電磁投射砲カートリッジレールガンですか!」

霊莢アズルケースと呼ばれる特殊なケースに弾丸を収めることで、射出時の装騎の消費アズルを抑え、さらに弾丸にアズルを纏わせることで威力を上げることができる、マスティマ連邦の技術「霊莢型電磁投射砲カートリッジレールガン」。

それをさらに大型化させ、遠距離からでも強烈な射撃を浴びせることができるように改造された新型電磁投射砲を構える、新型の駆逐装騎。

「確認しましたわ――あれはマスティマ連邦製駆逐装騎――――ベルフェゴール、ですわ!」

前回、マルクトが行った『栓抜き(エフナー)作戦』において、ルシリアーナ・マジャリナ連合軍がマルクト神国の作戦に敗れた敗因――それは、対霊子ジュエルなどの、対魔電霊子装備への対策が取れなかったためであった。

対霊子ジュエルに対しては、実弾武器で少しでも傷を付けられればその効果を抑えることが容易に可能となる。

だが、ルシリアーナの技術では、駆逐装騎ペルーンの持つ魔電霊子砲の射程に見合う射程を持った実弾武器を所持する機甲装騎が開発できなかった。

しかし、今回――対マルクト連合軍と言うことでマスティマ連邦とルシリアーナ帝国が連合軍を形成――――実弾武器に於いては霊莢型と言う技術でルシリアーナより先を行っていたマスティマ連邦が作り出した実弾武器を用いる新型駆逐装騎ベルフェゴールを駆逐装騎ペルーンと同じ部隊として運用することで、前回の敗北への対策となった。

「戦いは距離――――ウチの持論ですのに」

「さすがにリディニークじゃあの距離は届かないか?」

「そう、ですわね……相手は完全に移動と接近戦を捨ててますわ」

「攻撃射程に全振りってか……下手に数騎で接近しても」

「護衛にベロボーグやベルゼビュートがいますね。こんなにたくさん装騎を用意してるなんて……」

「一大反抗作戦は伊達じゃないってことか」

「どうしますツバサ先輩。とりあえず、レイ・エッジ大切断でも撃ち込みますか?」

「……いや、待てよ。そんだけ強力で広範囲を叩ける技があるんだったら――――接近して使えば」

「……! なるほど――それが1番効きますね」

「行き――ますの?」

「うがぁぁぁああああああああああああああ、行くならさっさとしやがるんですよォ! マハはもう限界なんですよォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

「下手したら死ぬが……」

「行きましょう!」

なんだかんだ言いながら、全員決めていたのだろう。

スズメの言葉にツバサ、チャイカ、マッハが頷いた。

「こちらステラソフィア女学園チーム・ブローウィング――吶喊とっかんする! 行くぞ、GO! ブローウィング」

「「「GO!!」」」

「スパロー・無限駆動インフィニットドライブ!!」

無限駆動でアズルを纏った装騎スパローを先頭に、装騎スネグーラチカ、装騎チリペッパー、装騎スーパーセルと敵陣へと突っ込んでいく。

「バカか!?」

「突っ込んでくる――ヤツら、この前の!」

「逆付きがいるチームか……!」

装騎スパローのアズルと、装騎スネグーラチカの魔力障壁により、着実に敵陣へと突っ込んでいくチーム・ブローウィング。

そして、一気に距離を詰めると装騎スパローがその手を掲げる。

「行きますっ! スパロー・レイ・エッジ――――大、大、大、大、大・切・だぁぁぁああああああああん!!!!」

装騎スパローの強力な魔電霊子のブレード。

これを受けては、ひとたまりも――――いや、

「敵装騎の1割の撃破を確認――1割、だけ……? いえ、これは……!!」

「これは――――魔力、障壁!!」

装騎スパローの強力な1撃――だが、その強力な1撃の派手さのわりに、敵装騎の撃破率は低かった。

その理由は――――敵の装騎の中に紛れ込んでいた、ルシリアーナやマスティマ連邦の装騎とはまた違った意匠の装騎。

「あれは、まさか――――魔術、装騎!」

以前戦ったゴーレムにもどこか似ているその装騎は通称魔術装騎と呼ばれる類のモノだった。

魔術大国マギアが使用していた装騎ツァウベル――どういうわけか、その装騎ツァウベルが対マルクト連合軍の中に混じっていたのだ。

5騎の装騎ツァウベルが、連携を取り魔法陣を描きながら、巨大な魔力障壁を形成する。

その巨大な魔力障壁が、装騎スパローのレイ・エッジ大切断の威力を抑えた原因だった。

「なんだと――――!」

ツバサの額に脂汗が浮かぶ。

「まさか、魔術装騎――マギアの魔術使を隠し玉にしていただなんて」

マギアの魔術使は、チャイカ達マルクト神国出身の魔術使とは質が違う。

そして、マルクトの圧倒的な技術力の優位性も、その魔術の神秘で押し返してしまうことも多々あった。

それ故に、マルクト神国は侵攻初期の段階で早急に魔術大国マギアを侵攻し、滅ぼしていたのだ。

「最悪の場面で出てきましたね……」

逆に言えば、対マルクト連合軍にとっては最高のタイミングでその脅威を見せつけることができた。

魔電霊子装備の駆逐装騎、電磁投射砲装備の駆逐装騎、そして、このマギア製魔術装騎――――この3つが、今回この「天空の檻」作戦の実行を決定した大きな要因だったのだ。

多数の敵の前で、立ち往生することになったチーム・ブローウィングの4騎。

「これは――マズいぞ。撤退だ!」

「殿は私が! 無限駆動があるので、耐久力はあるはずです!」

「ウチも援護しますわ! とりあえず、マッハちゃんは先に撤退するのですわ!」

さすがにこの状況はマズイとマッハも理解しているのか、反抗することもなく、だがどこか悔しそうに頷くと、いの一番にマッハの装騎チリペッパーはその場を離れる。

その後を追うように、敵の追撃に対して応戦しながら、装騎スーパーセルを先頭、装騎スパローを殿に、残りの3騎も撤退した。

言うまでもないが、この戦いはマルクト神国軍の完全敗北だった。

圧倒的兵力、圧倒的遠距離射撃、さらに魔術装騎をも持ち出した対マルクト連合軍の「天空の檻」作戦により、マルクト神国は東西南北のシャダイコンピュータ支援圏外、支援制限圏の土地を奪い返される。

その後、シャダイコンピュータの準支援制限圏、支援圏へと退却したマルクト神国軍はシャダイコンピュータの情報支援により何とか対マルクト連合軍の侵攻を押しとどめることができたのだが、戦局はこのまま膠着状態へと陥った。


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