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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:激動編
150/322

エーテルリヒトのお姫様

「全員集まったようね」

ここはステラソフィア女学園機甲科に数ある教室の内の1つ、視聴覚室。

そこにスズメ、イザナ、サリナ、イヴァの4人――に加えて勝手についてきたユウレイの5人が集まっていた。

4人は今日、どういう訳かカラスバ・リンに呼び出され、この教室に来ていた。

「どうして私がアナタ達を呼び出したか、分かるかしら?」

「いえ、分から、ないですけど……」

何やら異様な雰囲気の中、サリナがそう言葉を絞りだす。

「本当に?」

「わたし達、別に悪いことしてないですし」

「だからよー」

しばらく、ジッとスズメ達4人を睨むような素振りを見せていたが、ふいと目をそらすと、

「冗談よ」

と言った。

「アナタ達は、今この国にエーテルリヒト王国のミリエライシュト姫が来ていることは知ってるかしら?」

不意に飛び出したその質問に、サリナが首を思い切り縦にふる。

「知ってます! 見に行きました!!」

どこか興奮しているような様子のサリナ――彼女は、ミリエライシュト姫のファンなのだった。

「わぁ、お姫様ですかぁー! ユウレイも見てみたいなぁ!!」

空気を読まずにそう口にするユウレイの言葉は、だがリンには届いていないようだ。

「でも、エーテルリヒト王国って今ヤバいわよね」

イザナの言葉に、リンも首を縦に振る。

「ヤバいって……?」

そう尋ねるスズメに、サリナが答えた。

「ほら、何でも次期女王争いでドロドロしてるとか、永世中立国の立場を貫きたい護国派と反マルクト国家に肩入れしたい急進派とで内部争いがあるとかって……」

「第1王女ノルニリアの変死事件。第2王女レーニルイア、第4王女ユーリエライヒの失踪……これらは全て急進派の仕業だと一部では噂されているな」

「ミリエライシュト姫は第3王女なんですよね」

「だったら、その変死事件とか失踪事件とかは全部そのミリエライシュトがやったんじゃないの?」

サリナに、イザナが冗談のつもりで言ったその言葉――だが、サリナはグッとイザナを睨みつけると、

「ミリエライシュト姫はエーテルリヒト王国次期女王候補の中でも一番素晴らしいお方なのよ! それに、第4王女ユーリエライヒ姫とは実の姉妹で、とっても可愛がっていたんだから!! ユーリエライヒ姫が行方不明になって1番悲しんだのは――――」

「じょ、冗談よ! 落ち着いてサリナ!!」

さすがに触れてはいけない部分に触れてしまったと感じたイザナが必死にサリナを宥め、謝る。

「まぁ、それは置いといて」

「置いとくんですか!?」

「実はアナタ達に面倒を見てもらいたい子がいるのよ」

「わたし達に、ですか……?」

サリナもそうだが、スズメもイザナもイヴァも――ユウレイも首をかしげる。

そんな中、リンに案内されて1人の少女がスズメ達の前に通された。

服装はラフなTシャツにパンツだが、柔らかな黒髪に、どこか気品を感じさせる1人の女性。

「わぁ、綺麗!」

「だからよー!」

スズメとイヴァが、その女性の雰囲気に飲まれる中、リンが紹介をする。

「このステラソフィア学園都市と神都カナンを観光したいと申し出てきた旅行者――名前はリエラ。彼女の案内をアナタ達4人に任せるわ」

「えっ」

「はぁ?」

「ええっ!?」

「あいっ」

「ほへぇー!!」

5者5様の反応を見せる5人に――まぁ、1人は見えていないのだがリンは頷くと、

「それじゃ早速、校舎から案内してあげなさい」

平然とそう言った。

「いやいやいや、なんでわたし達なんですか!?」

「いろいろ考えた結果、アナタ達の“グループ”が1番無難だと思ったのよ」

「それだけの理由ですか!?」

「他の“無難”なチームは女子力が高すぎたり、嫌に距離感が近すぎて気持ち悪いからね」

「気持ち悪いて」

「まっ、そういうことだからアナタ達に任せたわよ」

「カラスバ先輩!」

サリナの声も聞かず、リンはさっさと部屋を後にする。

残された5人――もとい6人の間に静寂が訪れた。

そんな静寂をぶち壊したのは――――

「それじゃあ、まずは自己紹介しちゃいましょう! 私はユウヤミ・レイミ。ユウレイちゃんです!」

ユウレイだった。

さっきまで姿が無かったはずの少女が突然現れたことに、一瞬驚きを見せたリエラ。

だが、すぐ平静に戻ると、

「わたしはリエラ。えっと、シュテル・リエラです」

「エーテルリヒト・ミリエライシュトじゃないんですか!?」

続けて放ったユウレイの言葉に、5人の間に硬直が走る。

「あ、あ、あ……あーッ!!!!!」

そう声を上げたのは、ミリエライシュト姫のファンであるサリナ。

「ミリエライシュト、ミリエラ、リエラ――なるほどね」

何かを勝手に納得してるイザナ。

「え、本当にミリエライシュト姫なんですか?」

「イヴァにはよくわからんさー」

失礼じゃないかという気持ちと好奇心が葛藤しているスズメに、いつもどおりのイヴァ。

どうしようもなくなった状態の中、決意を決めたように、リエラは静かに頷いた。

「ですけど、その、色々あって――できればわたしがエーテルリヒト・ミリエライシュトだと言うことは口外なさらぬようにお願いします……」

「と、当然です!」

謎の女性が、ミリエライシュトだと分かってサリナはどこか緊張した様子。

そんな様子を見ながら、リエラは言った。

「あと、そのように緊張なさらずに……同級生と接するようにお願いします」

そうは言うものの、やはり中々難しい。

だが、そんな中ユウレイが口を開く。

「それじゃあ、まずはリエラちゃんに機甲科を案内してあげよーよ!」

そう言うと、ユウレイはリエラの手を取ると視聴覚室から外へと出る。

「あ、そうだね! ユウレイちゃん待ってー!」

「全く、仕様がないわね……」

「イヴァもいくさー」

「ってちょっと皆、待ってよ!」

それから、スズメ達5人はリエラにステラソフィアの案内をし終わった後、ステラソフィア中央街にある1軒のファストフード店へと来ていた。

「って、なんでよりによってファストフードなのよ」

「何言ってるんですか! お姫様が来たら連れて行く場所はバーガー屋って決まってるんですよ!」

サリナのボヤキにユウレイがそう力説する。

「私のオススメは、このとろけるチーズバーガーです!」

「って言うかアンタ食えんの?」

「気持ちですね!」

「意味分からんわ」

そんなやり取りをするユウレイとイザナのそばで、スズメ達はメニューを見ながらあれこれと何を注文するか話し合っている。

「私のオススメはやっぱり照り焼きですよ照り焼き!」

「わたしはこの野菜たっぷりバーガーが良いかしら」

「イヴァはがっつりデミグラスハンバーガーが良いと思うばーよ」

「リエラちゃんは何にする?」

「私はこのあらびき黒胡椒ビッグハンバーガーというのが気になります」

黒々とした胡椒が盛大にまぶされたそのハンバーガー。

「か、辛そう!」

「だからよぉ」

そう言うスズメとイヴァをよそに、

「それじゃあ、わたしが注文するわね」

サリナが注文をし始めた。

やがて、それぞれが注文したハンバーガーが席へと運ばれてくる。

「イザナちゃんは何にしたの?」

「チキンよ」

「なるほどー。1口食べて良い?」

「! もちろんよ……」

スズメにそう尋ねられたイザナの顔が少し緩んでいることには触れないでおこう。

「リエラさんのってあらびき黒胡椒ビッグハンバーガーでしたっけ?」

「はい」

「ねえねえ、ソレ美味しいー?」

「美味しいですよ!」

そう言うリエラの表情に嘘はなさそうだ。

この、黒胡椒がガッツリ効いた辛そうなハンバーガーを美味しそうに頬張っている。

「えっと、1口食べますか?」

「うん、食べるぅー!」

リエラにそう尋ねられ、ユウレイはリエラが差し出したあらびき黒胡椒ビッグハンバーガーへと齧りつく。

「うわァ、からーい!!」

1口目でユウレイはギブアップ。

自分が注文したとろけるチーズバーガーのチーズのマイルドさで口直しをし始めた。

「サリナちゃんもどうですか?」

「え、わたしも!?」

急にそう尋ねられたサリナは一瞬慌てたようにアタフタとしていたが、一拍おいて深呼吸。

そして、口を開く。

「それじゃあ、頂きます! ――――辛っ!」

舌を出しながら、微かに涙を浮かべるサリナの姿に、リエラの口元に笑みが浮かんだ。

「もー、何ですかぁ」

笑みを浮かべるリエラの姿に、思わずそんな言葉がサリナの口をつく。

「ふふっ、こういうの楽しいですね」

「私もその胡椒バーガー食べてみたい!」

「あらびき黒胡椒ビッグハンバーガー、ね」

「スズメちゃんも食べますか? 良いですよ!」

「わーい、ありがとう! 代わりに私の照り焼きバーガーも一口――――って辛っ!!」

「イヴァももら――――あいぇなぁ!? これはでーじさ……」

「全く、だらしないわね。ここは私に任せ…………」

「あら、もういらないんですか?」

満を持してと言うように、あらびき黒胡椒ビッグハンバーガーを口に入れたイザナだが、1口目でストップ。

そんな様子を見て、リエラがそう問い掛けた。

「アンタもしかしてドS……?」

「そんなことないですよ」

そう言いながら、平然とあらびき黒胡椒ビッグハンバーガーを頬張るリエラ。

「ねえねえ、これ食べ終わったらどこ行く?」

「いつもどんなトコ行ってたっけ……」

「そうねぇ。それじゃあ、カナンまでショッピングに行きましょうか!」

「おもちゃ屋にも行くさー!」

「ゲーセンにも行っちゃいたいです!! 良いよねリエラちゃん!」

「はい、どこにでも行きましょう!」


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