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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ウィリアムバトラーの十字架
15/322

東の王者

後半戦。

今日の日程はこれから行われるABブロック4試合、計8試合で終了となる。

前半戦8試合と後半戦8試合で勝ち残ったチームが明日対戦をし、そこで決勝のカードを決めるのだ。

そして、最盛り上がりとなる決勝戦はその翌日の休日に神都カナンの大スタジアムを使って行われる。

それだけ、この新入生歓迎大会は学内だけではなくマルクト国民から注目される試合であるのだ。

「後半戦はチーム・ソルフェージュは準備があるんで、あたし、マジェスティックフォーのイリエ・ユカが司会を引き継ぐのだ!」

新たに出てきたイリエ・ユカ司会の元、後半戦が開始された。

試合は進み、第6試合が開始された頃だ。

「……あれ?」

「どうしたんだスズメちゃん?」

恐らく次の試合の参加チームだと思われるチームのメンバーが席を外していく。

そんな中、スズメは1人の少女の姿にその目を引かれた。

艶やかな黒髪を揺らし、勝気にも、無感動にも見える不思議な雰囲気の瞳の少女。

「ヒラサカ、イザナ……?」

「ヒラサカって言うと……ヘブンズフィールドのヒラサカ・イザナか!?」

「そうです……東の四天王ヘブンズフィールド中。その、エースです」

四天王決定戦中等クラス東ブロックの覇者ヘブンズフィールド中学。

彼女、ヒラサカ・イザナはそのトップエースであり、サエズリ・スズメらプラヴダ中が決勝に於いて苦汁をなめた相手でもあった。

不意に、イザナがスズメの方へと目を向けた。

イザナとスズメの目と目が合う。

しかし、彼女は気付いていないのか、それとも意にも介していないのか。

イザナの表情は変わらぬまま、ふいと顔を逸らし他のチームメンバーについて歩き出す。

「アイツらは――チーム・ミステリオーソだな」

「ミステリオーソ……」

「順調に行けば、準決勝で当たることになるね」

第6試合も終わり、第7試合が開始される。

そう、チーム・ミステリオーソの初戦だ。

「えっと、第7試合Bブロックぅ! その時、世界が動いた! チーム・アブダクション!!」

歓声と共に、チーム・アブダクションのメンバーとチームがモニターに映される。

4年エイリアス・グラネとその装騎スーパーノヴァ。

3年バーンネス・ハルカとその装騎サンフレア。

2年スズノ・G・フーカとその装騎ノーザンクロス。

1年オーガニア・ミドリとその装騎アストロン。

「対するは、不思議大好き仲良し4人! チーム・ミステリオーソ!!」

4年ヒンメルリヒト・ヒミコとその装騎フリップフロップ。

3年クラスタリアス・リコリッタとその装騎ラヴァーズ・シックス。

2年レインフォール・トーコとその装騎ニューウェイ。

そして1年、ヒラサカ・イザナとその装騎アイロニィ。

「チーム・ミステリオーソ1年、ヒラサカ・イザナちゃんはなんと去年の四天王決定戦東ブロック優勝中学のエース! どんな戦いを見せてくれるか楽しみなのだ」

ヒラサカ・イザナの装騎アイロニィ。

細身の体に、腰や背中に武器を多数装備した灰色のその装騎。

「ベース騎は……PS-H2ヘルメシエル、ですかね」

「マハと同じなんですよ!」

「そうだな……」

手に持っているのは14mmサブマシンガン・レッカ。

その背に増設されたウエポンラックには側面に取り付けられた盾が特徴的な9mmシールドナインライフル。

腰にも爆弾と思しきものをぶら下げているのが分かる。

「それではBブロック7回戦、開戦なのだぁ!!」

チームリーダーのヒミコが搭乗する装騎フリップフロップがイザナの装騎アイロニィへと何か合図を送る。

それに、アイロニィが頷くと、他のメンバーを置き去り、チーム・アブダクションの元へと突撃していった。

「おい、まさかアイツ……」

「1人で、倒すつもりですね」

「あらあら……」

最軽量騎であるヘルメシエルがベースであるアイロニィはその機動力を生かし、チーム・アブダクションの装騎へと近付いた。

それからの手際は鮮やかだった。

一瞬でアブダクションと接触したかと思うと、両手に持ったサブマシンガン・レッカによる射撃で先頭を進む3年ハルカの装騎サンフレアを撃破。

そのまま、木々を巧みに利用しながら、他の3騎の迎撃を凌ぐ。

腰のストックの内の1つが自動で解除され、腰から地面へと落ちようとする爆弾。

それを足を巧みに使い、アブダクションの3騎の元へと蹴り入れる。

その蹴り入れた爆弾へサブマシンガンの弾丸を撃ち込み――爆発。

これは火力よりも煙が多くでるように設計された煙幕弾らしかった。

煙幕で目がくらまされた一瞬、その中で更なる爆音が響き、2年フーカの装騎ノーザンクロスが機能を停止したことが画面上に示される。

生き延びた2騎の内、1年ミドリの装騎アストロンへと9mmシールドナインライフルを両手に、連射しながら的確に命中させ撃破。

「す、すごい……」

手早く淡々と、そして的確に相手の装騎を沈めていく様は驚異的だった。

「装騎の火器管制があれば2挺持ちでも当てることは出来る……けど……」

「アレはそんな機能使ってませんよ……自分の力と、勘と、経験で装騎の弱点を的確に狙い落としていく……」

「あれが東の四天王校エースの実力か……」

4年グラネの装騎スーパーノヴァが放つ12mmフラッシュライフルの雨を潜り抜け、スーパーノヴァへと肉薄する。

スーパーノヴァの放つ銃弾を、左手に持ったシールドナインライフルの盾で防ぐだけではなく、右手のシールドナインライフルを撃ち当て、弾き飛ばしながら防ぐと言う荒技も見せ会場を盛り上げた。

フラッシュライフルを投げ捨て、リュウセイ・ブレードを引き抜き近接戦に備えようとしたスーパーノヴァ。

だが、アイロニィはそれよりも早くスーパーノヴァの背後へと回ると、腕の部分に隠されていたナイフが射出されアイロニィの手に収まる。

その手に持ったナイフ・クサナギをスーパーノヴァへと突き刺した。

「試合しゅ~りょ~! Bブロック七回戦は、チーム・ミステリオーソが勝利なのだぁ!!」

湧き上がる場内に対し、騒然とするスズメたち。

いや、それはスズメたちだけでは無かった。

この戦いを見ていた機甲科の生徒は全員複雑な面持ちでその戦いを見守っていたのだ。

「私達……勝てるんでしょうか…………」

スズメのその言葉は、ある意味、その場にいた機甲科全員の思いと重なった。


オマケイラスト

挿絵(By みてみん)

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