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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:激動編
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秋だ! 紅葉だ! 狩り時だぁ!!

「わぁ、綺麗ですねぇ!」

10月4日の日曜日、スズメたちチーム・ブローウィングは紅葉を楽しむためにバーデン=ヴュルテンブルクへと来ていた。

「そうだなぁ、たまにはこういうのもいいなぁ」

紅葉した鮮やかな木々に囲まれながら、シートの上に腰を下ろすスズメ、ツバサ、チャイカ。

そのそばでマッハが木の周りをせわしなく走り回っている。

「スズメちゃん、どうですか?」

「美味しいです!」

スズメは、チャイカが作った弁当に入っているピロシキを頬張りながら、満面の笑みでそう言った。

「よかったですわぁ」

「飲み物もいろいろ持ってきてるぞ。何を飲む?」

「そうですねぇ……」

ツバサが開いたクーラーボックスの中にはいろいろな飲み物が氷と共に詰められている。

そんな中、スズメは一つの飲み物の存在に気づいた。

「あ、これアムリタソーダですね!」

白と青のデザインが特徴的な乳清炭酸飲料アムリタソーダ。

「私、炭酸って苦手なんですけどコレは好きなんですよぉ!」

「へぇ、でも確かに美味しいよなアムリタソーダ!」

「はい! でも、家だとなぜか飲むのを禁止されちゃってて……」

「禁止って何で……」

「よく分からないですけど……」

「それなら今のうちに飲んでおけよー」

「はい!」

嬉々としてアムリタソーダに口を付けるスズメ。

そのままゴクゴクと喉に走らせる。

「ぷはぁー! 美味しいです!」

「マッハちゃんも何か食おうか!」

「そろそろいい感じでお腹も空いてきやがったし……頂きやがるんですよぉ!」

みんなでワイワイと食事をする中、その事件は起こった。

「ス、スズメちゃん、今何本目ですの……?」

「まだ3本目ですよ~」

弁当に手を伸ばしながらどんどんアムリタソーダを飲み続けるスズメ。

「ギャア!?」

ほのぼのとした時間に、不意にマッハの悲鳴が響く。

「どうしたんですの……?」

「ツバサ先輩がいきなりマハの背中を叩きやがったんですよォ!」

「ほらなんかよくやるだろ? もーみーじってさ!」

「小学生じゃないのですから……」

マッハは何やら呻きながら、服を捲り上げて必死に自分の背中を見ようとする。

マッハからは見えないが、その背中にはツバサの手の跡が綺麗に――――それはもう紅葉のように綺麗な赤色をして残っていた。

「そういえば、こうやって紅葉を見たりすることを紅葉狩って言いますよね」

「そうですわね」

アムリタソーダを飲みながら、ふとスズメがそんなことを口にする。

「紅葉狩……紅葉を狩る…………せっかくですし、私も紅葉を狩ってみたいですねぇ」

「……? スズメちゃん、どうしましたの?」

不意に、スズメはアムリタソーダの缶を置くとスクリと立ち上がった。

スズメは慣れた手つきで普段から持ち歩いている腰のナイフホルダーから2本のサバイバルナイフを取り出す。

そして、右手には逆手、左手には順手でナイフを握るとボーっとした面持ちでマッハ――――、いや、マッハの背中を眺めた。

そんな様子を見て、ツバサが何かを直感する。

「マッハちゃん、逃げ――――」

Zabítザビート!!」

ツバサがマッハに注意を促したその一瞬、スズメが奇声を上げながらマッハへと飛びかかった。

「!?」

咄嗟の瞬発力でスズメの1撃を回避したマッハ。

だが、スズメは完全にマッハのことをロックオンしている。

「あらあら、これは大変そうですわね」

「意外と落ち着いてるなチャイカ……」

「ちょ、助けやがるんですよォ!!!」

「サエズリ・スズメ、狩ります!」

追いかけるスズメ、逃げるマッハ、それを眺めるツバサとチャイカ。

ナイフを手にマッハを殺す気かのように追いかけるスズメだが、意外とツバサとチャイカには余裕がある。

自分が追いかけれていないからだろうか。

「薄情なんですよォオォオオオオオオオ!!!」

マッハの叫びが赤と黄色に彩られた木々の中へと吸い込まれる。

「ツバサ先輩、もしかしてアムリタソーダじゃなくてサワーだったんじゃありませんの?」

「アルコールは入ってねーって! っていうか、スズメちゃんってああなるからアムリタソーダを飲むの禁止されてたのか……」

「そうでしょうねぇ……」

スズメが振りかざすナイフを、マッハは必死で避けまくる。

そんなやり取りが続く中、不意にスズメが宙を舞った。

「お、ムーンサルト・ストライク」

「殺しにかかってますわねぇ」

「シャレにならねーんですよォ!!」

スズメのムーンサルト・ストライクを回避しながらマッハが更に叫ぶ。

「そしてスィクルムーン・ストライク」

「鋭い1撃ですわねぇ」

「今のマハじゃなかったら避けられないでやがりますよァオ!!」

「マッハちゃんも装騎でこれくらい動いてくれたらなぁ」

「ですわねぇ」

そろそろスズメにもマッハにも疲労の色が見え始めたころ、

「そろそろ止めるか……」

「ですわね。スズメちゃん、そろそろお弁当を片付けたいのですけど……」

「お弁当片付けちゃうんですか!?」

必死にマッハを狩らんとナイフを振り回していたスズメ。

だが、それがチャイカの1言で収まる。

「そんな雑に言うこと聞くんでやがりますかァ!?」

「マッハちゃんもまた腹が減ってきただろ? 一緒に食べようか」

「確かに何か食べたいでやがりますけどォ!」

チャイカのそばでモグモグとサンドイッチを口に運ぶスズメ。

その横に座るツバサの傍で、何やら不服そうにカツサンドを口に運ぶマッハ。

サンドイッチを食べ終わり、お腹を満たしたスズメはウトウトとし始め、ついには眠りへと落ちる。

先ほどの騒乱から、一転した静寂。

「今度からアムリタソーダ持ってくるんはやめようか……」

「ですわね……スズメちゃんには申し訳ないですけど」

「なんか異様に疲れたんですよォ……」

そういう言葉が漏れるのも致し方のないことだった。

ちなみにその後、目を覚ましたスズメは自分が暴走したことは覚えていなかった。


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