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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
戦場の猛火
145/322

無限駆動-Apostle of Ruin-

「スパロー・レイ・エッジランサー――クリティカル!」

限界駆動の輝きを帯びたスパローの両腕から、レイ・エッジを突撃槍ランス状にしたレイ・エッジランスが展開される。

その輝きは盾のようにスパローの前へと構えられた。

「行きましょう、ツバサ先輩! 号令を!!」

「分かった。GO! ブローウィング……GO!!」

ツバサの号令に従い、装騎スパローを先頭に、装騎スネグーラチカ、装騎チリペッパー・カップの極み、装騎スーパーセルとタテに並んだ4騎の機甲装騎が駆逐装騎ペルーンの放つ魔電霊子砲の雨の中へと突き進む。

「出力ならコッチの方が上なんです! 行きますよ!!」

スズメの言葉通り、レイ・エッジランスは装騎ペルーンの魔電霊子砲を弾き飛ばしながら、チーム・ブローウィングを敵部隊へと導く。

しかし、敵もそう易々と突破させてくれるはずがない。

チーム・ブローウィングに気づいた周辺のペルーン部隊が、突出したその4騎へと狙いを絞った。

「魔力障壁――側面の防御は任せるのですわ!」

「敵の攻撃が激しくなってきやがったんですよォ!!」

「スズメちゃん、チャイカ、何とか耐えろよっ!」

チーム・ブローウィングと、敵駆逐装騎部隊の距離は次第に詰まっていく。

だがその時、装騎スパローの両腕部のブレードエッジが過剰な魔電霊子砲レイ・エッジの放出に耐え切れず――――

「しまった、スパローの両腕部ブレードエッジのダメージが限界を迎えそうです……っ!」

「なんだって!? スズメちゃん、レイ・エッジをやめるんだ。スパローの両腕が吹っ飛ぶ……!」

両腕のブレードエッジから放たれるスパロー・レイ・エッジ――その出力に装騎自身が耐えられなくなってきていた。

ツバサの言葉に、だがスズメはレイ・エッジを止める素振りは見せない。

「ここで私がレイ・エッジをやめても、敵の前で立ち往生するだけです! それなら――――」

「……そうだな、分かった。突っ込むぞ!」

そうは言ったものの、一か八かの賭けなのは目に見えていた。

敵に突っ込むには相手との距離が遠すぎ、退くには前に出すぎている。

だからこそ、スズメの言葉通りの状況でもあるのだが、内心チーム・ブローウィングは新たな打開策が見つかることを願っていた。

「せめてここが広野じゃなければ――――」

ふと、そんな言葉がツバサの口から漏れるが、敵も下手な策を弄せないようにこの場所を選んだのだろう。

駆逐装騎ペルーンの放つ魔電霊子砲――その砲撃を妨げる物は何もない。

やがて、装騎スパローの両腕へのダメージが更に大きくなる。

「――――このままじゃ……っ! やられる――――!?」

スズメは直感した――――このままだと、殺される。

だが、それと同時にスズメの心はどこかクリアになっていた。

そして次第に装騎スパローから――そしてスズメの体から溢れ出す蒼白い輝き。

「これは――――カヲリの時と、同じ?」

高濃度のアズルが装騎スパローと、スズメの体を覆っていく。

やがて、そのアズルが装騎スパローの体を覆い尽くしたとき――――

「スパローが、魔電霊子砲を弾いた……!」

「これは――アズルの光、ですわね」

その言葉の通り、装騎スパローが纏ったアズルが、装騎ペルーンの魔電霊子砲を弾き飛ばした。

それと同時に、装騎スパローにも変化が現れる。

装騎スパローの装甲が裂け、血管のような蒼く輝くアズルのラインが体に現れた。

「限界駆動とは違う――――もしかして、さらにその先の?」

「限界駆動の先、そんなものがあるんですの?」

ツバサの言葉にチャイカが尋ねるが、ツバサは「分からない」と静かに答えた。

「とりあえず、やってみます!」

スズメは、カヲリを助けたあの時の間隔を思い出す。

自らの感覚が冴えわたり、放出されるアズルに自身の意思が乗っているような感覚。

その感覚で、敵と――そしてその攻撃を感じ取る。

「スパロー!!」

スズメの声に応えるように、装騎スパローから放たれたアズルが、装騎ペルーンの放った魔電霊子砲の一撃を受け止めた。

「軽い――――っ! ツバサ先輩、行きましょう! このまま!!」

「いけるのか?」

「はい、この『無限駆動インフィニットドライブ』なら!!」

「無限駆動?」

「はい、限界の向こう側――――無限大です!」

その砲撃の“感触”にスズメは行けると直感する。

スズメの言葉にツバサは頷くと、装騎スパローを先頭に、このまま駆逐装騎部隊へと突撃した。

駆逐装騎部隊の一角を切り崩し、そこからチーム・ブローウィングの猛攻が始まる。

中でも、装騎スパローの猛攻は激しく、その力は、限界駆動を遥かに超えて、無尽蔵に生み出されるアズルをさらに騎体内外そのすべてを使って操っているように感じた。

アズルリアクターの限界も超え、装騎の器も超え、あふれ出たアズルをそれでいながら操る姿は限界駆動のその先――そう感じさせるものがあった。

故に、スズメは言ったのだろう――「無限駆動インフィニットドライブ」と。

思わぬ襲撃に、マジャリナ・ルシリアーナ連合軍は撤退をはじめた。

『敵の撤退を確認した。お前たちも退け』

敵の姿が無くなった後、フランの言葉に従ってチーム・ブローウィングも退却をした。

何とか敵装騎を撤退させることができたとはいえ、今回の被害は前回にもまして大きかった。

チーム・ブローウィングが攻撃した一角以外ほぼ全て突破することはできず、そのためマルクト側も撤退を決断したのだ。

それとは別に、チーム・ブローウィングには疑問が残る。

装騎スパローの「無限駆動」あれはどういう理由で起きたのか、だ。

その疑問にフランは答える。

「装騎スパロー――あの状態がどういう理由で起きたのか、我々にも分からない。シャダイに参照してみたがデータは無かった。これから詳しく調査をしていくことになるな」

「全く分からないんですか?」

「ああ――――だが、まぁ何にせよ……よく帰ってきたなお前たち」

こうして今回の実地戦は幕を下ろした。


その後日――とある一室にチューリップ・フランデレンとカラスバ・リンの姿があった。

「そう、あの子が使徒化モード アポストルを強制発動させたのね」

「モード:アポストル? それがスパローの『無限駆動』の正式名称なのか?」

フランの問いかけに、リンは首を横に振る。

「いや、あれはモード:アポストルでありながら、モード:アポストルとは別のモノ――――そうね、あの子の言う通り『無限駆動』と呼んでも構わないわね」

「そもそも、モード:アポストルとは何なんです? そんな言葉は聞いたことがない。シャダイにだって」

「それはそう。モード:アポストルはマルクトウチの重要機密よ。それを知っている者は恐らく――――ステラソフィア1期生わたしたちと――シャダイだけ」

「そうなると、モード:アポストルのことはワタシには教えられない、と」

「ええ――――ただ、教えられたところでどうしてあの子がモード:アポストルを“乗りこなした”のかは私にもサッパリよ。意思の力か、才能は、或は――別の何か、か……」

「いちいち引っ掛かる言い方をしますね」

「悔しかったら自分で調べてみなさい」


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