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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:憧れ編
143/322

ニャンニャーお姉さん サエズリ・スズメ

とある放課後、珍しいことにスズメは1人でゲームセンターに来ていた。

ここは夏休みの時にイザナやサリナ、イヴァたちと来たゲーム・ライク カナン店。

何故スズメがそこに1人で来ているのかと言うと……。

そわそわと周囲を見回しながら、スズメはある筐体の前で立ち止まるとSIDパッドをかざしてクレジットを投入する。

するとゲームが始まった。

「さぁ、やりましょう!」

スズメは気合を入れると、普段はあまり持ち歩いていないポーチから小さなカードファイルを取り出す。

そして、そのカードを筐体へとスキャンした。

そう、このゲームはスズメの好きなアニメ、ニャンコ王ニャオニャンニャーを用いたトレーディングカードアーケードゲームだった。

1プレイ100円で、プレイ後にカードが1枚出てくるという仕様で、様々なニャオニャンニャーの登場キャラや登場アイテムがカードとなっている。

以前、このゲームセンターに来た時に見つけてから、スズメはヒマを見てちょくちょくプレイをしにきていたのだ。

「始まりの超猫ニャンニャーに、ネコツバサー、ネコヒレダー、ネコアシンをスキャン! これでプロトニャオニャンニャーの完成です!」

このゲームは、バトルキャラクターカードとガジェットカード、サポートカードの3種類が存在し、まずはバトルキャラクターカードを1枚スキャンすることでそのキャラクターを使用することができる。

それにガジェットカードを3枚まで使用することで戦闘力の強化――そして、その組み合わせによっては超猫合体することが可能となる。

スズメが持っているカードではネコツバサー、ネコヒレダー、ネコアシンと言うガジェットカードをバトルキャラクター・ニャンニャーに組み合わせることで超猫合体できるプロトニャオニャンニャーを使用することができる。

「このプロトニャオニャンニャーは、過去の回想でのみ出てきた旧型ニャオニャンニャーなんですよ!」

ちなみに、基本的にはネコソラダー、ネコウミダー、ネコリクダーのガジェットを用いて合体するのがノーマルと呼ばれている。

それ以外にも、ハイパーだとかレジェンドだとか何種類か存在するが割愛。

そして、ゲームに勤しみ始めるスズメ。

ゲーム内容は単純で、攻撃、防御、技術、応変と言う4つの属性の1つを選び、相手の選んだ属性に勝ったらダメージを与えられるというジャンケン形式。

このゲームでは攻撃は技術に強く、技術は防御に強く、防御は攻撃に強い――と言う設定がされている。

それらの相性に含まれない応変属性は、自分の戦闘力が相手の戦闘力よりも高い場合は相手がどの属性であってもダメージを与えられると言ったもの。

「いけぇ、ブリティッシュショットパンチ!」

ゲーム画面の中で、プロトニャオニャンニャーがその拳に輝きを纏わせ、突き出した拳が飛翔し、敵の怪人を貫いた。

ゲームは基本3連戦。

スズメはその戦いを順調に勝ち抜く。

「サポートカード、臨機応変! 応変属性攻撃の戦闘力補正をアップさせます! そして、ニャンニャー・連撃で攻撃します!!」

バトルキャラクターカードには、戦闘力以外に適応属性や、属性技ごとの戦闘力補正が設定されている。

ジャンケンがあいこだった場合や、どちらか、あるいは両方が応変属性で攻撃した場合、両者の戦闘力に、属性の補正値がプラスされた最終戦闘力を比べ、高い方がダメージを与えることが可能となるのだ。

そして、今使ったカードは応変属性の戦闘力補正値を上昇させるサポートカード。

「プロトニャオニャンニャーの戦闘力は3500! 応変属性の補正値を1000から1500にアップさせて――――相手の戦闘力4600を突破です!!」

ちなみに、最終戦闘力もあいこだった場合は連打バトルになるのはよくある話。

そして、3戦目を勝ち抜いた時――通常であればそのバトルで終わりになるはず、なのだが――――特殊な演出が入ると隠しステージである4戦目が現れた。

「おお、エクストラステージ! 今日はついてますね!!」

それが、たまに登場するというエクストラステージ。

このステージをクリアすると、普段よりもレアなカードが当たりやすいという噂もあるボーナスステージだ。

エクストラステージに挑むスズメの背後に、1人の少年の姿があった。

ゲームをプレイするスズメと、ゲーム画面を交互に見ている。

そんな少年の姿にスズメはふと気が付いた。

「どうしたの? ゲームやりたいの?」

急にスズメが話しかけてきたことにその少年は少し驚いたような表情を見せるが、小さく首を縦に振った。

歳は3歳程度だろうか……周囲に親らしき人物の姿が見えないことが気がかりだ。

「じゃあ、やってみる?」

スズメは、その少年を筐体の前に誘うと、ボタンを押すように促す。

少年はたどたどしい手つきでボタンを押して、ゲームを進めるがなんという偶然かエクストラステージを勝利した。

「わぁ、すごい! すごいね、勝ったよ!」

「かった……!」

少し舌足らずながらも、スズメの言葉を復唱し笑みを浮かべる少年。

そして、ゲームが終わりカードが1枚出てくる。

「これは……ニャンコレアバトルキャラカード! ニャオニャンニャー・ニャンニャーフォーメーション!!」

それは今回の弾でイチオシのレアカードだった。

ガジェットカードによる超猫合体を必要せずニャオニャンニャーを使えるカードで、さらにガジェットカードとの組み合わせで更なる武装を施せるというレア中のレア。

そんなカードをスズメと少年は瞳を輝かせながら見つめる。

「ねぇ、お名前は何?」

「……ゲッコー」

「ゲッコーくんだね。このカードあげるよ」

スズメはそういうとニャオニャンニャー・ニャンニャーフォーメーションのカードをゲッコーと名乗った少年へと渡した。

ゲッコーは、「いいの?」と言いたげな表情を浮かべてスズメの顔を見つめる。

その表情に、スズメは「うん」と頷き、笑顔を浮かべた。

「ゲッコウ!」

そこに、女性の声がふとかけられる。

声の主は茶色がかった髪を結っている、若そうな女性だった。

「ママー」

「ゲッコーくんのお母さん?」

そう、彼女はゲッコーの母親。

ゲッコーは、とびっきりの笑顔を浮かべると母親の元へと走っていく。

「ママ、おねたんからもらった!」

そう言いながらスズメから貰ったニャオニャンニャーのカードを母親へと見せるゲッコー。

その言葉でスズメの存在に気付いた母親は頭を下げた。

「すみません……ウチの子がお世話になったようで……」

「いえ、少し一緒にゲームをしたくらいで何も……」

そう会話を交わしていると、母親が何かに気付いたようにスズメへとこう問いかけた。

「もしかして、サエズリ・スズメさんですか……?」

「そうですよ」

スズメの答えに、ゲッコーの母親は「やっぱり」と言った表情を見せる。

「やっぱりそうですか! 実は、ウチのゲッコウがアナタのファンなんですよ」

「本当ですか!?」

「はい、テレビを見ててもスズメスズメ、スパロースパローって言うんですよ」

「スズメ!」

「スズメさん、でしょ」

「スズメしゃん!」

すると、ゲッコーが急にスズメの名前を呼び始めた。

「わぁ、なんだか、とっても嬉しいです!」

「それで、その――ご迷惑じゃなかったらサインとか欲しいんですけど……」

「良いですよ! 何にします?」

そう快諾するスズメだが、サインを頼まれるのはまだこれで二度目である為、内心不安がっているというのは黙っているべきか。

サインできそうなものを探してカバンを探るゲッコーの母親。

そこへ、ゲッコーが手に持った“ソレ”をスズメに差し出した。

「コレは……」

ソレはさっきスズメがゲッコーへとあげたニャオニャンニャーのカードだった。

「いいの?」

スズメの問いにゲッコーは頷く。

正直、こんなレアカードに自分のサインを書くのは若干抵抗のあったスズメだが、もうあげたものであるし「まぁ、いっか」と割り切ると、ゲッコーの母親からペンを借りてカードへとサインをした。

「それじゃあ、このカードをゲッコーくんに!」

「ありがとうございます。ほら、ゲッコーも」

「ありがとぉ」

スズメのサインがされたニャオニャンニャーのカードを手に、立ち去るゲッコーとその母親。

その2人にスズメは手を振り、別れたのだった。


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