パフェ会に行こう!
「あの、スズメさん!」
ある日、スズメに1人の女子生徒が声を掛けてきた。
「セスちゃん、どうしたの?」
彼女はチーム・パフェコムラードの1年パプリカ・セス。
おかっぱ頭に付けたカエル型のアクセサリーがチャームポイントだ。
「実は今度、私たちチーム・パフェコムラードでパフェ会があるんです」
チーム・パフェコムラードは毎週パフェ会と称して、みんなで集まってパフェを食べるほど仲がいい雰囲気が特徴のチーム。
そのパフェ会には稀に他のチームのメンバーが呼ばれたり、以前行われたドキパフェ会のようにチーム・ドキドキ マンゴープリンと共に多数を招待して開催されたりする。
「今回のパフェ会に、スズメさんと――――イザナさんで参加してほしいんです!!」
「やったヒメが言ったよ!」
「わぁ、頑張ってぇ」
「ファイトぉ!」
セスの言葉に続いて、何処からかそんな声が聞こえてきた。
気が付くと、セスの背後に拳を固めてセスを応援するかのように3人の生徒が控えている。
長身でツインテールが特徴的な3年生ホリエ・ピュリアン。
穏やかそうで上品な気品のある2年生メルシー・レンカ。
1番身長が低く、子どものような雰囲気のある4年生クオリア・ミドリ
チーム・パフェコムラードの3人だ。
「もしかして、イザナちゃんが目当てなのかな?」
セスの言い方に、そう気付いたスズメがそういうと、セスが謝りながら、
「ごめんなさいっごめんなさいっ、そうなんです!」
と言った。
「実はこの前、誘おうと思ったんですけど断られてしまって!」
「イザナちゃんなら断りそうだよねぇ。それじゃあ、私がイザナちゃんを誘えばいいのかな?」
「そ、そういう心算で声を掛けましたごめんなさいっ!」
「良いって良いって! 分かった、パフェ会だね。私がイザナちゃんを誘ってみるよ」
「あ、ありがとうございます! ありがとうございますありがとうございます!」
スズメの言葉に感激したセスはスズメの手を強く握ると何度もお礼を言う。
「ヒメ! 日程を教えるのを忘れないでね!」
そんな中、ピュリアンの言葉にセスはハッとした様子で、
「来週の土曜日、14時30分に集合予定です! スズメさん、よろしくお願いしますっ!!」
と慌てて付け足す。
「うん、分かった。それじゃあ、土曜日にね!」
そして土曜日――スズメとイザナはチーム・パフェコムラードの寮室へと来ていた。
「よっ、ようこそスズメさんイザナさん!」
そう出迎えたセスの顔を見てイザナはしばらく考えるような素振りを見せる。
そして、
「誰だっけ?」
と言った。
「チーム・パフェコムラード1年パプリカ・セスです!」
その背後で例によって他のパフェコムラードのメンバーが、
「この前、手紙を渡そうとしたばっかりなのにねぇ」
「でも、ああいう所が素敵なのもわかりますぅ」
「先輩としてわたしたちも頑張ってサポートしなくちゃ……」
などと口にしており、以前にイザナとセスの2人の間に何かがあったことを伺わせる。
尤も、イザナはその事を全く覚えていないようだが。
「それじゃあ、今日のパフェ会を始めちゃいましょう!」
イマイチ上手くいかない2人の間に入るように、ピュリアンが口を開いた。
「って言うか、スズメに誘われたから来たんだけどパフェ会って何よ」
「パフェ会って言うのはあたしたちパフェコムラードが週1でやってるちょっとしたパーティーのことなんんです! 自分たちでデザートを作ったり、美味しいお店を探したりするんだけど」
「今回は、手作りのパフェが冷蔵庫に入ってるのでぇ、それをわたし達6人で食べようと思いますぅ」
ピュリアンの言葉に突っかかるように問いかけるイザナ。
そんなイザナにピュリアンとレンカが説明をし始める。
「みんな私達と仲良くなりたくて誘ってくれたんだよ。だから御馳走になろうよ!」
「まぁ、スズメがそう言うなら……」
どこか不満そうな表情を浮かべるイザナを見て、スズメがフォロー。
何とか無事にパフェ会は始まった。
「まずは飲み物を入れましょう! 色々ありますよ」
ピュリアンの言葉に、
「何があるんですか?」
とスズメが尋ねる。
すると、それにレンカが答えた。
「ティーにコーヒー、カフェオレとオレンジジュースですねぇ。ティーはダージリンとカモミール、アールグレイがありますよぉ」
「じゃあ、私はアールグレイで!」
「私もスズメと同じヤツで良いわ」
各自に飲み物が入った後、パフェ会最初の段階として自己紹介が始まった。
「わたしはパフェコムラードのリーダー、クオリア・ミドルです。趣味はバドミントンなの。クリーミーって呼ばれてるんだ」
「あたしは3年生! ホリエ・ピュリアン。趣味は料理。チームの皆からはホイップって呼ばれてるよ」
「メルシー・レンカ、2年生ですぅ。メレンゲと呼んでください~。あ、趣味はマラソンですねぇ」
「1年生のパプリカ・セスです! お菓子を作って食べるのが好きですっ。ヒメって呼ばれてますっ!」
パフェコムラードの4人の紹介が終わり、次はスズメとイザナの2人が自己紹介を始める。
「私はブローウィングの1年生、サエズリ・スズメです。趣味はー、まぁ機甲装騎かなぁ。よろしくお願いします!」
「ヒラサカ・イザナ。チーム・ミステリオーソ1年よ。趣味は昼寝ね。こんなんで良い?」
紹介が済んだ後、ピュリアンが冷蔵庫から6個のパフェを持ってきた。
「わぁ、おいしそう!」
運ばれてきたのはティラミスの上にチョコレートやバナナ、アイスなどが乗ったティラミスパフェだ。
パフェを見て、思わず声を上げたスズメのそばで、イザナがそのパフェを見ながらポツりと呟いた。
「…………確かに」
「さぁさぁ、ぜひぜひ食べてくださいね!」
スズメとイザナはスプーンですくい1口。
「おおっ、美味しいです!」
「程よい甘さね」
口の中を控えめなチョコの甘さが満たす。
コーヒー等も含まれているのだろう、少しのほろ苦さも感じるが、それが良い感じ甘みを引き出しているような気がする。
意外にもイザナの好みに当たったようで、パフェに夢中になるイザナ。
そんなイザナの様子を見て、セスがどこか嬉しそう。
「美味しいねぇ。コレってみなさんが作ったんですか?」
空気を読んだスズメの1言に、ピュリアンが待ってましたとばかりに口を開いた。
「実はコレ、ヒメが1人で全部作ったんですよ!」
「わぁ、すごい!」
「イザナさん、とスズメさんに喜んでもらえるように頑張りました!」
パフェにがっつきながら、その言葉を聞いたイザナはチラリとセスの方を見る。
だが、すぐに視線をパフェに戻すとパフェを食べ、紅茶を飲みほした。
それから他愛のない雑談をしながら、全員がパフェを食べ切ると今回のパフェ会は終了の運びとなる。
それほど会話が盛り上がったりした訳では無いものの、全員穏やかな表情で礼を述べあう。
そんな中でも、イザナは口をあまり聞かなかったのだが、帰り際――スズメと共にパフェコムラードの寮室を後にしようとしたときだ。
イザナはセスの方を向くと言った。
「アナタ、ヒメだっけ?」
「は、はいっ!」
「パフェ、美味しかったわ」
たったそれだけの言葉だったがスズメとイザナが去った後――――
「あぴゃぁぁあああああ!!」
パフェコムラードの寮室にパプリカ・セスの歓喜の叫びが上がった。




