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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
因縁の実地戦
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因縁の少女

「夏休み明け最初の実地戦だ。気を緩めずにしゃんとやれよ」

そう言うフラン先生の言葉を受けながら、チーム・ブローウィングの4人は東にあるマジャリナ王国――その北西部に来ていた。

「今回の作戦はヴァルシャヴァの占拠か……」

今回の作戦はツバサの言う通り――マジャリナ王国の都市の1つ、ヴァルシャヴァを侵攻、そして占拠するというのが目的だ。

「かなり大がかりな感じがしますわね」

周囲の反応をレーダーで確認し、魔力探知で感じながらチャイカがそう呟く。

ヴァルシャヴァはマジャリナ王国の中でも主要な都市の1つであり、そこを抑えるという作戦――その為、様々な学校から学生兵が集められマルクトの本気が見られた。

だが、と言う事は都市を防衛したいマジャリナ王国側も本気で出てくるだろう。

事実、都市ヴァルシャヴァにはマジャリナ固有装騎のラドカーンやサーカニィと言った前世代装騎や、P-3500ベロボーグ――それも従来型とは微妙に異なったタイプのベロボーグが配備されていた。

しかし、今回一番の問題は、マジャリナ王国軍の軍勢でも、強化タイプのベロボーグでも、マジャリナ王国が用意した防衛設備でもないということをスズメ達はまだ知らない。

「作戦開始の合図だ。行くぞ、GO! ブローウィング」

「「「GO!!」」」

威勢よく飛び出したチーム・ブローウィングの4騎。

防衛設備からの攻撃や、マジャリナ装騎の猛攻を潜り抜けながらヴァルシャヴァ都市部へと進撃する。

順調に足を進めていくチーム・ブローウィングだったが、不意に1個のチームと遭遇したところからその波乱は巻き起こった。

「あのチームは……」

「あれはリラフィリア機甲学校所属のチームみたいですわね」

「リラフィリア……聞いたことあるような無いような気がしますね」

ふとスズメの目に入った1個のチーム。

それは魔術仕様騎であるミーカールを先頭にミカエル型3騎が追随しながら勇み進むチームだった。

「アレは――――」

そんなミーカールの騎使がふとチーム・ブローウィングの姿に気付く。

「カヲリ様、どうしたんですか?」

「ナオ」

カヲリは親指を立てると、その親指をチーム・ブローウィングへクイと向けナオにそっちを見るように促した。

「うわっ、あれは……」

その指先にあるチームの姿を理解したナオの表情が露骨にしまったと歪むが、カヲリには見られていないだろう。

「なになにどーしたのカヲリーダー! っておおっ! アレはチーム・ブローウィングじゃぁありませんか! カッコイイ!!」

「カッコ、イイ――?」

そう空気を読まずに会話に割入ってきたのはミカコだ。

「――ミカコ」

「あっ、しまった!」

たしなめるようにただ1言放ったスミレの言葉に、ミカコはあっと口を開く。

「そういえば、カヲリーダーとブローウィングの1年は……」

「最、悪」

「サエズリ・スズメェ、ここで会ったが久しぶりィ。今日こそ――アンタをぶっ倒す」

そういうや否や、カヲリは自らのミーカールを駆けだすとチーム・ブローウィングへと向かっていった。

「うわっ、カヲリーダー! どうする!?」

「と、止める!」

「諒解」

その後を追いかける3騎のミカエル。

その3騎が追い付くより先に、まずカヲリ=ミーカールがチーム・ブローウィングへと接触した。

「何だ、あのミーカール! コッチに突っ込んでくるぞ!?」

「どういうことですの……?」

不意に、カヲリ=ミーカールがその手に持った14mm銃剣バヨネットライフル。

通常のライフルよりも若干銃身が長いのが特徴的だ。

そのバヨネットライフルの射撃が、チーム・ブローウィングを――いや、

「狙いは、私ですか!」

スズメの装騎スパローを襲った。

「このヤロォ! 何でやがりますか急に!」

装騎スパローを狙った物とはいえ、突然の銃撃に頭に血が上ったマッハがそう叫ぶ。

そして、そのまま装騎チリペッパーの脛部に備え付けられたレーザーキックブレードに光を灯すとカヲリ=ミーカールへと蹴りかかった。

「邪魔邪魔邪魔なのだわぁ!!」

その1撃が、カヲリ=ミーカールへと命中する直前、カヲリ=ミーカールから魔力の迸りが走る。

「魔力障壁か?」

「……! 違います、これは……」

「ティラニカル・リベンジ――」

マッハの繰り出した1撃を、その激昂状態にありながら見極め、そのタイミングを計る。

と、同時に本来打撃を受けるであろう自身の部位に魔力を集中――そして、マッハの1撃と、カヲリが練った魔力がぶつかったその瞬間――魔力が爆発した。

「うおぉぉぉおおおおお!!??」

相手の攻撃の威力に、自らの一点集中した魔力をぶつける事で、相手に強力なカウンターマジックをするというカヲリの魔術――それが、

「あれは、ティラニカル・リベンジ!? まさか、あの装騎の騎使は――――」

「とうとう戦場ココで会ったわね、サ・エ・ズ・リ・ス・ズ・メ・ェ!!!!!!」

「アナタはやっぱり、ヴォドニーモスト・カヲリ――!!」

何やらただならない様子の2人に、ツバサが尋ねる。

「スズメちゃんの知り合いか?」

「はい――中学時代の同級生です。私が所属していた選択装騎のリーダーみたいな人で……私の、大っ嫌いだった相手です」

「スズメちゃんがそこまで言う相手って……」

そう喋りながらも、スズメの装騎スパローのナイフと、カヲリ=ミーカールの銃剣がぶつかり合う戦闘は始まっていた。

「やっと、やっと、やっとやっとやっと見つけたわよサエズリ・スズメェ!」

「くっ、無茶苦茶な攻撃をっ……!」

激しく、激しく、激しく激しくバヨネットライフルによる剣撃と銃撃を繰り広げるカヲリ=ミーカール。

その攻撃を凌ぐスズメだが、その猛烈な攻撃にスズメの脳裏にふとある言葉が過った。

(カヲリは――私を殺すつもりで来ている!?)

それはあながち間違っても居なかった。

カヲリにはスズメを殺そうなんて考えは無い――だが、スズメを目の前にしてカヲリは激情していた。

「カヲリ様!」

「カヲリーダー落ち着いて!」

「正気を……」

「アンタ達、止めるんじゃないわよぉ!」

率先してカヲリ=ミーカールを止めようとしたナオ=ミカエルへとバヨネットライフルの銃口を向ける。

「ナオ――っ」

銃口から放たれた弾丸は魔力を纏い、味方であっても容赦のない1撃……その1撃を――――ナオを庇い、ナオ=ミカエルの前に素早く立ちはばかったスミレ=ミカエルが受けた。

機能を停止こそしなかったものの、強力な一撃を受けて、一気に満身創痍な状態になる。

「くっ、カヲリを倒さないと――――この場を収めることは……」

スズメはそう決心し、ナイフを握るとカヲリ=ミーカールへとナイフの先を向けた。

「倒しても良いのか?」

「はい、遊びは無しで本気で行きます。カヲリが相手なら戦い慣れてますし、ちょっと苦戦するかもしれませんが倒すのは――」

「そうじゃなくてさ」

「?」

ツバサの言葉にスズメは首を傾げる。

そんなスズメに、ツバサは言った。

「今倒して、あの子を撃退するのは簡単かもしれない。でも、また会ったらこんな風に――――いや、もっとしつこくつけ回して来たりするんじゃないか?」

「それは……そうですけど。でも!」

「だったら、ここでちゃんと話合って、決着をつけた方が良いんじゃないか?」

「話なんて――――」

「2人の間に何があったのかは分からないけど、さっきスズメちゃんは言ったよな」

「何て、ですか」

「“大っ嫌いだった相手”ってさ。スズメちゃんもあのカヲリって子も互いに互いを許せない部分があった……でも、スズメちゃんは許せたんだろ? その言い方だったらさ」

「…………はい。確かに、中学の頃は大嫌いでしたよ。でも、私にも非があることくらい分かってました……だから、今までのことは全部キレイにリセットして、ステラソフィアココで新しい生活をと思って」

「そんな簡単にリセットできるもんじゃないよ。人生ってヤツはさ……だから必ずどこかで決着を付けないといけないんだ」

「それが――――今……」

ツバサの言葉に納得したのか、スズメは静かに頷いた。

「どうしてもヤバそうだったら、アタシ達も助けるからさ」

「はい!」


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