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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
学祭・序章
138/322

学祭は学生に与えられた特権です

「夏休み明け最初のアタシの授業だけど、アンタ達まだ夏休み気分が抜けてないんじゃないの?」

9月初めの1年生全体必修科目――ウィンターリア・サヤカ先生の授業が始まった。

久々に会ったメンバーもチラホラ居るようで、夏休み明けの会話があちらこちらで繰り広げられている中でのサヤカの言葉。

それに、いつも通りチーム・リリィワーズのアルク・アン・トワイが、

「もっと夏休んでいたいよぉ!」

と声を上げた。

「はいはい。今日の授業は待ち遠しくしてる人もいるかもしれない、来月の学祭の話をするわ」

トワイの言葉を軽く流すと、サヤカ先生は本題を素早く述べる。

その言葉に、1年生達の視線が集中する。

「アンタら本当に素直ね……」

どこか呆れたような声音でそう呟くサヤカ先生だったが、ニィと笑みを浮かべると口を開いた。

「それじゃあ、今日は来月の学祭での1年の出し物を決めるわよ!」

その言葉を聞いて、スズメ、イザナ、サリナ、イヴァの4人組の中にも会話が交わされる。

「学祭ですか……!」

「来月って、来月のいつごろよ?」

「たしか予定では――23から25日の三日間かしらね」

「楽しみさ!」

「それで、出し物だけど――――アンタたちは何がしたい?」

そう尋ねてくるサヤカに、だが、1年生達は急に口を閉ざした。

「って何もないの?」

その反応にサヤカはため息を吐く。

「先生、去年は何をしたんですか?」

そんな中、サリナがサヤカへとそう尋ねた。

「そうね……基本的に1年生は喫茶店――装騎喫茶をやるのが例年通りではあるわね」

「装騎喫茶?」

「そ、ステラソフィアの機甲科らしく、機甲装騎をモチーフにした喫茶店ね。細かい内容はまた考えないといけないけど」

「へぇ、ソレ良さそうだね~!」

トワイがそう声を上げると、そんな空気が1年生達の中へと広がる。

「もちろん、それ以外でも案があればそれでもいいけど」

「装騎喫茶以外だと何をやったんですか?」

「そうね……1番最近だと確かアンタ達の3つ上――そうね今の4年生が1年の時は装騎喫茶じゃなかったはずだけど何だっ――――あ」

サリナの問いに応えようとしたサヤカは、不意にその表情を歪めた。

何か、思い出したくない事でも思い出したのだろうか。

「サヤカ先生――?」

「あ、いやもう忘れちゃったわ! とりあえず、他に案が無いなら装騎喫茶で良いわよね?」

見るからに忘れたとは思えないその様子だったが、他に案も出ないようで結果的に、1年生の出し物は装騎喫茶に決定したようだった。

「それじゃ、どんな装騎喫茶にするか話し合うわよ!」

「やっぱり、装騎喫茶って言うからには装騎を使うべきだよね!」

いの1番にトワイがそう言い放つ。

「確かに、拙者達の中には最高の騎使もいるでござる。使わない手は無いでござるよ」

そう同調したのはチーム・ヴァイスシュヴェールトのカリウス・ハンナもといトリュウだった。

「わたし、ムーンサルト・ストライクの体験とかしてみたいかもぉ!」

チーム・ソルフェージュのアオハル・メウの言葉に、1年生達がハッとなる。

「って、ムーンサルト・ストライクですかぁ!?」

思わずスズメが声を上げる中、他の全員がうんうんと頷いた。

「複座ユニットを使ってのムーンサルト・ストライク体験でござるな」

「問題なのは、ソレを使えるのがスズメちゃんだけなんだよねー。ほかにも何か欲しいよねぇ!」

「カマイタチとかもやっときますかぁ?」

「あ゛!?」

トワイの言葉に、更にチーム・ドキドキ マンゴープリンのバオム・クーヒェンが乗っかる。

「なるほどね。パフォーマンスは抜きにしてもスズメもイザナもトップクラスの騎使――2人と一緒に装騎に乗れるっていうのは良い売りになるわね」

その提案にサヤカも意外とノリノリのようだ。

「サエズリ・スズメ、ヒラサカ・イザナ。そういう話が出てるんだけど――良いかしら?」

そう尋ねるサヤカの言葉に、だがこの空気は断れる空気ではない。

どうしようか迷ってるスズメの傍で、イザナが先に口を開いた。

「嫌ですけど。面倒くさいし」

イザナはあっさりとその誘いを断った。

「えー!」

トワイをはじめとして、その提案をし出した数名がブーイングの声を上げる。

「サリナちゃーん、このヒラサカ・イザナをなんとかしてくださいよぉー!」

「何であたしが!」

トワイの言葉に、サリナがそう言い返す。

「でも、そうね……確かにあたしも良いと思うんだけどなぁ。それにスズメちゃんの性格なら結局断れなくなりそうだし、イザナちゃんがやらないんだったらスズメちゃんの負担が増えそうね」

サリナの言葉に、イザナは「確かに」と口元へと手を当てた。

「スズメ、やりたいの?」

そして、スズメへとそう尋ねる。

イザナの問いに、スズメは色々迷っているようだったが――

「うん。みんなに楽しんでもらえるんだったらやろうかな!」

「――――ったく、仕方ないわね」

と言う事で、その装騎喫茶の目玉はスズメとイザナを主とした、ステラソフィア1年生と一緒に装騎に乗れることと言うことで決定した。

それからも話し合いは続いていく。

「装騎に一緒に乗れるのは、喫茶店で一定金額以上食べてくれた人限定とかどーかな?」

「なるほどね。装騎2人乗りはオプションって訳ね。良いわ、やりなさい」

「更に追加料金で、コスプレも付けるとか!」

「確かに一部の物好きな客を引っかけられそうじゃない。良いわね」

主に、トワイとサヤカが悪乗りにも見えるノリで決めて行っているだけだったが。

「装騎に乗ってる時の顔を写す記念撮影とか、誰かとツーショット写真を撮れるオプションとか、どうせならサインもやっちゃうとか、そんな感じで追加料金取り巻くってガッポガッポだよ!」

「今年の学祭は稼げそうじゃない!」

やけにノリノリで、次第に周囲は引いてきていたのだが、トワイとサヤカはノリノリで話を進める。

その内容もだんだんとエスカレートしてきて、悪徳商法としか思えない域に達し、そして公序良俗的にどうなのかとつっこみたい部分も出てくる。

(おい教師仕事しろ)

と思ってる1年生が何人もいるだろうが、あまりにもヒートアップしているその会話に割り込む力は誰にも無かった。


「はっはっは。サヤカ先生はお金儲けが大好きだかならなぁ」

1日の授業が終わり、チーム・ブローウィングの寮室へと帰ってきたスズメがツバサにその話をしたら、そう言いながら大爆笑。

「まぁ、ってことはスズメちゃん達は装騎喫茶をするのか」

「そうなると思いますね!」

そこでふとサヤカの言っていたことが頭に過る。

「そういえば、今の4年生は装騎喫茶をしていないってサヤカ先生が言ってたんですけどツバサ先輩達のこととですよね」

「ああ、アタシ達が何をしたのかって話聞いたのか?」

「いえ、サヤカ先生は忘れたって」

「あはははは、まぁそうだろうな。忘れたいだろうあんなの」

1年生の学祭を思い出したのか、ツバサは楽しそうに笑った。

「何をしたんですか……?」

「ああ、アレだよ。合コン喫茶」

「合コン喫茶!?」

スズメには予想できなかった答えに驚きを隠せない。

「そうそう。確か、クイーンが合コンやりたいって言いだしてさ」

「何で合コン何ですか!?」

「学祭には外部からも人が来るからな。クイーン的にはイケメンをゲットしたかったんだろうな。ただ合コンだけなのはどうなの? ってなって喫茶店形式にすればいいんじゃないかって」

「だから合コン喫茶……。で、どうだったんですか……?」

「大盛況だったぜ! 女子からな」

結局、男性は入りづらい雰囲気になってしまったようで、女子にモテるチーム・バーチャルスターのソレイユとツバサに、意外と女子にはモテるチーム・シーサイドランデブーのクイーンやチーム・リリィワーズのライユと言ったメンバーが男性役をしながら外部からの女性客に対応すると言う事になったようだった。

「ちなみに、サヤカ先生って独身だからさ。何か出会いがあるかもってことで参加させられてな」

「参加させられたんですか……」

「結局、アタシ達と一緒に男性役として女子にモテモテに……」

サヤカが合コン喫茶のことを思い出したくなかったのは、独身だということを抉られ、無理やり連れだされた挙句、男とは全く触れ合えずに黄色い声援を浴びたからだった。

「それに加えて、サヤカ先生の場合は数少ない男性客からもスルーされたから……」

「色々あったんですね……」

「色々あったなぁ……」


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