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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアで夏休み
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今夏の魔境カスアリウス

ステラソフィア女学園に帰ってきたスズメは、相も変わらずマッハが部屋に籠って出てこないことが気がかりになっていた。

「そろそろ夏休みも終わりますし、そろそろマッハちゃんの部屋を掃除しないといけないですわね」

そういうチャイカに、

「それじゃあ、手伝います」

スズメがそう自分の旨を伝える。

スズメの言葉に、チャイカは暫く考えるような素振りを見せていたが、

「そうですわね。ウチが卒業したら今度はスズメちゃんの番ですし」

と2年後を見越した発言をしながら、

「それではよろしくお願いいたしますわ」

と言った。

「ですが、マッハちゃんの部屋は魔境ですわよ」

そう付け加えるチャイカの意図は測りかねる。

だが、スズメはすぐに実感することとなった。

まず、マッハの部屋へ至る扉をそっと開くと、背筋に悪寒が走る。

涼しげなリビングと比べても冷房がガンガン効いたその部屋は激しい温度差があり、まるで別世界だ。

「うっわ」

部屋の中を見たスズメは思わずそんな声を漏らす。

何か異様な、色々なものが混ざったような異臭。

部屋中に放置された、ごみ袋やインスタント食品の食べ殻。

中身が入っているのか入っていないのか、大量のペットボトルが聳え立つカーテンも閉じられた薄暗い部屋の中で、毛布に包まり画面からの光を浴びるマッハの姿があった。

「マッハちゃん、そろそろ夏休みも終わりですしお部屋を掃除いたしましょう」

チャイカがマッハにそう言うが、ゲームに集中しているマッハの耳には届いていないようだ。

「全く……仕方ないですわね」

チャイカはニコりと笑みを浮かべると、マッハが身に纏っている毛布を剥ぎ取った。

「うわっ、何しやがるんですかッ!」

毛布を剥ぎ取られた衝撃と、体を襲う悪寒にマッハは思わず叫ぶ。

「マッハちゃん、アナタの夏休みは今日までですわ」

「何言ってやがるんですか! マハの夏休みはまだまだ終わらないんですよッ!!」

「マッハちゃん、宿題は……?」

「っ!」

チャイカが放った言葉に、マッハはピクリと反応した。

どうやらマッハは夏休みの課題をこなしていないようだった。

「さぁ、それならお掃除をして宿題をやらないといけませんわねぇ」

「しゅ、宿題くらいヨユーでやがりますよ」

「とか言いながら、去年は結局間に合わなくてフラン先生に絞られましたわよね」

「うぐ……」

チャイカの言葉に、去年のことを思い出したのかマッハの顔が青ざめる。

一体どんなことがあったのだ。

「クソ仕方ないんですよ……部屋掃除と宿題、やってやるんですよォ!!」

「それは良かったですわ。スズメちゃんも手伝ってくれるそうですわよ」

「はい!」

それからチャイカ主導でスズメ、マッハの3人はマッハの部屋掃除を始めるのだが、そこからが大変だった。

大量に積まれたダンボールや、様々な空っぽの容器の始末。

「うわ、このカップ麺カビはえてますよ!」

「あらあら、今回は前回にも増して酷いですわねぇ」

「このペットボトル――中身入ってますね。洗ってきた方が良いですか?」

「ペットボトルを洗うのはマッハちゃんにさせるのですわ。何が入ってるかわからないですし」

「何が入ってるかわからないって……」

「しょーがないんですよぉ、マッハが洗ってきやがるんです!」

色々不穏な物言いをするチャイカに、マッハも中身が入ったままのペットボトルを複数持つと、洗いに部屋の外へと出ていく。

その間も、スズメとチャイカはマッハの部屋掃除を着々と進めた。

この夏休みの間、部屋に引きこもっていたマッハは、あらかじめ用意していた食糧などを食べてはその変に放置していたのだろう。

部屋中がカップ麺やペットボトルに埋め尽くされており、捨てても捨てても出てくる出てくる。

それ以外にも、何度か着替えたのか脱ぎ散らかされたマッハの服や下着だったり、漫画やビデオ、ゲームが大量だ。

「うぅ、何か気分悪くなってきました……」

部屋掃除をするということで換気のために窓を全開にしているがあまり風が入って来ないため、室温が上がってきている。

それに加えて、腐敗臭だったり何だったりとキツい臭いに包まれていると仕方も無い。

「スズメちゃん、少し休みますの?」

「そう、しましょうかね……」

流石のチャイカは、慣れているのか何なのか、易々と作業を進めている。

貴族出のお嬢様とは思えない作業能力だ。

それからも、何度か休憩を挟みながらようやく部屋がスッキリして来たのは夕刻、先生と進路の相談があると言って出て行ったツバサが帰ってきたころだった。

「お、マッハちゃんの部屋掃除したのか」

そういうツバサに、チャイカは笑みを浮かべながら、

「そうなのですわ。スズメちゃんも手伝ってくれたのですわ」

そう言うとツバサが言った。

「あー、アタシも何か手伝えれば良かったなぁ」

「それなら問題ないですわ」

チャイカに誘導されてベランダに出てきたツバサは、其処に置かれたものを見て苦笑する。

「ゴミ袋がたくさんあり過ぎて、捨てるのが大変なんですよ」

それは、マッハの部屋から出た大量のゴミが収められたゴミ袋。

その数も、ゴミ袋の山を作るくらいかなりの数――――従って、寮の1階にあるゴミ集積所まで持っていくのがかなり困難。

もうすでに疲労困憊のスズメに、涼しい顔をしているが実際は疲れているだろうチャイカの2人はゴミ捨てをツバサとマッハに任せる事にしていたのだ。

「それではツバサ先輩、マッハちゃんよろしくお願いたしますですわ~」

「へいへい、諒解ですよっと」

「ちょっくら捨ててきやがるんですよォ」

何だかんだでマッハも疲れているはずだが、チャイカには逆らえない。

ツバサとマッハは2人で一緒に大量のゴミ袋を片付ける為にゴミ袋を持って寮の階段を上ったり下りたりさせられた。

「さぁ、これが終わったら宿題ですわ~」

クタクタになりながらゴミ袋を必死で運ぶマッハの姿を見ながらそういうチャイカは、とても楽しそうな表情を浮かべていた。

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