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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
スズメちゃんの里帰り
133/322

真実は夢のままで

「サエズリ・スズメ、スパロー行きます!」

「こちらゲルダ。作戦を開始する」

最初に仕掛けたのは――ゲルダだった。

装騎ヴァルキューレが2丁のバーストライフルを装騎スパローへと向け、斉射する。

「的確……っ!」

静かに銃口を向け放たれた弾丸は、確かに正確に装騎スパローへと襲い掛かった。

その1撃でスズメは確信する。

彼女は、ゲルダはかなり凄腕の騎使だということを。

「ブレードエッジ!」

装騎スパローのブレードエッジが展開される。

それと同時に、超振動で光を帯びた刃がバーストライフルの銃撃を切り裂いた。

そして、地面から飛び立つように加速をしながら装騎ヴァルキューレへと接近する。

「この感じ――――何か、見覚えがある……」

閃くナイフ。

その1撃は鋭く、強く、記憶に何かが過る、あれはどこだったか……あの鋭い閃き、強烈な1撃、そしてゲルダの瞼の裏に焼き付くのは――――蒼い、光。

ギィィィイイイイイイイイイイ!!!!

装騎スパローのウェーブナイフと装騎ヴァルキューレのウェーブソードがぶつかり合う。

あの一瞬で、素早く右腕のバーストライフルをウェーブソードに持ち替えていたのだ。

「ゲルダさん――――かなり、強い!」

「すごい、この装騎――体についてくる……この装騎ならあの時――――あの、時?」

最初の銃撃、そして今の切り結びでスズメはゲルダの実力に確信を持つ。

「それなら――私も全力で行きます! ムーンサルト――――」

装騎スパローは華麗に身を捻りながら、大地を跳躍した。

まるでサーカスなどの“パフォーマンス”のようなその動き。

「後ろっ!」

「初見で……っ!」

ムーンサルト・ストライクの動きに若干見とれながらも、ゲルダの装騎ヴァルキューレは、装騎スパローの奇をてらった1撃を受け止める。

不意に、ゲルダの頭の中に色々なヴィジョンが流れ込む。

それは――そうだ、マジャリナ王国の、“西の”国境付近のことだ。

「私は――、私は――――ッ!」

そうだ、私は任務を受けた。

西から進撃するマルクト神国の部隊を足止めする任務だ。

今は任務中?

でも、仲間は全員死んだ。

ベーラもファンニもエルヴィンもベンツェもジグモンドもヨージェフもラヨシュもペーテルもバラージもピンターもラーチュもオラーも。

そして、リハールドも、アールミン隊長も。

お前らステラソフィアに、殺された……!」

私は作戦を続行しなくては。

マルクトを倒す。

マルクトを殺す。

ここは、何処だ?

(ここは、ジリナだ。私達は、ジリナを守らないといけない!)

「まずはアンタからよ、逆折れスパローォォオオオオオオオオ!!!」

記憶が戻った。

そうスズメとレミュールが直感するのは早かった。

だけど――――だけど、

「ゲルダさん!!」

「ゲルダちゃん!!」

ゲルダの駆る装騎ヴァルキューレの猛攻に、スズメの装騎スパローはやや押され始めていた。

右手に持ったウェーブソードを巧みに操りながら、左手に持ったバーストライフルの銃撃を容赦なく叩き付けてくる容赦のない攻撃。

スズメはその猛撃を耐え凌ぎながら、跳躍し、一旦距離を取る。

「ゲルダさん! 落ち着いてっ!!」

「投降させよーっての!? するわけないでしょォ!!」

「ゲルダちゃん、待って! お願い、話を聞いて!!」

「お前も敵かッ!」

レミュールの声を受けて、ゲルダはそう叫びながらバーストライフルの銃口をレミュールへと向けた。

「お姉さん、危ない!」

「キャッ!?」

不意に放たれた弾丸を装騎スパローが受け止める。

「お姉さん、下がってください! スパロー・レイ・エッジ!」

装騎スパローが放つ魔電霊子砲の輝きが、装騎ヴァルキューレの手にしたバーストライフルを焼き尽くす。

その1撃に怯むことも無く、ゲルダは冷静に先ほどストックへと収納していたもう1丁のバーストライフルを左手に持った。

「くっ、仕方ありません!」

その様子にスズメは何かを決心する。

「スパロー、限界駆動クリティカルドライブ!」

装騎スパローが蒼い輝きに包まれ、限界駆動の領域へと達した。

「あ゛ぁぁああああああああああああああああああ!!!!!」

その輝きに、自分が死んだ――――そう思った最後の瞬間を思い出す。

その恐怖に、その絶望に、逆上するようにゲルダは奮え、駆けた。

不意に、装騎ヴァルキューレの装甲の隙間から蒼い輝きが軌跡を引きながら漏れ出す。

「スズメちゃん――!」

「行きます! 銀風アージェントガスト――」

スズメはレミュールの言葉に頷くと、クリティカルドライブが完全に発動する前に、ゲルダが壊れてしまう前に、スズメは意を決してその1撃――いや、3連撃を繰り出す。

参撃デルタエッジ!!」

クリティカルドライブにレイ・エッジの蒼い閃き。

その閃きは、Δマークにも似た傷跡を大地に残しながら装騎ヴァルキューレの右腕を、左腕を、両足を切断する。

そして、その輝きは――彼女に、フェヘール・ゲルトルードに2度目の死を与えた。

「ゲルダさん!」

「ゲルダちゃん!」

高速で疾走していた装騎ヴァルキューレ――その手足が切断されても、その勢いのままコックピットが収まる胴体部が地面に叩きつけられ、跳ね、転がり、うつ伏せに倒れこむ。

素早く、装騎ヴァルキューレの胴体の元へと走りこむ装騎スパローとレミュール。

装騎ヴァルキューレからの反応は無い。

この程度のダメージならば通信機能は使えるはずだが、この調子だと騎使自体へのダメージが強く出ている可能性が高い。

スズメは、装騎スパローから降りると、装騎ヴァルキューレの背中へとよじ登りコックピットを開こうとするが、開かない。

「中からロックが掛けられてます! ロックの強制解除コードを」

「任せて!」

スズメにかわり、レミュールが装騎ヴァルキューレへとコックピットロックの強制解除コードを入力する。

ロックが解除され、ハッチが開いた。

中を覗き込むと、その中では先ほどの衝撃からだろうか、頭部から血を流して気絶するゲルダの姿があった。

「お姉さん、メディックを!」

「ええ!」

その後、病院へと運び込まれたゲルダだったが、命に別状は無さそうだ。

しかし、その代り――――

「やっぱりスズメは強いね」

病室でそうにこやかに微笑むゲルダ――彼女の“本来の”記憶はまた消え去っていた。

スズメと戦ったと言う事、そして、プラモ屋ヒンメルで働いていた時の記憶は残っているようだったが、最初に会ったゲルダともまたどこか違った雰囲気で。

「私、本当の名前を思い出せたんだ」

「本当の名前?」

「うん、私はフェヘール、フェヘール・ゲルトルード」

「そっか、だからゲルダなんだね」

「それと――とっても大切な事を思い出したんだ」

「大切なこと?」

「うん。誰かは分らない、けど――でも、お父さんみたいな人が私に言ってくれたんだ。生きろ、ゲルトルード――――」

生きて、そして、幸せに――――



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