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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
スズメちゃんの里帰り
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記憶喪失の少女

スズメの里帰り2日目。

スズメは家の近所にあるプラモ屋ヒンメルへと来ていた。

「スズメちゃん!? 久しぶりねスズメちゃん!」

そう声をかけてきたのはこのプラモ屋ヒンメルの店長である“プラモ屋のお姉さん”ブリュンヒルド・レミュールだった。

「お姉さん、久しぶりです!」

「元気そうで良かったわ。新歓とかテレビの取材とかで元気そうなのは知っていたけど」

「取材……?」

「ニャオニャンニャーごっこしてたことあったでしょ?」

レミュールの言葉にスズメはハッと思い出す。

以前、ステラソフィアにテレビの取材が来た時、ニャオニャンニャーごっこをしているところをバッチリ放送されてしまっていたことを。

「ええ、もしかして見てたんですかァ!?」

「ビデオを貰ったのよ。フランちゃんから」

「フランちゃん……?」

レミュールの言葉にスズメは首を傾げる。

どこかで聞いたことあるような名前だが、すぐに思い出せない。

「チューリップ・フランデレンちゃんってステラソフィアの先生でしょ?」

「あぁぁぁあぁああああああ!!!! フラン先生ですか!? っていうか、お姉さんとフラン先生って」

「昔の馴染みなのよ。私がカナンで暮らしてた頃のね」

「ナイフダンサー、ですか……? 何で今まで隠してたんですかぁ……」

「女はミステリアスな方が良いのよ」

「は、はぁ……」

「それと、そのビデオだけど……」

「……?」

「ご両親にも渡しておいたからね」

「何でですかぁー!!」

そんな話をしながら、ふとスズメは気付いた。

「あれ、そう言えばあの人は――――?」

普段はレミュール1人で経営しているプラモ屋ヒンメル。

その店内に、客とは違うもう1つの人影があることに。

「そうだったそうだった。ゲルダちゃん、おいで」

レミュールに呼ばれ、その少女はスズメの前へとあらわれた。

長髪を括った茶色がかった黒髪に、色白の肌。

頬にはそばかすが見える。

「この子はサエズリ・スズメちゃん。ウチの常連さんなのよ。今はカナンで暮らしてるからあんまり顔は見せられないんだけど……」

「サエズリ・スズメです。よろしくお願いします!」

「ゲルダです……よろしくおねがいします」

ややぶっきらぼうにも見える様子だが、スズメが差し出した手を握り返すゲルダ。

「彼女は――ちょっと色々あって私と一緒に暮らしてるのよ」

「構いません」

レミュールの言葉に不意にそんな言葉を返すゲルダ。

事情の分からないスズメは内心首を傾げる。

だが、レミュールはゲルダの言葉に「分かったわ」と頷いた。

「実はねスズメちゃん。ゲルダちゃんは記憶喪失、なの」

「記憶喪失……」

そう、彼女ゲルダはどういう事情からかこれまでの思い出を失っていた。

素性は全く分からない。

5月頃にレミュールがブルーノ市へと用事があり、そこに滞在してた時、ボロボロになった彼女を見つけ保護したという。

自分の名前すら忘れていた彼女だったが、辛うじて「ゲルダ」と言う名を思い出し、告げた。

「スズメちゃんも仲良くしてくれると嬉しいわ」

「はい!」


昼食時。

スズメはレミュール、ゲルダと共に昼食をとることにした。

「スズメちゃんはステラソフィア女学園に通ってるのよ」

食事中、レミュールが何気なく口にしたその言葉。

「ステラ、ソフィア?」

その言葉を聞いたゲルダの表情がわずかに歪む。

「ゲルダ、ちゃん?」

その様子に何か不安な物を覚えたレミュールがゲルダの顔を覗き込んだ。

「いえ、大丈夫です。何だか聞き覚えのある言葉だったので……」

「聞き覚え――それじゃあ、ステラソフィアのこととか話したら何か思い出せるかな?」

「そう……かもね」

スズメの言葉にどこか歯切れの悪そうなレミュール。

レミュールは考えていた。

彼女に過去のことを思い出させて良い物なのかを。

もちろん、レミュールには彼女の過去は解らない。

だが、ゲルダの表情から何か触れてはいけないものを感じていた。

でも、だからと言って――

(過去のことを思い出したらダメだなんて私に言う資格は無いわ)

「それじゃあゲルダさん、ステラソフィアのこと話してあげるね!」

「……分った」

スズメの言葉に頷くゲルダ。

その様子にスズメも頷くと、ステラソフィアのことをゲルダに話し始めた。

「ステラソフィアは、このマルクトでもトップレベルの機甲科がある学校で、“機甲女学園”っていう通称で呼ばれているんだ」

そういうスズメの手にはSIDパッド――スズメはステラソフィアの案内を見ながらゲルダへと説明をしていた。

「それで、機甲科には32個のチームがあるんだけど、私が所属しているのはチーム・ブローウィング!」

「ブロー、ウィグ……?」

「うん! 自分で言うのも何だけど、結構強いチームなんだ! 新歓でも優勝したし、実地戦でもいろんな相手と戦ったしね」

「実地戦……?」

「実地戦って言うのは授業の一環なんだけど、実際に戦場に出て戦う! って言う。ちょっと怖いけど私達が頑張れば国の為にもなるしね」

「戦場――スズメは兵士なの?」

「マルクト軍の戦力のほとんどは学生だって聞いたし、そういう意味では兵士、なのかなぁ」

「そうなんだ」

「ステラソフィアにはいろんな装騎があるんだよ! えっとね……」

スズメはプラモ屋に並べられている、色々な装騎のプラモへと目を向ける。

「って、あれ、もしかしてこれってサリエル型のプラモ!?」

「NBトイズこの夏の新製品……1/25スケールPS-S-Sサリエル。定価3000円の所、特別価格の税込3250円」

スズメが手にしたプラモデルに、ゲルダがそう補足した。

何だかんだで仕事は身についているようだ。

「私達ブローウィングの装騎はこの4騎だよ!」

スズメがそう言いながら出したのは、ジェレミエル、ジブリール、ヘルメシエル、ハラリエルのプラモデル。

言うまでもないが、それぞれツバサ、チャイカ、マッハ、スズメの使用している装騎――そのベース騎だ。

「これが、スズメ達が乗ってる装騎……?」

「うん!」

「……なんか、よく知ってるような、そんな感じがする」

「本当に!?」

「……忘れられないような、なんか、不思議な感じ。頭に焼き付いてるような」

「そうなんだ。もしかしたらどこかで見た事あるのかもね。新歓の時とかテレビにもよく出てたし」

ジリジリと心が痛む。

確かに、スズメの言葉やその装騎はゲルダの記憶を揺さぶっていた。

何かあった気がする。

マルクト、ステラソフィア、ブローウィング、機甲装騎、ジェレミエル、ジブリール、ヘルメシエル、ハラリエル。

何だ、何が、あった?

何かが引っ掛かっているような様子のゲルダにスズメは言った。

「私のスパローなら持ってきてるから、見てみる?」

「スパロー、あるの?」

「スパローに乗って帰ってきたからね!」

「どうせなら……」

「?」

「どうせなら、戦ってみたい。スズメと」

と、言うことでスズメとゲルダ、そしてレミュールはプラモ屋の裏にある小さめの装騎フィールドへと移動した。

「うわぁ、懐かしいなぁここ! 昔はよくここで練習してたんだぁ」

そう、そこはスズメが幼いころによく練習していたという場所。

レミュールの私物であるバトルフィールドだ。

装騎法に則り、しっかりとバトル用の霊子バリアも張ることができる。

「これがスズメの装騎……逆折れ…………?」

逆間接脚部が特徴的なPS-R-Hハラリエルがベースのスズメ仕様装騎スパロー。

「ゲルダちゃんには私の装騎を貸してあげるわ」

レミュールがそう言いながら乗ってきたのは、超軽量型のシェテル型装騎ヴァルキューレだ。

全体的に澄んだ海底のような美しい青色で塗装されているのが特徴的で、武装はバーストライフル2丁にウェーブソードといった装備。

「それじゃあ2人とも装騎に乗ってね」

レミュールは霊子フィールドが展開されたことを確認すると、スズメとゲルダを装騎に搭乗するよう促した。

それぞれの装騎に乗り込むスズメとゲルダ。

そして、機甲装騎の起動シークエンスが完了し、2騎の装騎が相対する。

「それでは、バトル……スタート!」


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