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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
スズメちゃんの里帰り
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スズメちゃんの里帰り

「敵は去年、予選でぶっ倒したドレスデン中のヤツらよ。そんなヤツらにアタシ達が負けるかしら?」

「「「いいえ、勝ちます!」」」

「アタシ達は、」

「「「最強無敵!!」」」

ツバメちゃん軍団アルマーダ・ツバメちゃん!」

「「「万歳アチュ・ジイェ!!」」」

独特の掛け声と共に、4騎の機甲装騎が森林の中を駆けだす。

まず、ツートップの形で先頭を行く2騎の装騎、ドヴォジャーコヴァー・ニスイの装騎とヤナーチェコヴァー・リオンの装騎。

「此方ドヴォジャーク。経路快調よ」

ニスイの装騎の識別名はドヴォジャーク。

ウェーブレイピアをメイン武器に、ヴゾル65短機関銃を持つアサリア型装騎。

「コチラ、ヤナーチェク! 同じくッ」

そして、リオンの装騎の識別名はヤナーチェク。

超振動バグナウを両手に構えた、格闘戦が明らかに得意そうなシェムハザ装騎。

その1歩遅れた後をついてくるのが、スメタノヴァー・ニカドの装騎。

「TPV索敵で敵騎の気配アリです……」

識別名はスメタナ。

情報支援に優れたラグエル型で、武装も長距離用750ライフルと後方支援を目的にしている。

装騎部の備品であるそれら3騎を駆る先の3人の最後方で、私物の装騎で威張るように仁王立ちをするのがこのチームのリーダー。

サエズリ・ツバメ――この“最強無敵のツバメちゃん軍団”を率いる少女だ。

使用装騎は“お下がり”のアブディエル型装騎サニーサイド。

中学時代にスズメが乗っていた装騎なのだが、最近でもいつぞやのムーンリット・カノンのライブでスズメが使用した。

ただし、その武装は大型ブーステッドハンマー・ウーデルと“姉”が使っていた頃とは真逆の印象を与える。

そう、彼女サエズリ・ツバメはサエズリ・スズメの妹だった。

「そんじゃ、アンタ達はしっかり引きつけなさい」

「「「諒解!」」」

そして暫く、順調に進行すれば最強無敵のツバメちゃん軍団とドレスデン中が接触する筈のタイミング。

だが――その場にドレスデン中の装騎は現れない。

「おかしいわね。そろそろ接触しても良い頃なのに」

周囲の異様な静けさにドヴォジャーク=ニスイが思わずそんな言葉を漏らす。

隊長カピターン! 敵が見当たらないんだぜ!!」

「それならちゃんと索敵しなさーい! スメタナ!!」

「は、はい! TPV索敵開始しますっ!」

ツバメに言われ、慌ててスメタナの俯瞰視点再現表示サードパーソンヴュワーを利用した索敵をしはじめるニカド。

「あれ――?」

「どーしたのよ?」

「え、えっと……TPVしてみたんですけど……」

「さっさと要点を言いなさいよ!」

たどたどしく何かを言おうとするニカドに、ツバメが一喝。

「は、はい! それが、ドレスデンのものと思しきヘルメシエル型は見つかった、んですけど……」

「見つかったんだったらデータを寄越しなさい!」

「いえ、そ、それが――機能を、停止しているみたい、なんです」

「どういうことなの!?」

「それが、分からないんですけど……」

ツバメとニカドのやり取りを聞きながら、ニスイとリオンが首を傾げる。

「一体、どういうこと? 意味わかんないんだけど」

「全くだぜ」

だが、その瞬間――――

「うがっ!?」

「ヤナーチェク!!」

不意に、ヤナーチェクの通信にノイズ――――その瞬間。

「こちらヤナーチェク、撃破されちまった!?」

「何ですって!!??」

突如として撃破されたヤナーチェク=リオン。

その知らせに、最強無敵のツバメちゃん軍団の間に緊張が走る。

「ドヴォジャーク! アンタ近くに居るんでしょ!? 何か情報は無いの!!??」

「そんなこと言われても……隊長の命令で接敵しやすいように距離を取ってたし!」

ニスイがそう叫んだ瞬間、不意に目の前に黄金の閃きが走った。

「っ!!!」

瞬間、ドヴォジャーク=ニスイの反応も消失する。

「あ、あの……ドヴォジャークも、反応消失、です」

「どういうことなの!? ドレスデン中にあんな凄腕の騎使が居るの!? それとも何、何なの? 何なのよ!」

「カピターン、お、落ち着いてください!」

「あーもう、スメタナは後退! アタシのところに来なさい!!」

「りょ、諒か――――あっ、騎影を発見!」

「なんですって!?」

不意に、木々の中を動き回る影を視認したニカドが声を上げる。

そしてスメタナの750ライフルをその陰に向け、射撃。

その瞬間、影は空へ飛びあがるように消え去った。

「えっ」

刹那、背後にズシンと地面を揺らす衝撃――――その直後、

「こ、こちらスメタナ……げ、撃破されましたぁ」

スメタナ=ニカドも機能を停止し、リーダーであるサニーサイド=ツバメだけが取り残される。

「ハァ!? ヤナーチェクもドヴォジャークもスメタナも機能停止ですって! 何やってんのよ何を、何を何をやってんのよぉ!!」

思い通りに行かないこの戦いの展開に、ツバメは喚き、叫び、周囲にある木々を殴り倒す。

グッと正面を睨むと、木々が激しく揺れ動き、その揺れはツバメを目指して近づいてきていた。

「アレね――――良いわ、このツバメちゃんがボッコンボッコンにしてやるんだから! 何たってアタシはあのサエズリ・スズメの妹なのよ!!」

ツバメは叫ぶと、ブーステッドハンマー・ウーデルを力いっぱい握りしめる。

するとそのハンマーの背面から強烈な炎が吐き出された。

「フラァァアアアアアアアアアアア!!」

ブーステッドハンマー・ウーデルが装騎サニーサイドの加速を促すように引っ張る。

ツバメの目の先には、高速で機動する1騎の装騎が目に入った。

その動きは、本当に速く、まるで木々を蹴りながらそのバネを利用して跳んでいるかのうような高速機動。

だが、それは事実だった。

その謎の装騎は木々を蹴り、その勢いを利用しての高速機動から奇襲をすることでドレスデン中装騎をはじめ、ヤナーチェク、ドヴォジャーク、スメタナを撃破したのだ。

「ぶっ潰してやるんだから!!」

ツバメは気合を入れると、ブーステッドハンマー・ウーデルを敵影へと振り翳す。

ブーストで加速された高速のハンマーの威力は強大――ウーデルの1撃は、だが木々を砕き地面を抉っただけだった。

その隙を狙い、謎の敵影は装騎サニーサイドを一閃。

「そんな、なんでなんでなんで! アタシはあのサエズリ・スズメの――――」

「だからいつも言ってるでしょ」

不意に、通信から聞こえてきた声を聴いてツバメはハッとする。

「そういう部分を抑えられたら良い騎使になれるのに」

最強無敵のツバメちゃん軍団を壊滅に追い込んだ謎の装騎――それが、装騎スパローであったことに。


「今日は有難うございました」

「いえ、帰省のついでですので」

場所はプラハ市立プラヴダ中学校の新設演習場。

装騎部の顧問であるウチテルカ・アザルカと話すサエズリ・スズメ。

その背後でどこかふて腐れたような、嬉しそうな微妙な表情を浮かべるツバメ。

今回のプラヴダ中とドレスデン中の練習試合――実は、スズメの帰省に合わせたサプライズイベントとして両校装騎部顧問が示し合わせて計画していたことだった。

地方にある無名の弱小中であったプラヴダ中を、四天王決定戦準優勝にまで押し上げ、その名を一躍有名にした現ステラソフィア生サエズリ・スズメともなればその扱いも妥当だろう。

そして、両校顧問の思惑通り、スズメは圧倒的な実力差を見せつけてくれた。

「それでは、今日はここまで」

「お疲れ様でした!」

部活が終わった後、スズメは最強無敵のツバメちゃん軍団の4人と一緒に実家に帰る。

「ちょっと、なにスズ姉にくっついてんのよアンタ達!」

「まぁまぁツバメちゃん」

元々スズメとツバメちゃん軍団の間には中学時代からツバメを通した親交があり仲はいい。

スズメ自身、妹であるツバメの性格は理解している。

そんなツバメの性格を同じように理解し、付き合ってくれているリオン、ニスイ、ニカドの3人には感謝もしていた。

「もしかして、今日はアンタ達もウチに来る気なの?」

「モチのロンだぜ!」

「ステラソフィアのお話をお聞きしたいしね」

「そ、そうです、ね!」

しばらく歩くと、家々の隙間からあるものが見えた。

「うわ……あれって…………」

スズメの口から思わず声が漏れる。

実家へと近づくにつれて建物の隙間から見えてきた――“例のアレ”。

それは今年6月15日――スズメの誕生日にテレシコワ・チャイカ先輩がスズメへとプレゼントした巨大なスズメのフィギュア。

「うわぁああああああああ、忘れてたぁ!?」

その存在をすっかり忘れていたスズメは、スズメ人形を目にして叫び声を上げた。

かなり巨大なステラソフィア機甲科寮と比べると小さく感じたが、こういう田舎町で5mほどもあるそのスズメ人形はやや目立つ。

風に吹かれて登頂のクセ毛がくるくる回るのはどこか可愛らしいが。

「一時期、ヤジウマとかすごかったのよ。まぁ、スズ姉の偉大さが伝わるのならいいことだけどね!」

「うぅ……ナニソレ嫌だ」

「でもお母さんマミンカは喜んでたわ」

スズメ人形には太陽光発電や風力発電、蓄電機能があるため電気代を浮かせられるのだ。

「あの人形がスズメさんの家に運ばれてきたときわたし達も居ましたけど、驚きましたね」

「ああ、変な黒服の作業員が沢山来てなぁ」

「テ、テレシコワ財閥の人、だったっけぇ?」

ニスイ、リオン、ニカドが口々に言い出す。

あの後、実家に送られたスズメ人形はご丁寧にもテレシコワ財閥の人たちが取り付けをしてくれたようだった。

「っていうか、ウチって借家だよね……」

「許可は取ったみたいよ。財閥の人が」

「財閥の人が……」

本当、チャイカには色んな意味でお世話になりっぱなしだ。

色んな意味で。

5人が歩くにつれて、スズメ人形がどんどんと大きくなっていく。

そして、スズメ人形を見上げるような高さになった所で、5人は足を止めた。

「はぁ、やっと家だぁ」

スズメ人形が寄り添うように背を向けるレンガ造りでとがった屋根が特徴の二階建ての借家。

二階建てとはいえ1フロア1フロアはかなり狭い、縦に細長い形をしている。

段差のある玄関へと足を掛け、扉を開くと、

「ただいまー」

「おじゃまします!」

とスズメ達は口々に声を出した。



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