次の相手は?
「はぁ~、勝った勝った」
「あぁー、負けたわー」
3回戦の勝敗が決した後、ブローウィングとウィリアムバトラーの2組は揃って観客席に戻ってきていた。
「よ、お疲れさん!」
そう声をかけてきたのはディアマン・ソレイユだ。
「お、ソレイユか」
見ると、そこにはチーム・バーチャルスターの姿もあった。
「今回はミカエラ全然活躍出来なかったなー! 最高だったぜ」
「ソレイユ、アンタ1回しめたろか?」
「良いぜ、相手になってやる」
ワイワイとはしゃぐ4年組。
それとは対照的に暗い雰囲気を出しているのが2年――というかカスアリウス・マッハだ。
「よろしいですか、マッハちゃん。別に飛び出して行くだけなら良いんですよ。ブースターも大事な役割だと思いたいですもの。しかしですねマッハさん、聞いてますの?」
「聞いてやがります……」
「ほら、マッハちゃん。だから私がこうした方が良いって敵ながらアドバイスしてあげたのに……」
「す、すまないです……」
マッハに対して、テレシコワ・チャイカとディアマン・ロズの3年生2人による説教タイムが始まっていた。
その背後でニヤニヤしてるツミカワ・ミズナの姿に、マッハのイライラは隠せない。
そんな傍ではモード・ヘレネがサエズリ・スズメに抱き付き顔をスズメの髪にうずめるよう頬を擦り付けていた。
「あ、あの……ヘレネ先輩?」
「何」
「は、離してもらえ――」
「無い」
「そ、そうですか……」
「うぅー! スズメちゃん恨ま――羨ましいとよ!!」
「今恨ましいって言おうとしましたよね!?」
エール・カトレーンが2人の様子を見ながら、本当に、心の底から恨ま――羨ましそうな声を上げる。
「スズメちゃん」
「な、なんですかヘレネ先輩……」
「好き」
「あ、ありがとうございます」
どうやら、先の1戦でスズメに止めを刺された事から、ヘレネはスズメの事を非常に気に入ってしまったらしい。
「んー、スズメちゃんとおしゃべりしようと思ったのに、忙しそうさ……」
「わたしもお話してみたかったぁ」
若干「入ってこんなァ」オーラを放っているヘレネの威圧感に負けた残りの1年リサデル・コン・イヴァとエレナ・ロン・サリナ。
「そういえば、リサデルさんの装騎も新型だよね。PS-Sa1サンダルフォンだっけ?」
「そ、そうさー。PS-Me2メタトロンの兄弟みたいな装騎であるわけさ」
「道理で、どこか可愛いオーバーアーマーだなって思ったらそういうことだったんだ」
「あのオーバーアーマーの可愛さが分かるの!?」
「うんうん、あの絶妙な曲線とかたまらないと思うのよね!」
「だからよね! 個人的にはあの丈の長さも絶妙だとおもうわけさ!」
この2人はこの2人で変な方向へ話が膨らんで行っていた。
そうこうしている内に、第4回戦の準備が整い、Aブロックの対戦チームが発表され、Bブロックの発表に移る。
「次は、Bブロック素敵な恋を探して。シーサイドランデブー!!」
4年マーキュリアス・クイーンとその装騎ラプソディ。
3年アストリフィア・サツキとその装騎サーティーナイン。
2年ナイト・テイラーとその装騎スウィートレディ。
1年ディーコン・ジャンヌとその装騎ベストフレンド。
「この1回戦で勝ったチームがアタシらブローウィングの次の対戦チームだな」
モニターに映る装騎と騎使の姿を見ながら、ツバサがそう呟く。
「対するは、私達の奏でるバトル。奏でNight!!」
4年メロディカ・ハーモニアとその装騎リズム。
3年ドレディアヌ・サターネとその装騎ワルテット。
2年ミラビレス・リートとその装騎ポエジア。
1年サン・オ・リリックとその装騎アフェクション。
それぞれの装騎と騎使の紹介が入った後、その戦いが始まった。
「す、凄い……」
モニターを見つめるスズメが思わずそんな声を漏らす。
開始からしばらく――モニターに映るのは爆炎、爆炎、そして爆炎。
「壊し屋……シーサイドランデブーか」
「壊し屋?」
「そ、壊し屋。このチームの装騎は、破壊能力に長けた装騎が配属されやすいんだよなぁ」
全身にジャイロロケット砲を備え、その手に14mmガトリングガン・キラークイーンを構える4年マーキュリアス・クイーンの装騎ラプソディ。
オリーブ色の外付けアーマーによる無骨さと、多種多様の爆弾を用いての爆破攻撃を得意とする3年アストリフィア・サツキの装騎サーティーナイン。
「うわ……な、なんなんですかあの装騎!?」
「対装騎用炸薬式アームハンマー・ハンマートゥフォールか……」
その両腕に火薬を仕込まれた細長の腕が特徴的な2年ナイト・テイラーと装騎スウィートレディ。
この面子の中でも、その装騎は特に目を引く。
自らの腕を相手の装騎に叩きつけ、その衝撃で碗部に設置された衝撃集中爆弾が炸裂――自らの腕にダメージを与えながらも、相手の装騎に更なるダメージを与える装備。
それが対装騎用炸薬式アームハンマー・ハンマートゥフォール。
しかし、スウィートレディとはまた違った意味で衝撃を齎した装騎もあった。
1年ディーコン・ジャンヌの装騎ベストフレンドの独特な能力だ。
「あれ、せ、先輩……スウィートレディの壊れた腕が――修復していってます……」
「ま、マジかよ……」
ベストフレンドの全身が仄かな光を放ち、その光がスウィートレディを包み込む。
するとたちまち、火薬の炸裂によって自壊したその腕が修復されていく。
装騎に仕込まれたナノマシンを活性化することによって、損傷箇所を修復すると言うベストフレンドの固有能力。
「ベストフレンド――まさにスウィートレディの最高の僚機って訳か」
爆発音が聞こえなくなったそのモニターの向こうでは、シーサイドランデブーの4騎が勝ち誇ったように腕を掲げていた。




