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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
夏休み:大装騎大会
128/322

オールステラVSステラソフィア

「ななな、なんと! 今回初参加の謎のチーム・オールステラ! その正体が判明しましたッ。チーム・オールステラはステラソフィア女学園ディアマン・ソレイユを筆頭に、同じくサエズリ・スズメ、ヒラサカ・イザナ――――更になんとあのエース、サクレ・マリアを擁するドリームチーム!!」

驚き――と言うよりは、その展開を楽しむような声を上げる実況のリタ。

「このまま行けば、チーム・ステラソフィアとチーム・オールステラの対決が実現します!」

そんな実況を聞きながら、1番驚いたような表情を浮かべていたのは言うまでもない。

チーム・ステラソフィアのメンバーだった。

「クッソ、ソレイユの野郎! 今まで毎年出てたくせに今年は突然用事が入ってると思ったら……!」

「ロズちゃん達も知ってて辞退したのですわね……」

「まんまとソレイユにハメられたって訳ね」

「ふんだ! 別に倒しちゃっても良いんでしょ? ぶっ飛ばしてやるから!!」

「それ負けフラグじゃね?」

そして、チーム・オールステラの正体が判明して暫く――――ついにチーム・ステラソフィアとチーム・オールステラの対決の幕が上がった。

先手を取ったのはチーム・ステラソフィア。

テレシコワ・チャイカの魔力探知で、先んじてチーム・オールステラの位置を補足。

そして――

「魔力、砲撃ですわ!」

「ヒルメフラーレ、収束発射ァ!!」

チーム・ブローウィングの定石戦術である視界外からの威嚇砲撃。

「そろそろ来る頃だと思ってました!」

「そうだなっ!」

だが、オールステラはその砲撃で沈むような玉じゃないのは周知の通りだ。

「行くぜ、対ステラソフィア戦術だ!」

「「「諒解!!!」」」

ソレイユの号令に従ってそれぞれの装騎が、それぞれの得て物を“本来の持ち主”へと投げ渡す。

「ゴメン、イザナちゃん! レッカの弾、使い切っちゃった!」

「結構長く戦ってるものね。シールドナインが残ってるだけ十二分……行くわよ」

イザナはそう言うとシールドナインライフルの引き金を引いた。

銃口マズルから霊子の輝きアズルフラッシュと共に放たれる弾丸は、先ほどの先制射撃から予測した位置へと正確に飛翔する。

もちろん、こちらオールステラに劣らずむこうステラソフィアも精鋭。

当たるはずは――

「うわわわわわぁ!? 撃ち返してきたァ!!」

「魔力障壁、ですわ!」

撃ち返してくるとは全く考えていなかったのだろうか……慌てるヒミコをよそに、チャイカが冷静にヒミコを庇った。

「うぅ……デジャブぅ」

今の展開に、ヒミコはふと新入生歓迎大会の一幕を思い出す。

「あのチームで射撃武器を持ってたのはスズメちゃんだっけか?」

「でも、あの正確さ――――ヒラサカ・イザナね」

「本当にィ? スズメちゃんの射撃能力は未知未知だよ?」

「射撃パターンもヒラサカ・イザナのソレに近いわ」

「そのデータいつ取ったの?」

「ああもう、うるさいわね!」

クイーンの分析に一々突っ掛るヒミコにイライラが隠せないクイーンだが、

「クイーンが言うなら違いないさ」

「さ、さすがツバサねっ、分かってるじゃない」

ツバサの言葉に満更でもない様子を見せた。

ツバサ達チーム・ステラソフィアは、チーム・オールステラがソレイユ率いるチームだと把握する前から、実況でその強さには注意していた。

今までの実況の内容から、ツバサ達はチーム・オールステラの武装と戦い方をある程度推測している。

まぁ、ほとんどはクイーン1人がやっていたのだが。

「さーて、対ステラソフィアの切り込み隊長は誰が務める?」

「突撃なら、私が無難――」

「突撃槍ですもんね!」

「そう」

マリアは口元にわずかな笑みを浮かべながら突撃槍ロンを構える。

「マリアさん、楽しそうですね!」

「そう?」

「フッ――そんじゃあ、頼むぜサクレ・マリア!」

「諒解」

戦法自体は今までイザナがやっていたのと同じ。

「――――ロンゴミニアド!」

突撃槍ロンに内蔵されている霊子砲ロンゴミニアドの霊子を盾代わりにして突っ込むという戦法だ。

だが、少しだけ違う所がある。

「疾突っ」

それは、霊子砲ロンゴミニアドを展開しながらも、その霊子の放出力を生かし――――弾け跳ぶように一気にチーム・ステラソフィアとの距離を詰め、そしてそのまま――

「ヒミコっ!」

「んん?」

ヒミコへと激突。

ヒミコの装騎を戦闘不能にした。

「おいヒミコ!」

「まさかこんなに使えないとは思わなかったわ……」

「仕方ないですわ。ウチ達でなんとかいたしましょう」

「チャイカ、サクレ・マリアに――」

「魔力、銃撃! ですわね!」

ツバサが皆まで言うより早く、チャイカは魔力を纏った弾丸をマリアへと撃ち放つ。

「!」

チャイカの強力な魔力が圧縮され、弾丸の鋭さと合わさった強力な銃撃は、吹き出す油膜のような霊子の壁を容易く貫き通る。

「どうですの?」

だが、その弾丸を紙一重。

「まだだ、援護するぞ!」

「ええ、行きましょう」

そこに、ツバサがバーストライフルを、クイーンがキラークイーンガトリングをマリアに向かって撃ち放った。

そこで、マリアは狙いを絞る。

標的は、マーキュリアス・クイーンだ。

「エキソダス」

アズルの放出範囲を狭め、突撃槍ロンの出力を前面に特化させる。

ツバサからの攻撃は、全く考えていないマリアの攻撃。

だが、それも味方のサポートがあってこそ、だ。

「さて、久々に――」

マリアが爆発するように、クイーンの元へと突っ込むと同時に、イザナがツバサへとシールドナインライフルの銃口を向けた。

だが、狙うのはツバサ自身ではない。

ツバサがマリアを狙って撃ち放ったバーストライフル――――その弾丸だ。

「何だと!?」

イザナの撃ち放つシールドナインライフルの銃撃が、ツバサの撃ったバーストライフルの弾丸を撃ち落す。

更に、イザナの銃撃を恐れもせずにソレイユが一気にツバサへと肉薄。

「抜刀――一閃!」

マリアの槍撃が、ソレイユの閃撃が、クイーン、そしてツバサの装騎を戦闘不能に。

そして、

「さ、流石に強いですわね……ついにウチ1人になってしまいましたわ……」

独り言ちながらチャイカは1騎、その存在が無いことに気が付いた。

そう、サエズリ・スズメの操る装騎である。

「! まさか……っ」

「はいっ!」

魔力探知やレーダーで確認するまでも無く、チャイカの予想は的中していた。

チャイカが自らの背後に顔を向けたその刹那、スズメのナイフがチャイカの装騎を戦闘不能にした。


言うまでもないことだが、この大装騎大会はチーム・オールステラが最後まで生き残り優勝した。

「しっかし、ソレイユ……よくもやってくれたな……」

「楽しかっただろ?」

「全然楽しくなーい!」

茶化すソレイユに、ヒミコが不満の声を上げる。

大会が終わった後、チーム・オールステラとチーム・ステラソフィアの8人で中央公園近くのファーストフード店に来ていた。

「マリアさんってこういう所あまり来ませんか?」

「チームメイトが、買ってくることはある」

「そうなんですか!」

思い思いのメニューを頼み、口に運ぶスズメ達8人。

「今日はヒミコの奢りね」

「え、なんでぇ!?」

「最初に落とされたからですわぁ」

「いやいやいや、そんなの聞いてないからね!」

「ふーん、ヒミコの奢りならもっと高いのにしとけば良かったわ。追加注文良いかしら?」

「もちろんよ」

「もちろんじゃなーい!!」

それから、全員でカナンの駅へと向かおうとしていた時だった。

「あ、あのっ、チーム・オールステラと、チーム・ステラソフィアの方々、でありますよね!?」

不意に、緊張気味の少女が声を掛けてきた。

その様相から見るに、明らかに彼女達8人誰かの――もしくは全員のファンだろうと言う事は容易に想像できる。

そして、それを理解した8人の中で「この子は誰のファンだろうか。もしかしたら……」と言う心情が蔓延。

一瞬の間だが、8人の中で探り合いが始まった。

「あ、あの……サエズリ・スズメさんのファンなんです! サインが欲しいのであります!!」

「やっぷぁ! やっぷぁぁぁあああああ!!!」

「!?」

その言葉を聞いて、ガッカリする者やホッとしたような表情を浮かべる者、そして喜ぶスズメと八者八様。

それに、スズメの反応に若干戸惑ったようなその少女。

「スズメちゃんってサインするの初めて?」

「初めてです! サイン第1号ですよ!!」

「そ、そうなのでありますか!?」

世間的にはスズメはステラソフィア新入生歓迎大会でMVKを取った今年の最有力騎使。

しかし、その割にオーラの無いスズメはサインどころか街中を歩いていて声援を掛けられたことすら無い様相だ。

「でもサインは練習しましたよ! 友達に言われて!」

「誰?」

「カ、カノンちゃん……」

それは装騎アイドルのムーンリット・カノンのことだ。

「さっすがMVK様はデッカイ友達いるねぇ」

ヒミコの冷やかしにも動じず、

「サインはこの色紙にすれば良いんですか?」

「お願いします! で、できればわたしの名前も入れてくれると嬉しいであります!」

「名前は?」

「オオルリ・アオノであります!」

「アオノちゃんは中学生?」

「中学3年生であります!」

「それじゃあ、来年はステラソフィアに――――?」

「はい! 憧れのスズメさんと同じチームになるのが夢なのであります!!」

サインをしながらそんな会話をするスズメに、

「スズメちゃん浮かれてるな」

「まぁ、ああいうの初めてみたいだしな。仕方ねーか」

「むー、あたしもサイン求められたいよぉ!!」

そんな感じで、この日は幕を下ろした。


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