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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
夏休み:大装騎大会
127/322

意外なダークホース

「これは強い、強いぞチーム・オールステラ! リーダーのロジャースを中心に、次々と出会ったチームを撃破していきます!」

そんなチーム・オールステラに接近するチームが1つあった。

「イっくぞィ!!」

「今日は調子良いなぁ! ガンガン行こうぜ!」

「はい! が、がんばりますっ!!」

「――――フフン」

彼女たちはチーム・第七装騎部――ステラソフィア女学園に存在する装騎部の中の1つに所属する少女たちだった。

先頭を行くのは胴体に比べてひょろ長い手足を持った奇形装騎シェテルを操るジーナと、全身からトゲトゲしい雰囲気のある装騎ラドゥエリエルを操るモナカ。

その後を追いかけるのは、マルクトで初めてアズルリアクターを搭載した骨董装騎ルシフェルの改良型を操るポップと、さらにルシフェルの1代前である最早化石装騎ともいえる装騎04ブランクフォーの近代化改修型を操るオニィ。

その4人のステラソフィア進学科生で構成されるチームだった。

「エージェント・ダイン!!」

「諒解リーダー!」

その反応に気付いたチーム・オールステラは先ほどと同じく「基本戦術A」を行使する。

ソレイユの掛け声に、スズメがサブマシンガン・レッカを構えると先手必勝とばかりにその銃撃を叩き込んだ。

「ギョっ!? ナンだぁ!!??」

「うぉっと――――オニィさん、何してんの!?」

驚きの声を上げるジーナとモナカだが、それはスズメの銃撃に、ではない。

その銃撃が放たれる一瞬前に、オニィが2人の装騎に足払いを掛けて転ばせていたのだ。

最初は非難の声を上げていた2人だが、オニィの意図はすぐに解る事になる。

そう、スズメの放った銃撃が2人の上を通り過ぎて行ったからだ。

「リーダー・ロジャース! 奇襲失敗みたいですっ」

「察知されたのか! 相手は……おっ、コイツら、第七装騎部か!」

それから互い互いの装騎が見えるまで接近したところで、ソレイユが嬉しそうな表情を浮かべた。

「知り合いですか?」

「おお、たまにコイツらに指導したり練習に付き合ったりしてやってたんだ。あと、アイツも一緒にな」

「――なるほど! それは強いはずです」

ソレイユの言う“アイツ”とはワシミヤ・ツバサのことだ。

会話の内容は敵には聞こえないのだが、観客の方へは流されることがある――だからソレイユは名前を出さなかったのだろう。

「ちょっと相手してやりてーな……特例戦術A。良いか?」

「「「諒解!」」」

ソレイユは3人の返事に頷くと、真っ先にモナカの方へと走り出す。

そんな中、スズメは相手の装騎に目を引かれた。

「すごい、ルシフェル型に04……骨董品レベルの装騎が実際に動いています!」

「本当ね、第七装騎部だっけ? どういうヤツらなのかしら」

「凄い」

使っている驚きの装騎に、マリアからも思わずそんな声が聞こえる。

「で、誰が誰の相手をする?」

「私、気になる装騎が在ります」

スズメが気になると言ったのは、ポップが駆るルシフェル型装騎。

ポップのルシフェル型が手にしていたのは、ナックルガードのようになっている超振動ナイフ・クイックシルヴァー2本――――たったそれだけだった。

元々ナイフだけで戦うスズメは、自分とどこか似てる彼女に惹かれたのだ。

「それじゃあ、ルシフェル型はスズメが」

「じゃ、イザナちゃんコレ使って!」

スズメは頷くと、サブマシンガン・レッカとシールドナインライフルをパージする。

「使わないの?」

「特例戦術A――」

「自分らしく。諒解よ。さて、私は――」

そこに、ジーナの駆るシェテル型がダガーガンをマリアへと射出してきた。

「マリア、槍は要る?」

「……必要ないわ」

「諒解よ」

マリアはジーナと、そしてイザナはオニィへと駆け出す。

ヘルメシエル型の袖に仕込まれたナイフ・クサナギを取り出したスズメは、ポップのルシフェル型に接近する。

「行きますよ!」

そして、スズメのナイフ・クサナギとポップのクイックシルヴァーがぶつかり合い、火花を散らした。

「この人――まだ、初心者ですね」

数回打ち合ったところでスズメはそう感じた。

まだ、どこか実戦慣れしていないような感じがしたからだ。

だがそれと同時に、何か奇妙な感じも覚える。

「でも――私の攻撃にしっかり対応してくる……まるで私の戦い方に慣れてるように……」

スズメの一挙一動を予測するかのように、的確に対応するポップ――彼女の動きはスズメと何十戦、いや、何百戦と手合せをしたかのようだった。

「私の知ってる人? ううん、私の知らない戦い方……一体ナニモノなんでしょう」

不意に、ポップのルシフェル型のブースターに火が灯る。

「来るっ!?」

瞬間、ポップが激しく回転しながらスズメの脇を抜けていった。

「早い……っ」

ルシフェル型の特徴である大出力で圧倒的数を誇るブースターの強烈な爆発力。

更に、そのブースターを片側だけ全力稼働させることで目にも止まらぬ速さでスズメの背後を取った。

そして、ポップの手にした超振動ナイフ・クイックシルヴァーがスズメを捉えんと閃いた時。

「すごいです! でもっ、ムーンサルト・ストライク!!」

その1撃を跳躍してスズメは回避。

そのままポップの背後へと着地し、ナイフ・クサナギを一閃――――

「!!」

しかし、ナイフ・クサナギの1撃をクイックシルヴァーの刃がしっかりと受け止めていた。


その頃、イザナも1騎の装騎と打ち合っていた。

戦う相手は04装騎を操るオニィ。

イザナの持つ突撃槍ロンとオニィの持つ霊子杖・南斗星君がぶつかり合い、打ち合う。

オニィの持つ霊子杖・南斗星君は一見ただの棒。

しかし、装騎の掌にある魔電霊子アズル供給路からアズルを杖自身に纏わせることで超振動武器などとも打ち合えるという武器だ。

それに、霊子杖・南斗星君の機能はそれだけではない。

「コイツ……!」

イザナは、先ほどスズメから受け取っていたシールドナインライフルを構えると、オニィに向けて発砲した。

だが、その1撃は霊子杖・南斗星君からフラッグのように伸びたアズルで遮られる。

そして、この戦い方にイザナはふとある人物を思い出した。

「まさか、コイツ…………フォルメントール・アニール!!」

フォルメントール・アニール。

四天王決定戦に於いて南ブロックで優勝したニュルンベルク機甲中学装騎部の“影の”エース。

気が向いた時しか本気を出さない性格故に戦績のムラが大きい彼女だが、チームの敗因にはならないという絶妙な立ち位置にいるのがこのアニールと言う少女だった。

部活内では、“鬼のように強いアニール”と言う事から、鬼ール、そして鬼ィオニィと呼ばれている。

そして、そんなアニールと、イザナの間にはちょっとした因縁があるのだ。

「04とか骨董品とはいえ、気を抜いたらヤバいわね」

イザナはそう独り言ちながら、シールドナインライフルをわざとオニィの足元に撃ち放つ。

弾丸で巻き上がる砂埃が、煙幕のようになり、2人の視界を遮る。

『やっぱりアナタ、ヒラサカ・イザナ、ね』

「フン、久しぶりねアニール。交流戦以来かしら」

2人の因縁は、四天王校決定戦の後に行われた交流戦にあった。

イザナとアニールはその交流戦で戦ったことがあったのだ。

結果は時間切れによる引き分け。

四天王決定戦に連なる一連の大会、試合の中で唯一イザナの“勝てなかった”試合だった。

「アンタ、ステラソフィアに居たの? 全然気づかなかったわ」

『“8組”だもの。無理も無いこと』

「“普通科”ね」

ステラソフィアには、主に運営資金の収集を目的とした進学科と言う学科があるが、その中でも更に7、8組は“普通科”と呼ばれる装騎の扱いが一般教養レベルしか存在しないクラスがある。

同じステラソフィアに在学していながら、イザナがアニールの存在を知らないのにはそこにあった。

幾ら近代化改修しているとはいえ、型落ちの04装騎を操りながら、しかしそれでもかなりの強さを誇るアニール。

だが、何度も打ち合ってイザナは感じていた。

「アンタ、腕落ちたわね」

(そんな気はないが)挑発するようなイザナの言葉に、だがアニールは笑みを浮かべる。

『何で私が普通科に入ったか分る?』

その言葉に、イザナは理解した。

『装騎、やめようと思ってたのよ』

「アンタってそんなおしゃべりなヤツだっけ?」

『コッチのセリフよ。まっ、久々に私より強いヤツと戦えて浮かれちゃってるのかもね』

そんな“他愛のない会話”を繰り広げながらも、戦いは徐々にイザナの優勢になっていく。

そして、イザナが最後の1撃を加えようと、突撃槍ロンを構えたその時、不意にアニールが装騎をイザナから逃げるように駆け出した。

「アニール――!?」

アニールが走りこんだのは、スズメとポップが戦っていたその場。

スズメの放ったムーンサルト・ストライク、その1撃をポップがナイフ・クイックシルヴァーで受け止めた時だった。

そして、スズメの次の1撃がポップの装騎を捉えようとしたとき、ポップの装騎を庇うようにアニールが体を広げる。

スズメのナイフの1撃がアニールの装騎を戦闘不能にした。

そして、すぐにポップとの戦闘を再開しようとしたスズメだが、

「敵ですか……っ!」

ここでスズメは別の敵の気配を感じ、跳躍する。

その瞬間、横から放たれた弾丸がポップの装騎を戦闘不能にさせた。

「ダイン――――いえ、スズメ!」

「うん、イザナちゃん!」

スズメとイザナは2人で装騎を銃撃がした方向へと走らせる。

銃撃を掻い潜りながら茂みを抜けると、4騎の装騎が驚いたように、慌てふためいたように固まっていた。

それと同時に、もうすでにチーム・第七装騎部の2騎を撃破していたのだろう、ソレイユとマリアの装騎も姿を現す。

「行きます、スィクルムーン・ストライク!」

急降下槍撃ダウンバースト……!」

「シューティングスターだぜ!」

「……ピンポイントスラッシュ」

スズメ、イザナ、ソレイユ、マリアの1撃が、横槍を入れてきたチーム・NINJA同盟を戦闘不能へと追い込んだ。


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