ワシミヤ・ツバサのチームメイト集め
「今度の大装騎大会のことですよね?」
「そうよ。毎年の恒例としてチーム・ステラソフィアとして大会に参加する――」
「だから今年の新歓優勝チーム、ブローウィングのリーダーのアタシがチームリーダーを、ってことですよね」
「ええ。チームの内容はアナタに一任するけど――まぁ、メンバーはほとんど決まっているようなモンね」
「そうですね。分かりました。ワシミヤ・ツバサ、大装騎大会に出場するためのチームメンバー集めをさせて頂きます!」
スズメがマリアにステラソフィアの案内をしている頃、そんなことがあったのだが……。
「って言ったけど……スズメちゃんも用事がある、ソレイユも用事がある、これだとヒラサカも誘えなさそうだし……どーすれば良いんだよぉ」
もうすでにソレイユによって先手を打たれていたツバサは、早速チーム集めに難航していた。
「まぁまぁ、紅茶でも飲んで落ち着くのですわ」
ニコニコと笑みを浮かべながらチャイカがツバサの前に紅茶の入ったカップを差し出す。
「なぁチャイカ、チャイカは今週の日曜って空いてる?」
「毎年恒例の大装騎大会ですわね」
「そうそう。本当ならアタシとソレイユ、スズメちゃんとヒラサカでチームを組むべきなんだけどみんな用事あるって言うし……チャイカぁ」
懇願するようにチャイカに抱き付いてくるツバサをチャイカは微笑ましげに眺めながら
「そうですわね……それではまずはウチ以外の2人のメンバーを見つけてきたら、ウチも入りますわ」
と言った。
「そんなゲームキャラみたいな条件出すなよぉ!」
「うふふ。ツバサ先輩なら大丈夫ですわ」
ツバサはふとマッハの部屋へと目を向けるが、夏休み中にマッハが部屋から出てくることは無い。
そうなると、マッハを入れるのは無理だろう。
と言う事で、ひとまずメンバーを2人探すことになったツバサは、寮を歩いていた。
「とりあえずはバーチャルスターの部屋からだな……」
大装騎大会におけるステラソフィアからのゲストチームは、基本的に新歓優勝チームの4年生をリーダーとして、新歓で活躍した騎使達で編成するのが常だ。
そうなると、新歓決勝でブローウィングと戦ったチーム・バーチャルスターから尋ねるのは当然だった。
「ごめんなさい。参加は遠慮するわ」
「あたしも……ああいう場は苦手で……」
ソレイユの妹ロズと、1年サリナの2人はツバサの誘いにそう断る。
だが実際には理由は少し違っていた。
2人ともソレイユがスズメ達とチームを組んで出場することを知っている。
出場すればほぼ100%自分たちが噛ませになるのを分かっていたので断ったのだった。
「ミズナちゃんは?」
「マッハちゃんと同じよ」
「ああ……」
そして、ゲーム内でマッハと張り合っているだろうミズナの部屋の前には「邪魔は厳禁なのですよ!」と書かれた張り紙がされていた。
バーチャルスターの部屋を出たツバサは、考える。
どうするべきか、どういうチームを作るべきかを。
「コレだったら自分が一緒に組みたいヤツを集めた方が良いかもな……」
考え込んだ結果、ツバサはそう結論付ける。
ソレイユやスズメをチームに引き込めない以上、わざわざオールスターチームを作る必要は無い。
そうなると、自分とそしてチームメンバーが戦いやすいチームを作るべきだと考えたのだ。
「アタシがアタッカーで……どうせならチャイカは戦闘に集中させたいな。誰か指揮官タイプのヤツを探すか」
と、言う事で尋ねたのはチーム・マジェスティックフォーの寮室だったのだが。
「嫌よ」
マジェスティックフォーのリーダー、デイリア・H・ケイにそう一蹴された。
「お願いだよケイ! 大装騎大会に一緒に出てほしいんだよ」
「大装騎大会でしょ? それもステラソフィア女学園からのゲストチーム! そんなのに私が出た時のことを想像してみて? 絶対、観客にガッカリされるじゃない! そういうの耐えられないの!」
そう、毎年出場している大装騎大会のステラソフィアからのゲストチーム。
そのメンバーに選ばれると言う事はある種の名誉もあることではあったが、今回ばかりは観客の希望する「ドリームチーム」像が最初から明確だ。
その期待を裏切り、代表として出場するということにどれだけのプレッシャーがあることか。
それからツバサはチーム・リリィワーズのナガトキヤ・ライユ、チーム・オラシオンのノーガン・ロッティ、チーム・ミコマジックのヴィンナー・エリーザベトなど何人かに声を掛けたり、探したりするが、ほとんどの人がケイと同じような理由で辞退し、そうでなくとも今は夏休み――帰省中でそもそもステラソフィアに居ない生徒も多かった。
「お困りのようねワシミヤ・ツバサ!」
そんなツバサに自分から声を掛けてきた生徒が1人いた。
「クイーン!」
チーム・シーサイドランデブー4年、マーキュリアス・クイーンだ。
「て言うかお前、実家に帰ってたんじゃないのか?」
「そ、そんなことはどうでも良いわよ! 大装騎大会のチームメイトを探してるのでしょう? それなら私を誘ってくれてもいいのよ」
やや上から目線でそういうクイーンだったが、ツバサは全く気を悪くした様子も無く
「マジか!? ありがとうクイーン!」
とあっさり受け入れる。
クイーンはツバサの言葉に少し顔を赤らめながら
「別に礼なんて要らないのよ」
と呟く。
「っていうか何でアタシが困ってるって知ってたんだよ」
「べ、別に、噂で聞いただけよ」
実は、チャイカがクイーンへと連絡をしていたのは此処だけの秘密だ。
「それよりツバサ。ほかにメンバーは見つかったのかしら?」
「いや、クイーンが入ってくれてやっと3人だな。あと1人、チームに入ってくれそうなヤツが居ればいいんだけど」
「それなら簡単よ」
ツバサの言葉にクイーンが言う。
「バカを誘いましょう」
ツバサとクイーンの2人はチーム・ミステリオーソの部屋へと来ていた。
「と、言う事で、最強無敵のヒミコ様のところに来たのよ」
「最強無敵――――!!」
バカとは、チーム・ミステリオーソ所属の4年ヒンメルリヒト・ヒミコのことだった。
正直な話、マッハに匹敵するレベルのバカであるヒミコを誘うのは最終手段ではあったが、背に腹はかえられない。
そしてそのバカであるヒミコはクイーンの簡単なおだてにより、簡単に心を掴まれた。
「どう? 名誉あるステラソフィアのゲストチームとして、大装騎大会に参加してみる気はないかしら?」
「その話、乗った!」
こうして、ワシミヤ・ツバサ率いるチーム・ステラソフィアが結成された。