反転攻勢(ムーンサルト・ストライク)
タタタタタと放たれる10mmストライダーライフルの弾を木々を使いながら回避する。
「スズメちゃん、そろそろだ――」
「はい!」
レーダーには斜め後方から迫りくる2つの光点。
現在交戦中のゴア=ブースを12時に、8時の方向からイニスフリー、4時の方向からマクブライドが迫りくる。
チャイカが反転し、スパローとスーパーセルを、イニスフリーとマクブライドから守る壁のように構えた。
スーパーセルは12mmバーストライフルを、スパローは16mmファイティングショットガンを撃ちながらゴア・ブースを牽制する。
「お待たせぇー!」
「真打、登場」
10mm銃剣標準装備型突撃銃を構えるイニスフリーと、14mmナイフブレード・サブマシンガンを構えるマクブライド。
その2騎が一斉に放つ銃撃を、スネグーラチカが必死で防ぐ。
銃撃を行いながら、ジリジリと近付いて来るイニスフリーとマクブライドの2騎。
「くぅっ……あぅっ!! ああっ!!!」
激しく撃ち込まれる弾丸に、チャイカの精神力が削がれていく。
「あと少し――あと、あと少しだけ…………!!」
スズメは左手のショットガンを単調に撃ちながら、レーダーで2騎との距離を測っていた。
「くぅぁ……もう、だめ、ですわ――――」
チャイカが限界に達し、スネグーラチカがその機能を停止したその時――
「今!!」
スズメが駆る装騎スパローが宙を舞った。
「何や!?」
「えっ」
「あいえなぁ!?」
バク転をするように高く飛び跳ねたスパローが宙をくるくると舞う。
攻撃するのも忘れ、呆気にとられて目で追いかけてしまうウィリアムバトラーの3人。
だが、その3人の内、1人の視界からスパローの姿は消えた。
「――しまっ」
スパローはマクブライドの頭上を跳ね越えるとその背後へと着地。
「ムーンサルト・ストライクっ!」
右手に持っていたナイフの一閃で、マクブライドの機能を停止させた。
「残念無念――」
「な、何が起こっちょるっとね――!?」
一瞬遅れてその場にたどり着いた装騎ファーガスの騎使エール・カトレーンが驚きの声を上げる。
そしてそのまま、スパローはファーガスに向かって駆け抜けながら左手に持った16mmファイティングショットガンを撃ち放つ。
「うわととと、こっちに来るんじゃないとよ!」
ファーガスはカラドボルグを構え、スパロー貫こうとする――しかし、スパローはその身を沈めファーガスの突きをかわす。
そのまま、弾の切れたショットガンを投げ捨てながら、ナイフでファーガスの胴体を切り裂いた。
「な、なんて鋭さしとるん……」
一方、ツバサの装騎スーパーセルも宙を舞っていた。
装騎スーパーセルの両腕には、ワイヤーアンカーが仕込まれている。
そのアンカーを使うことで、敵の装騎の動きを止めたり、壁や木々に突き刺して、独特の機動をすることが可能となるのだ。
スパローのバク転宙返りに呆気にとられた一瞬の隙に、ツバサはスーパーセルのアンカーを手近な木に突き刺し、飛んだ。
「あいやっ」
スーパーセルの機動にイヴァが気付いた時には遅かった。
スーパーセルは丈夫な木々にアンカーを突き刺し、その巻き取る力で擬似的な空中機動を実現する。
ロープスイングのような動きで一瞬でゴア=ブースとの距離を詰めると、腰に差していた剣を引き抜いた。
その剣は、スーパーセルの電力供給を受けて、連なった鎖状の刃が大きな声を上げながら稼働するチェーンブレードと呼ばれる武器だ。
「一閃――!! なんてね」
ギィィィィイイイイイイイイイン
けたたましい音と、盛大な火花を散らしながら、スーパーセルのチェーンブレードはゴア=ブースの体を引き裂き、機能を停止させた。
「んな――こんな一瞬で3騎もとかジョーダンやろ!?」
「いーや、ミカエラ。これがリアルだから~♪」
「えへへ、すみません。これでミカエラ先輩だけですね」
「全く……恐ろしい人たちですわ…………」
激しい駆動音を奏でるチェーンブレードを掲げたツバサのスーパーセルと、大腿部のストックから予備のフォールディングナイフを取り出し空いた左手に持つスズメのスパロー。
2騎の装騎は、最後の1騎となったミカエラのイニスフリーへとにじり寄る。
「うぅぅううううううだぁあぁぁあああああああもう!! こーなりゃ当たって砕けろや!!!!!」
「2対1でも容赦しねーぞ?」
「よろしくおねがいしますー」
タタタタ!!
イニスフリーが放った銃剣装備型突撃銃の銃声が戦闘の開始を知らせるように、スーパーセルとスパローの間を引き裂く。
「くらえっ!」
スーパーセルはチェーンブレードを構えたままイニスフリーへと駆け抜け、その刃を振りかざす。
「甘いでっ」
ギギイィィイイイイイイイイイイイイン
スーパーセルのチェーンブレードと、イニスフリーの銃剣がぶつかり合い、激しい音が響く。
「其処ですっ!」
スーパーセルとの打ち合いによって動きが止まったイニスフリー、そこにスパローのナイフが閃く。
「そうくるんは当然やな!」
「うおっ!?」
その瞬間、イニスフリーはスーパーセルの攻撃を受け流すように身をかわす。
引かれるようにバランスを崩したスーパーセルが、スパローの払った右手に持ったナイフに切り裂かれる。
「ああっ、先輩ごめんなさい!!!」
「マジかぁああああ!!??」
「ふっふーん、さぁスズメちゃんも――とったでぇ!!」
ナイフを振り払い、隙が生まれたスパロー。
そのがら空きになった胴体に、イニスフリーが突撃銃の銃剣を突き立てようと構える。
「させるかぁ!!」
だが、辛うじて機能停止を免れていたスーパーセルの右腕がイニスフリーの突撃銃の銃剣を掴みあげる。
「――いまだっ」
「させんで!!」
イニスフリーは必死でスーパーセルに掴まれた突撃銃の標準をスパローに向け引き金を引く。
しかし、放たれた弾丸はスーパーセルによってあらぬ方向へ飛び散らされた。
散らばる弾丸の雨を掻い潜り、スパローは左腕に持ったナイフをイニスフリーへと突き立てた。
「バトルオーバー!!! Bブロック3回戦の勝者が決まりましたっ! 激戦を制し勝ち上がったのは、チーム・ブローウィング!!」
観客席からの歓声を聞きながら、スパローはナイフを持った右手を高く天へと振り上げ、十字を切った。
オマケ
ステラソフィア・キャラクター名鑑
1年:チーム・ウィリアムバトラー所属
名前:Lissadell Con Eva
読み:リサデル・コン・イヴァ
生年月日:聖歴152年9月2日
年齢:15歳(4月1日現在)
出身地:マルクト国バラトン
身長:149cm
体重:46kg
使用装騎:PS-Sa1S:Gore-Booth(ベース騎PS-Sa1:Sandalphon)
好みの武器:20mmフュンフトマティ砲
ポジション:ガンナー
バラトン公立ヘーデルヴァーリ中学出身。
装騎が好きなので、装騎を自由に扱えるステラソフィアに推薦をだし、自己推薦入学を果たした。
趣味は装騎のプラモを組み立てること。
個人的な声のイメージは花澤香菜さん。