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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:てんてこ編
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シミュレーターで遊ぼう!

ある早朝のことだ。

スズメはツバサに連れられて技術科校舎の地下へと来ていた。

技術科校舎地下――そこには各サポートチームごとの整備ドックが存在する。

スズメたちはそんな中のサポートチーム第3班の整備ドックへと足を運んでいた。

機甲装騎の整備や改造を行うためのドックなのだが、かなりの広さがあるためその一部がほぼ私用状態になっており、いろんな機械がゴチャゴチャと積まれた中、1人の女子生徒が顔を出す。

「オー、よくキたな!」

スズメ達を迎えたのは、サポートチーム第3班2年ケツァール・カトレ。

マッハのサポートパートナーだ。

「今日はアレをしにキたんだロ?」

「ああ、スズメちゃんも捕まえられたしな」

「イイネぇ。スズメちゃんならイイデータが取れそうダゼ」

「あの――アレって何ですか?」

「キまってるだロ! シミュレーターだゼ!!」

カトレはそう言いながら、ガラクタに埋もれた箱状の機器を指さした。

「シミュレーターならステラソフィアにもありますよね?」

「フッフッフ――そんナ何処にでもアるシミュレーターと一緒にしてモラっちゃア困るゼ」

「何だっけ、確かアズルホログラム機能を利用した、実際の操縦感が味わえるシミュレーター、って言ってたっけか」

「ソウだぜ! より本物の装騎の操縦感ニ近づけて作ったんダゼ! 衝撃や浮遊感、重量感もアズルホログラムの物理的圧迫力で完全再現ダゼ!!」

「へぇ――! つまり、ディスプレイを見ての錯覚とかじゃなくて、本当にそういった感覚が感じられるって事なんですねぇ!」

「マァ、流石に熱量武器をウけた時のコックピット内の温度上昇マデは再現してないガ……トリアエズ、ヤってみたいだロ?」

「はい!」

スズメはカトレに促されシミュレーターの中へと乗り込むと、普段通り機甲装騎の起動手順を踏みシミュレーションを開始した。

「このシミュレーターはダンダン難易度が上がっていく連戦モードと、インプットされたデータを元にしたゴーストとの対戦モードがあるんダ」

「ゴーストって言うと、その人の戦い方を再現する――ってことですか?」

「ソーダナ。このシミュレーターを使った騎使のデータをAI化してゴーストとして出スことも可能ダ」

「一応、アタシのゴーストが入ってるはずだよ」

「ツバサ先輩の!? 面白そうですね――――やってみたいです!」

「ソレジャア、コッチでゴーストモードにスるからちょっとマッテくれ」

それからしばらく、フィールドと敵装騎の情報がシミュレーターの画面に表示される。

「スズメちゃんはドノ装騎ニするカ? スパローも使えるゼ!」

「あー、じゃあアブディエル型で! 武装はナイフだけで良いです!」

「スパローじゃなくていいのか?」

「正直、スパローよりもアブディエル型の方が使い慣れてますしね」

「リョーカイ! ンジャ、ハジメルぞ? イイナ?」

「はい!」

「デハ――スタートだゼ!」

カトレの言葉に続け、ディスプレイに作戦開始の文字が表示された。

「おおっ!」

装騎を動かした瞬間、スズメが感嘆の声を上げる。

体を伝う、リアルな重量感――――画面による脳の錯覚では無く、体に確かに感じる質感。

ふと、レーダー圏内に高速で接近する1つの反応。

ワシミヤ・ツバサが駆る装騎スーパーセル――そのゴーストだ。

スーパーセル・ゴーストは接近しながら、バーストライフルを連射する。

スズメ・アブディエルはその射撃を回避しながら、グッとスーパーセル・ゴーストへと接近。

スズメ・アブディエルが薙ぎ払った超振動ナイフを、スーパーセル・ゴーストはチェーンブレードで受け止めた。

ギギギギギギィと火花を散らす両者の刃。

「行きます!」

スズメ・アブディエルは体を捻ると、スーパーセル・ゴーストの側方を抜けようとする。

だが、グッと装騎が引っ張られるような感覚を覚えた。

「これは――――!」

スーパーセル・ゴーストの脇を抜けた時、スーパーセルの左腕からワイヤーアンカーが放たれ、スズメ・アブディエルを捉えていたのだ。

獲った――――まるで、そう言うように、ワイヤーアンカーを勢いよく手繰り寄せるスーパーセル・ゴースト。

右手に持ったチェーンブレードの切っ先は確実にスズメ・アブディエルの胴体を狙っている。

そして、2騎の装騎が交差した瞬間――――

「勝った!」

スズメ・アブディエルの脇腹を削るスーパーセル・ゴーストのチェーンブレード。

そして、スーパーセル・ゴーストのコックピットを貫くスズメ・アブディエルのナイフ。

戦いは――――スズメの勝利で終わった。

「ツバサ先輩のデータにしては戦い方が大雑把過ぎますね」

「マァ、データが足りナかったんだロ」

「CPU相手だとゲーム感覚で戦っちゃうから余計にな」

「これってたくさん戦えば、私そっくりな戦い方をするゴーストも作れるんですよね?」

「アア、ソウダゼ。他にも気になることがアッタらナンデモ言ってクレ!」

「それなら――――」

それから、昼頃までシミュレーターをいじり倒したスズメ達。

「今日は楽しかったです! またやりに来ても良いですか?」

「アア、モチロンだゼ! もともと、オマエラにヤらせるタメにツクったんだからナ」

「これから何か食べに行くけど、カトレも来るか?」

「イヤ、オレは遠慮しとくゼ。モーチョイ、調整したいしナ」

「そうか――」

「それじゃあ、また来ますね!」

スズメとツバサがその場を去った後、ふとSIDパッドの通話着信音が鳴り響いた。

「アア、ナントカカントカブルク先輩じゃねーカ。新人にシミュレーターを? アア、イイゼ。データはたくさんアって困らねーシナ!」

カトレはそういうと通話を切ると、再びシミュレーターへと向き直り、シミュレーターの調整に勤しみ始めた。



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