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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:夢想編
111/322

最強マッハ伝説

「そしたらボブが言ったんだぜ」

「何て言ったんだ?」

(うわぁ……明らかにガラの悪そうな人たちが居ます……)

神都カナンの路地裏。

例の地下街へと足を運ぼうとしていたスズメは、曲がり角からその先の様子を伺っていた。

そこには、何処からどう見てもTHE不良と言うようなガラの悪い男が数人、座り込みながらジョーク大会を繰り広げている。

「せっかく、ひのきの林も買ってきたのに……」

暫く待ってみても、不良グループはそこから動く気配がない。

さすがに今日は諦めようと、スズメがその場から立ち去ろうとした時だ。

「よぉ、嬢ちゃん。何してんだ?」

スズメの背後から、そんな声が投げかけられた。

「げっ……」

「俺らの秘密基地を覗き見て、興味でもあるんかァ?」

そこに居たのは、明らかに路地裏に居る不良グループの一味という風貌の2人組。

溜まり場へと向かおうとして、そこを覗いているスズメを目にして声をかけてきたのだ。

「結構可愛い子じゃねぇか――どうだ? 俺らにキョーミあるんだったら覗いていかねぇか?」

「い、いえ……結構、です」

スズメは何とか声を振り絞り、そう口にする。

「そんなカテェこと言わなくても良いじゃないスかァ~。ちょっと遊んでいきましょうよォ」

その内の1人がズイとスズメへと近寄った。

「ひっ――」

急に近づいてきた不良に、スズメは思わず腰に差したナイフの柄へと手を伸ばす。

(ヤバいヤバい! もう、最悪ナイフを振り回してでも逃げないと――――ッ!)

「なァ、良いだろォ?」

そして、近づいてきた不良が空いている方のスズメの手首をガシリと掴んだその瞬間――――

「テメェ、何してやがるんですかァァァアアア!!」

不良がぶっ飛んだ。

「ナベぇ!!」

吹っ飛ばされた不良は1発KO。

気絶する不良に、もう1人の不良が駆け寄る。

「大丈夫でやがりましたか――――?」

スズメにそっと手を差し出したのは1人の少女だった。

黒髪が風に揺れ、スズメよりもやや低い身長ながら強力な蹴りを見せた少女。

「そう、彼女は差し詰め吹き荒ぶ嵐のように、復讐の女神のように、スズメ後輩の前に姿を現したんですよ」

「何してるんですかマッハ先輩」

助けてもらった割に、スズメの声色は冷淡だった。

「ふっ、少女の嘆きに颯爽と駆けつけるのがヒーローってヤツなんですよ」

そうカッコつけるカスアリウス・マッハ。

「テメェ、よくもナベを!!」

そんなマッハへと、もう1人の不良が本気で殴り掛かってくる。

「マッハ先輩っ!」

その位置はマッハの真後ろ――――だが、

「オラァ!!」

マッハは不良の1撃を紙一重でかわすと、その腹部に蹴りを叩き込んだ。

「ぐぅっ!!」

「オラオラオラオラァなんですよォォォオオオオオ!!!!」

不良が怯んだ所に、更に蹴りを、蹴りを、蹴りを加える。

小柄なマッハの蹴りは、1撃1撃では軽い方なのかもしれない。

しかし、ソレを連続で叩き込むことで打点を稼ぐことができるのだ。

「オラァァアア!!」

最後に気合い一発、不良の鳩尾に蹴りを突き入れて、見事2人目もKOさせた。

「つ、強い――――!」

その足技は、内心マッハをバカにしていたスズメにそう言わしめるだけの迫力があった。

「フッ、こんなモンなんですよ」

「チ、チゲぇぇぇええええ!!」

不意に、スズメの背後からそんな叫び声が上がった。

「げっ、マッハ先輩!」

それは、先ほどまでジョーク大会を開いていた不良御一行様の姿――そう、マッハの叫び声と盛大な喧嘩音に気付いた不良達が、何事かと様子を見に来ていたのだ。

「オイ、ワレら――何してくれてんじゃ」

その中のリーダーと思しきリーゼントの男が、1歩前に進みながらスズメとマッハを睨みつけてくる。

だが、それに負けないくらいマッハも眼光を鋭くすると、スズメとリーゼントの男の間に立った。

「何って一体何のことでやがるんですかァ?」

「ウチらカナンの不良っちゅーんは面子が大事なんじゃ。小娘にぶっ飛ばされたとあっちゃァ沽券に係わるんじゃ。言いたいこと解るなワレ?」

「うっせーんですよ」

マッハはそういうや否や、リーゼントの男の顔面に蹴りを叩き込んだ。

「ボス!」

「リーダー!!」

「御奉行様ッ!」

強烈な蹴りを食らい、怯むリーゼントの男。

それに他の不良達が動揺の姿を見せた。

「テメェ――――!!」

不意に蹴られて頭に血の上ったリーゼントがマッハを睨みつける。

そんなリーゼントに向かってマッハが言った。

「ケガしたくなかったら――とっとと引きやがるんですよ」

だが、その言葉がリーゼントを完全にブチ切れさせることになる。

「ガキやからって絶対許さんぞ。おい、オメェら!」

「はいボス!」

「分ったぜリーダー!」

「やっちまいやしょう親分!」

リーゼント率いる不良グループがマッハ目がけて飛びかかった。

「マッハ先輩――私も――――」

さすがにこれはマズいと思ったスズメがナイフを抜くと構える。

だが、そんなスズメの前に手を出すと、マッハが言った。

「手ェ出すんじゃねぇんですよ」

「――――マッハ先輩?」

マッハは口元に笑みを浮かべると、猛然と不良グループへと突っ込んでいく。

それからのマッハの猛攻は凄かった。

1対多の状況だと言うのに、全く怯む事も無く、蹴り技を駆使して不良を1人、また1人と気絶させていく。

その猛烈な喧嘩っぷりは、もはや修羅。

強烈にして高速な蹴りは、1撃目で大の男でも怯み、2撃目で悶える。

さらに、そこへ容赦なく放たれる蹴りの連続は、並の不良ならKO必死だ。

情け容赦無いマッハの蹴りのスコールが不良達を叩き付ける。

そして、スコールが通過した後には地面に倒れ伏す5人の不良の姿が残った。

「ふぅ――全く、嫌がる少女に手を出したらダメでやがるんですよ! スズメ後輩、帰るんですよー!」

「は、はぁ……」

スズメとマッハの2人は、気絶する不良達を後にしてステラソフィアへと足を向けた。


一方、マッハのボコボコにされた不良達。

彼らは今日の反省会を繰り広げていた。

「クソッ――小娘1人に全滅たぁ……」

「あの蹴り、あの喧嘩っぷり。まさかアイツが伝説の不良――――鬼蹴りのマハなんじゃねぇですか……?」

1人の不良が言ったその言葉に場の空気が張りつめる。

その名を聞いた不良達の表情から血の気が引いた。

リーゼントの男も例外ではない。

「鬼蹴りっつったらあの伝説の――」

「いや、まさか。あんなの噂話だろ!?」

「オイ、モツ! 滅多な事いうんじゃねぇ!」

鬼蹴りのマハ――それは、かつてこのカナンの裏に住む不良達全てを牛耳ていたと言われる伝説の不良の名だった。

相手が戦闘不能になるまで、容赦無く蹴りを叩き付ける姿はまるで鬼神の如く。

そして付いたあだ名が「鬼蹴り」。

カナンの不良達を震撼させた存在だったが、2年ほど前にその存在がパッタリと消えた。

「クソッ――――しかし、ワイらが全滅させられたんは事実や……鬼蹴りにやられた――そう思いたいもんじゃ……」


「マッハ先輩! シミュレーターで自己最低記録更新! ここまでスマートに撃破されるのは逆に凄いですよ!!」

「クソ野郎なんですよォォォオオオ!! シミュレーターなんてやってられねーんですよォ!!」

「一応、言っておくと模擬戦でも自己最低記録更新なのですわ」

「うがァァアアアアアアアア!!! 模擬戦なんてやってられねーんですよォォオオオ!!」

「実戦でダメだから特訓してんのに、何ならやれんだよ!」

マッハちゃんの実力が機甲装騎でも活かせる日が来るのか。

今日もマッハちゃんの特訓は進む。

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