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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
悪魔の名を持つ新型
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ベルゼビュートの実力

「クソッ! 警備隊が全滅!? マルクトの仕業か――――ッ!!」

「落ち着けジョゼ! 突出しては確実にやられる――――連携を大事にするんだ!」

マルクト神国諜報員が搭乗するSDB ARM-B1ベルゼビュート。

その追撃をする4騎のベルゼビュート同士で、激昂する一人を隊長と思しき人物が制する――そんな会話が交わされていた。

彼らはベルゼビュートの最終テストをしていた実験部隊であり、今回奪取されたベルゼビュートを奪還する為に駆り出されたチームだった。

「アレクシ隊長は慎重すぎなんですよ! オレが先行しますから危なくなったら逃げれば良いでしょアナタ達はっ!」

「お前を置いて行けるかっ! ――――クソぅ!!」

4騎のベルゼビュートの内、1騎のベルゼビュートがマルクト騎へ向かって駆け出す。

今回の奪還チームに配属されている少年アルノー・ジョゼのベルゼビュートだ。

超振動片手半剣ウェーブバスタードソードを構え、突出するジョゼ=ベルゼビュートに奪還チームの隊長である青年デュマ・アレクシは頭を抱える。

「隊長、どうしますか?」

そう尋ねてくるのは大型の遠距離支援兵装に身を包んだベルゼビュートを狩る、彼もジョゼと同じ程度の少年――マリーア・ルイ。

「当然、ジョゼを――仲間を失う訳にはいかない。全力でジョゼを支援する」

「でもでもでも、敵はあのマルクトですよ!? そんな、勝てるわけないです!」

隊長の決定を耳にして、慌てたようにそう口にしたのはルイの双子の妹マリーア・マノン。

「俺たちだって新型だ。勝てないとは限らない――――ただし、連携が大事だ。連携さえ上手く取れれば倒せる。この装騎ベルゼビュートはそういうスペックだ」

「確かにスペックではその通りですけど! シミュレーションでも倒せましたけど!!」

「それとも、ジョゼを見殺しにして逃げ帰るか?」

「そ、それは――――」

アレクシの言葉に、今まで必死に反抗していたマノンが言葉に詰まる。

「つまり、そういう事よねー。マノンも反抗してるヒマがあるならさっさとジョゼくん助けに行くよ」

「ルイ――――!」

「嫌ならマノンは退いても良いさ。俺は隊長だが、そういう強制はしたくない」

「――――分かりました。ジョゼくんを助けるために、が、がんばります!」

「ああ――! マルクトに奪取されたベルゼビュートさえ破壊できればそれ以上の交戦は必要ない。分かったな?」

「分かりました!」

「りょーかいですっと!」

「よしっ、ルイ! 援護射撃を頼むぞ」

「OKです。この装騎の銃弾は重いですよー」

ルイはポツリと呟くと、その手に構えた巨大な電磁投射砲レールガンの引き金を引いた。

バスン!!

射撃音と共に、マルクトでは「徹甲弾」と呼ばれるタイプの貫徹力を高めた弾丸が撃ち放たれる。

強力なマルクトのセラドニウム装甲にある程度のダメージを与える為に、威力を追求した結果の15mmに及ぶ(マルクト外の装騎としては)巨大な銃弾。

その銃弾を発射する為にアズル蓄積容器タンクの容量拡大と、弾丸を霊莢アズルケースに収めることで不足エネルギー分を補うという形を取っているマスティマ連邦が造りだした非常に画期的な武装だ。

さらに、その弾丸に微量ではあるがアズルを纏わせることにより、アズル武器に対しての防御力は低めなセラドニウム装甲へのダメージを飛躍的にアップさせることができるという。

その代わりの難点と言うと、射撃時には移動などの動作が不可能になる点、連射は不可能な点だろうか。

「ベルゼビュートが撃ってきたぞ!」

「任せるのですわ! 魔力――――障壁!!」

ツバサの声に応え、チャイカの装騎スネグーラチカが魔力の壁を作りだした。

ギィィイイイイイイイイ

ルイ=ベルゼビュートの放った徹甲弾をチャイカの魔力が受け止める。

「!! ――――重いっですわ!?」

「チャイカ先輩!」

「大丈夫、ですわ!!」

チャイカの魔力は徹甲弾を弾き返したが、その手応えにチャイカは戸惑いを隠せない。

「この威力――――マルクト騎並――――ヘタしたらそれ以上ですわ……」

「なんですって、本当なんですか――っ!?」

その言葉を聞いて驚きの声を上げるのはアラモード。

「まさか本当に――あのARM-B1にはP-3500以上の力が……?」

「ですが、連射はして来ないですわね……連射は出来ない――――のでしょうか。とりあえず、今のデータを共有しますわ」

「なるほど――――でも、連射ができないっていうなら、同じようなフュンフトマティ砲よりは軽いもんだなぁ」

「ですわね」

「っていうかツバサ先輩! マッハ先輩が――――!!」

「先頭のARM-B1と戦闘に入ったか……」

「はい!」

言葉通り、先行しているマッハの装騎チリペッパーがマルクト諜報員の駆るARM-B1ベルゼビュート――ひいてその追撃に来たマスティマ連邦のARM-B1ベルゼビュートの1騎と戦闘に入っていた。

「チリペッパーの援護に行きましょう。敵は未知数ですから……大丈夫だと思うんですけど、多分……」

「アラモード先輩、心配しないでくださいよ。大丈夫ですから!」

「その通りですわ」

「行きましょう!」

アラモードの装騎プティを先頭にブローウィングは装騎チリペッパーを追いかける。

「ひゃっはーァ!! ブッ飛ばすんですよォォォオオオオオオ!!」

マルクト諜報員が乗ったベルゼビュートとジョゼ=ベルゼビュートの間に入ると両手に構えた16mmファイティングショットガンを撃ち放ち、ジョゼ=ベルゼビュートに接近する装騎チリペッパー。

弾け飛ぶ16mmファイティングショットガンの雨をジョゼ=ベルゼビュートは掻い潜る。

「正面から来やがるなんて、なかなか死に急いでるヤツなんですよォ!!」

「動きが単調で読みやすいんだよぉ――っ!!」

ブゥゥウウウウウウウン

静かな音と共に、ジョゼ=ベルゼビュートが手にしたウェーブバスタードソードが振動と共に、その刃の部分にだけアズルが流れた。

斬りかかるジョゼ=ベルゼビュートの1撃を、チリペッパーの脛に付いたキックブレードが受け止める。

「!! まさか、アズルなんですかァ――!?」

「アズルなんだよぉ――――!!」

青白い輝きを放ちながら、反発しあうウェーブバスターソードの纏うアズルと、キックブレードのレーザー。

その輝きを目にして、マッハは驚きの声を上げた。

「まだまだなんですよォ!!」

マッハは一旦体勢を整えようと、装騎チリペッパーを後退させる。

「よしっ、最大出力ならマルクト騎のアズル武器とも互角に戦えるっ!!」

そう確信したジョゼは、退こうとする装騎チリペッパーに対して接近。

「――――っ! オララララァ!!」

突っ込んでくるジョゼ=ベルゼビュートに対して、装騎チリペッパーは両手に持った16mmファイティングショットガンを連射する。

だが、その弾丸はジョゼ=ベルゼビュートの装甲に傷を付けながらも、決定打にはならない。

「この装騎――――今までのヤツとはダンチ過ぎんですよォ!?」

「貰ったぁぁぁああああああ!!!」

ジョゼの叫びに合わせて、ベルゼビュートの手にしたウェーブバスタードソードが装騎チリペッパーに対して振り下ろされた。

「うおっ!?」

そのウェーブバスタードソードの斬撃は、装騎チリペッパーの左肩から左脇腹あたりから、胴体を真っ二つにせんと閃いたが、間一髪、装騎チリペッパーは後ろに飛び跳ね逃れる。

「ジョゼ!!」

「マッハちゃん!!」

そこに、アレクシ=ベルゼビュート率いる追撃チームと、アラモードの装騎プティ率いるチーム・ブローウィングが到達した。

「すごい――――すごいパワーです……!」

アラモードは装騎チリペッパーからのデータを観測しながら、そんな呟きを漏らす。

アラモードの装騎プティは情報支援能力に長けたラグエル型装騎をベースにしている。

その為、他の装騎のデータを素早く収集、解析、閲覧することが可能なのだ。

「あ、あのっ、わたしも元ステラソフィア生ですが……その、戦闘はあんまり……」

「諒解してます! アラモード先輩は支援をお願いします!」

「わかりましたっぁ!」

「それとチャイカは奪取したベルゼビュートの離脱までの援護を!」

「諒解ですわ!」

「それとマッハちゃんは下がれ! さすがに危険だ!!」

「これくらい平気なんですよォッ!!」

ツバサの言葉に、だがマッハは言う事を聞かない。

残った右手に構えた16mmファイティングショットガンを撃ち放ちながら、ジョゼ=ベルゼビュートへリベンジと突っ込む。

「アレクシ隊長っ!!」

「分かってる!! あの装騎――――落とせるぞ! 良いな、ジョゼ!」

「ちゃんとついてきてくださいよっ!!!」

「マノン、援護を!」

「はいっ!!」

マノン=ベルゼビュートがその手に持った7mmレールガンを連射。

その雨に乗じて、ジョゼ=ベルゼビュートとアレクシ=ベルゼビュートが装騎チリペッパーに接近した。

2騎を迎え撃とうとする装騎チリペッパーだが、16mmファイティングショットガンがカチッと音を鳴らし動作を停止。

ディスプレイに弾切れと言う警告が表示される。

「な、なんですとォオオオ!!??」

驚きの叫びを上げるマッハ――その背後から、装騎スーパーセルと装騎スパローが駈けてきた。

「マッハちゃん、だからさがれって言っただろ!」

「マッハ先輩、邪魔です!!」

装騎スーパーセルのチェーンブレードと、装騎スパローのウェーブナイフがジョゼ=ベルゼビュートのウェーブバスタードソードとアレクシ=ベルゼビュートの超振動大型ククリウェーブグルカソードを受け止める。

「リーダー! 増援の気配を感知、しましたわ!」

「増援だって!?」

「ええ、大型の反応が2つ――――これは、まさか――――」

「大型ってことは――戦艇か!?」

「正確には、戦艇1隻、母艇1隻ですわ!」

「陸上戦闘艇が来るんですか!?」

不意に、後方から激しい銃撃が放たれた。

「危ないっ!」

「何ですか!?」

咄嗟にその銃撃を避ける装騎スーパーセルと装騎スパロー。

「増援!!」

「良いタイミングだ!」

その援護射撃にジョゼとアレクシは内心ガッツポーズをする。

射撃から暫く、1隻の陸上艇がその場に姿を現した。


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