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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:理想編
103/322

仁義なき諍い

6月21日、日曜日。

スズメとサリナ、イヴァの3人はケルンにある遊園地に来ていた。

「イザナちゃんは――?」

「何か、弟と揉めたから遅くなるらしいわ」

「へー、イザナちゃんって弟居たんだ」

「初耳さー」

3人はアイスクリームを買って食べながら、とりあえず園内をブラブラする。

そんな時、スズメはとあるものを発見した。

「あれは――――ニャ、ニャオニャンニャーです!!」

例によってニャオニャンニャーだった。

それは、子どもに人気のキャラクターのデザイン画や名場面などを集めたキャラクター展。

色々なキャラクター達の中に、スズメの好きなニャオニャニャーの姿もあった。

「本当、スズメちゃんってニャオニャンニャー好きよね」

「だからよー」

「ニャオニャンニャーは最高なんですよ!! あの熱く激しく泣ける展開の連続――――そして詰め込まれた王道とロマン! そう、あのアニメはまさしく――――」

熱く語り始めるスズメ。

だが、その傍に居た1人の少年が呟く。

「ニャオニャンニャーなんて時代遅れじゃん」

それは、子どもの割には鋭い眼差しの黒髪の少年。

歳は10歳くらいか――――どういう訳か、ツインテールを揺らし挑戦的にスズメを見上げていた。

「なん、ですって――――?」

「今の時代はカッセンジャーだよカッセンジャー。ニャオニャンニャーなんて過去の遺物」

大名戦隊カッセンジャー。

我国のテイストを取り入れた子ども向けのヒーロー番組の1つで、ブショーと呼ばれる5人が悪の将軍と戦うという特撮番組だ。

「何、ですって!? ちょっとボク! ここは私がニャオニャンニャーの魅力を徹底的に叩き込んであげるしか無いみたいですね……!」

「お姉さん、ボクとやるつもり? ヘブンズフィールド小の疾風と呼ばれるナギ様と!」

「スズメちゃん、子ども相手に大人げないわよ。やめなさいって! そこのキミも」

火花を散らすスズメとナギと名乗った少年――その間に入るサリナ。

だが、スズメもナギも1歩も引く様子はない。

そして、そんな状態の中、さらに油を投下する1言が放たれる。

「ププッ、ニャオニャンニャーとか、カッセンジャーとか――――遅れてるぅ」

「何ですってぇ!?」

「んだとぉ!?」

そう言ったのは、また見知らぬ少女。

その子も、ナギと同じくらいで10歳くらいの少女だろうか。

金色の長髪で、勝気な雰囲気を醸し出している。

「今の時代はモンペでしょ。アナタタチはモンペの人気をゴゾンジないの?」

モンペディア、通称モンペ。

日常の中に潜む様々なモンスターと友達になり、それを図鑑に記録して集めるというゲームからアニメ化、マンガ化され大ヒットとなった作品だ。

「お前、名を名乗りな!」

「わたしはニユ! ステラソフィア初等部の魔弾――ニユよ!」

ニャオニャンニャーのスズメ、カッセンジャーのナギ、モンペディアのニユ。

その3竦みの戦いが開かれようとしていた。

「良いでしょう――――それなら、装騎バトルで決着をつけましょう!!!」


スズメの大人げない提案によって、スズメ、ナギ、ニユの3人は遊園地内にある装騎バトルのフィールドに来ていた。

使用装騎はそれぞれ園内でのレンタル品。

スズメはアブディエル型、ナギはヘルメシエル型、ニユはバルディエル型にそれぞれ搭乗する。

「これは民間用のリミッター騎ですか――――久々に乗りましたね」

ステラソフィアで使われる機甲装騎はセラドニウム装甲にアズルリアクターの限界ギリギリまで上限を設定してある軍用騎なのだが、この園内でのレンタル品はシアンスティール装甲でアズル出力にリミッターがかけられた民間騎。

当たり前だが、ここ最近はステラソフィア装騎しか乗ってないスズメは少しばかりの懐かしさを覚える。

「ルールは1対1対1のサバイバル形式のサドンデス戦でいかが?」

「問題ありません!」

「良いぜぇ!」

「それじゃあ、装騎バトル――――スタートよ!」

「本当にやっちゃうなんて……」

「イヴァはスズメちゃん応援するさー」

「そ、そう……」

今回の装騎バトルは、ステラソフィアでよく行われる実戦に近い形のバトルではなく、ワンショットキル戦となる。

サドンデス戦とは装騎の胸部コックピットブロックにダメージを与えた場合、機能停止扱いとなる戦闘形式だ。

胸部以外の他部位に命中した場合は撃破とならないが、ダメージを受けた部位は使用が不可能になる。

なお、一部武装(シールドや超振動部、レーザー部)へのダメージはノーカウント扱いだ。

「行きます!」

スズメのアブディエル型はナイフを構えると我先にとナギのヘルメシエル型へと駆け寄る。

「そこよーッ!」

そのスズメのアブディエル型に向かって、ニユのバルディエル型がダガーガンを向けると、ダガーを射出した。

「甘いです!」

そのダガーを易々と回避するスズメ。

「それだけじゃあ、終わらないんだな!」

だが、そこへナギのヘルメシエル型が9mmシールドナインライフルを発砲する。

「くっ――――」

なんとかそれも回避しながら、スズメは一旦距離を取り、体制を立て直した。

「コレはサバイバル戦――――誰が誰を狙うのも自由! そして、1番厄介な敵はアナタよ!」

「ソレならボク達はお姉さんから倒す! 定石だよね」

(まぁ、隙を見せれば――)

(裏切るんだけどねー)

「なるほど、目の付け所は良いですね――――ですが」

不意にスズメのアブディエル型はグッと身を低くすると――――駈け出す。

「ダガーガンでは斉射出来ない――――つまり、バルディエルから!」

その言葉の通り、狙うのはニユの乗るバルディエル型装騎。

「そこだよ!」

そこを狙うナギのヘルメシエル型――9mmシールドナインライフルの銃撃はスズメのアブディエル型を追いかける。

「それくらい!!」

「――――あっ、ちょっと待ちなさい!」

スズメのアブディエル型はナギのヘルメシエル型の銃撃を回避しながら、ニユのバルディエル型の背後に回る。

スズメの意図を察したニユは、叫び声を上げるが――――

「あっ、しまったぁ!!」

ガガガガガガガ!!

9mmシールドナインライフルの銃撃は、そのままニユのバルディエル型装騎に命中すると、その機能を停止させた。

そして、スズメのアブディエル型はそのまま、ナギのヘルメシエル型へ急接近。

「電光っ!」

その瞬間、スズメのアブディエル型の姿が掻き消える。

「一閃っ!!」

「この技は――っ」

「烈風っ!!!」

サエズリ・スズメの必殺技――――

銀風交叉アージェントガスト・クロス!!」

刹那――ナギのヘルメシエル型の足元に十字が刻まれ、その機能を停止した。


「どうですか、やっぱりニャオニャンニャーが1番ですね!! 痛っ!」

バトルが終わり、大人げなく本気で子ども2人を蹴散らしたスズメの頭を、誰かが軽く叩いた。

「アンタ何してんの。大人げないわね」

それはその場にいた誰でも無い、だがどこかで聞いたことある声。

「サヤカ先生!?」

サリナが驚きの声を上げる。

その声の主は、スズメ達機甲科1年の学年担任――――ウィンターリア・サヤカ先生の姿だった。

「ほら、ニユ、アンタも! 何でもかんでも突っかからない!」

「でも先生ー、コイツラったらモンペなんかよりニャオニャンニャーだカッセンジャーだと分かってない。分かってないのよ! キャッ!」

ニユを肩に担ぐサヤカ先生。

「サヤカ先生、その子って」

「ああ、この子はウチで預かってる子なのよ」

「預かってる、ですか?」

サリナの言葉に、サヤカ先生は頷く。

「この子たちはみんな孤児でね。アタシが面倒見てるのよ」

「孤児――――」

親が居なかったり、戦災に巻き込まれた子だったり、異能者アウトノミアという事で親に捨てられたり――そういった子をサヤカ先生は引き取り育てているという。

ステラソフィアで講師の仕事をしているのも、給料が良いため養育費用を稼ぐためで、ゆくゆくは施設を作りたいと思っているとか。

「ほら、他の子も待っているから行くわよ!」

「えー!!??」

「じゃあね。アンタらもあまり遅い時間までほっつき歩かないようにね」

そういうと、サヤカ先生はニユを抱えたままその場を去って行った。

「サヤカ先生の意外な一面発見ね」

「だからよねー」

「というか、ナギ君だっけ? あなたもお母さんとかと一緒に来てるの? そろそろ親が心配するんじゃないかしら?」

「別にー。心配してるならいい気味だぜ!」

「――――ナギっ!」

不意に、声がかけられる。

イラだちが入り混じったような声。

その声の主は――

「ヒラサカさん!」

ヒラサカ・イザナだった。

「え、もしかしてナギ君って――――」

「全く……まさかスズメ達の所に居るとは思わなかったわ…………そう、コイツが私の弟よ」

「は? もしかしてこのお姉ちゃんたちってイザナの友達ぃ!?」

ナギのフルネームはヒラサカ・ナギ。

ヒラサカ・イザナの弟だ。

「このカッセンジャー好きってイザナちゃんの弟だったの!?」

「? 何かあったの?」

「このナギ君ったら私の好きなニャオニャンニャーをバカにしてカッセンジャーの方が良いなんて言んですよ!」

「なるほど、それはナギが悪い!!」

「ふんだ、別にイザナが何と言おうとカンケーないぜ! それに、ボクはまだ負けを認めたわけじゃないんだからな!」

「はぁ」

この様子を見て呆れたように溜息を吐くサリナ。

そこで、ふとイヴァがこんな事を口にする。

「それなら、勝負の続きをするさー」

「ええ、ちょ、イヴァちゃん!」

「まずはみんなでジェットコースターにのるさ! 一番怖がってた方の負けにするからよ」

イヴァの言葉に、スズメとナギが視線を合わせた。

「良いでしょう――――ナギ君、勝負ですよ!」

「分かったよお姉ちゃん――――ぜってーまけねーぜ!」

「……なるほど」

我先にとジェットコースターの方へ向かうスズメとナギ。

その後をサリナとイヴァ、イザナの3人がついていく。

ジェットコースター、お化け屋敷、迷路に観覧車といろんな遊具で「勝負」と言う名の遊びを楽しみ気が付けば日が暮れていた。

「楽しかったねー」

「ああ、楽しかったぜー」

「だからよー」

「いやぁ、イヴァちゃんお手柄ね……」

「全く――――」

帰るころにはスズメもナギも勝負のことはすっかり忘れており、2人とも仲良さそうに笑っている。

「本当、子どもよねスズメちゃんも……っていうか、ヒラサカさん、なんで弟が?」

「ああ、最近弟がここの遊園地来たがってるって聞いたから自慢してやろうと思ったら駄々こねられて。本っ当、面倒くさいわ」

「…………イザナちゃんも子どもっぽわね」

「なんか言った?」

「別にー」

その後、5人で夕飯を食べに行き、イザナの実家にナギを送った後、ステラソフィアへ帰りその1日は終わった。


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