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機甲女学園ステラソフィア  作者: 波邇夜須
ステラソフィアの日常:理想編
100/322

路地裏のトリックスター

とある平日。

スズメは神都カナンに来ていた。

珍しく、1人で、だ。

それも、スズメが居るのは人で賑わう繁華街ではなく路地裏。

スズメは探しているのだ。

この前、カナンに来た時に見つけた――あの、地下街を。

「ちょっと、そこのお姉さん」

路地裏をうろうろするスズメの傍に1つの人影。

黒いローブに身を包み、クロスがかけられた机の上に水晶髑髏が置かれている明らかに占い師ですと言った様相の女性。

彼女は明らかにスズメに声をかけているのだが、スズメはそれに気づいていない。

「ちょっとちょっと、無視ですか!? お姉さーん?」

スズメの視線がチラりとそっちへ向く。

だが、今度は意図的にスズメは目線をずらした。

スズメは分かっていた――ああいうのに捕まったら抜け出せなくなることに。

スズメの頭を過る、都会に出てきてからあったあんなことやこんな事…………。

メイド喫茶に連れて行かれそうになったり、ダサい服を買わされてしまったり、変なポストカードを買わされそうになったり。

「今度ヘッドホン買いに行こ……」

「お姉さん無視する気マンマンですか!?」

いつの間にかスズメの目の前まで来ていた占い師。

よく見ると、普通の机だと思っていたソレは首掛け型の机だった。

「…………何なんですか」

流石にもう逃げられないと観念したスズメは仕方なくそう尋ねる。

とりあえず、本当にヤバそうな時は本気で逃げよう。

そう決心して。

「まずは自己紹介、から――わたしの名前はケイシー。ご覧の通り、占い師よ」

「何の用なんですか――――?」

「アナタ――――不吉な光が見えるわ」

「不吉な――光?」

「ええ」

ケイシーと名乗った占い師は、そう言いながら水晶髑髏をのぞき込む。

「大いなる災い……そして、破壊――――新たな創造の為の犠牲――――――――」

「つまり――どういうことなんですか」

本気マジヤバイ」

「……ま、まぁ、そうでしょうね」

正直、半端の無い胡散臭さ。

「用ってソレだけですか……?」

「そうですねぇ……助言ですが」

「え、いや、あの――――」

「年上の人の言葉はしっかりと受け止める――――べきですねぇ」

「は、はぁ……ソレだけ、ですか?」

「そうですねぇ、言いたいことは言いましたねぇ」

「じゃあ――――私は用事があるので……」

「あ、待ってください」

その場を去ろうとしたスズメ。

だが、それをケイシーが呼び止める。

「占い代。2000テンシー」

「どこの通貨ですか!? っていうか、お金取るんですかァー!?」

「当たり前でしょ――――わたしは仕事で」

「ケイシー!!」

「げっ」

不意に投げかけられた声に、ケイシーは表情を歪める。

路地の奥から、ケイシーと似た格好をした女性が姿を見せた。

「貴女、何をしているのかしら?」

「え、えっと――オシゴトですよオシゴト」

「勝手に人を占って、法外な値段を吹っ掛けるのが私達の仕事ですって?」

「うっ――――嫌だな先輩。ジョークに決まってるじゃないですかぁ」

「ごめんね、サエズリ・スズメちゃん。コイツ変な事言いましたよね……まぁ、気にしないで。お代も要らないよ」

そう言いながら、ケイシーの先輩はケイシーの耳を引っ張りながら路地裏へと足を進める。

「あ、そうそう。私の名前はエリヤ――――また、どこかで会うかもしれないからね。お見知りおきを」

「え、あの――――」

「そうそう、スズメちゃんが探してるモノならここを真っ直ぐですよぉ~イタタタ、イタイ! イタイですって先輩!!」

路地裏に消えていった2人の姿を見て、スズメはポツりと呟いた。

「探してるモノ――――えっ」

ケイシーの言葉を信じていたわけではなかったが、それでも他に手掛かりが無いのも事実。

スズメはケイシーの言葉通り、路地を真っ直ぐ進む――――すると、そこにあったのだ。

あの、地下街への入り口が。

「って言う事があったんだ」

神都カナンの地下街で、スズメはアナヒトとひのきの林を食べながら、他愛のない話をしていた。

「変な、占い師……」

「うん――――でも、あの人たち、なんで私の名前を知ってたんだろう……」

「スズメ」

「どうしたの?」

「このお菓子――――おいしい」

そう言うアナヒトの笑顔を見ていると、スズメはここに来てよかったと、そう思えた。

「スズメ、そろそろマズいかも……」

「うん。帰るね。ひのきの林、いくつか置いていくから食べて」

「分かった――――ありがとう、スズメ。外まで、送ってあげる」

「うん!」

外に向かって歩き出す2人の背後。

建物の影に、さっきの占い師2人の姿があった。

「何か、あの女に良いように使われてるみたいで癪ね……」

「あら先輩、そんな事言うんですかぁ?」

「分かってます――――彼女のことは彼女自身が解決しないといけない――――分かってる」

「フフフ、わたしは面白ければ良いんですけどねぇ」


ステラソフィア名鑑43

挿絵(By みてみん)

名前:Shaddai Cayce Harariel

読み:シャダイ・ケイシー・ハラリエル

身長:169cm

体重:58kg

神都カナンの路地裏で占いをしている謎の占い師。

破滅的な予言をよくすることから、ある意味で人気はあるが占い自体はあまり当たらないらしい。

趣味は悪戯。

個人的な声のイメージは誠樹ふぁんさん。


名前:Shaddai Elijah Sandalphon

読み:シャダイ・エリヤ・サンダルフォン

身長:179cm

体重:65kg

ケイシーに先輩と呼ばれる謎の女性。

ケイシーが占いをしているところに現れて、突然漫才を始めるのでいろんな意味で今マルクトで話題となっている。

趣味は一人旅だが、最近はケイシーの面倒を見ないといけないのであまり行けていない。

個人的な声のイメージは藤村歩さん。


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