憧れの機甲女学園
「うーん、道に迷ったぁ……高等部の機甲科校舎ってどこなんだろ」
国立ステラソフィア女学園の一角、一人の少女が地図を片手に周囲を見回していた。
彼女の名前はサエズリ・スズメ。
この春、ステラソフィア女学園高等部機甲科に入学してきた一年生だ。
ステラソフィア女学園は学園都市を形成しており、非常に広大。
その大きさはマルクト神国の下手な都市の規模をも凌ぐ。
そのため、慣れない人間が歩くと道に迷うこともしばしば。
もっとも各学科の校舎を含め主要な施設へは、各地にある駅から機関車に乗ることで簡単に行くことが出来るのだが――――
「あっ、もしかしてあれかな……!」
しばらく歩くと、大きくそびえる校舎らしき白い施設が目に入った。
急ぎ足で正門の前へ行き、門に掲げられたその名前を読み上げる。
「ステラソフィア女学園高等部、技術科校舎……技術科かぁ」
その校舎が目的の場所では無いことに落胆し、塀に背を預けながら再度地図に目を通す。
そして、技術科の校舎をその地図の中から探し出す。
技術科の校舎は地図の下――円形を描いているステラソフィア学園都市の一番端にあった。
対して、スズメが行きたいのはその正反対の位置にある高等部の機甲科校舎。
「なんで同じ高等部なのに機甲科と技術科が正反対にあるんでしょう……」
などと独り言ちてみても仕方がない。
「えっと、技術科の校舎がここだから、機甲科は……北?」
「南だよ」
不意に背後から声をかけられ、ビクリと肩を震わせる。
振り返ったそこには、ショートヘアの活発そうな女性の姿があった。
「キミって機甲科の一年?」
「あ、はい……そうです」
「それじゃあ、アタシの後輩ってことになるんだな」
「え、それじゃあ」
スズメの言葉に、先輩はにぃっと笑みを浮かべながら言った。
「あぁ、機甲科四年、ワシミヤ・ツバサだ」
そう言いながら、差し出された右手をスズメはおどおどと握り返しながら、
「私はサエズリ・スズメです……」
と名乗ると
「スズメ……?」
ツバサは神妙な表情を浮かべた。
「は、はい、どうか――」
「ああ、キミがスズメちゃんか!」
「えっ!?」
驚くスズメに、ツバサが言葉をつづける。
「この学園は4人1組のチームを組んで、そのチームで寮の一室を使うって事は知ってるよな?」
「あ、はい。私の所属する予定のチームはえっと……」
「チーム・ブローウィング、だろ?」
「はい……え、もしかして」
「アタシがチーム・ブローウィングのリーダーだ。よろしくな、スズメちゃん」
「は、はい、よろしくお願いしますっ!」