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團眼電気  作者: Nujabes
2/2

第一話

まず最初に驚いたのは、自分で目を開ける事ができた事だ。

何の意味もないけれど、自分の手を開いたり閉じたりしてみる。

生きているのか、死んでいるのかは定かではないが、取り合えず、今俺は呼吸をしている。

そして自分の足で立っている。

何故だ?


「俺は…死んだんじゃ…なかったのか?」


確かに、あの時、自分は赤信号を無視したワゴン車に跳ねられたはずだ。

死んだはずだ。

自分が驚く程に呆気なく、人生の幕が降りたのだ。

なのに今、立っている。

何故だ?


「…そうだ…傷 跳ねられた時の傷は…!?」


そう呟き、腹を擦った。

…が、傷どころか痛みすらもなかった。

こいつはおかしい…。


「…もしかして 死んでも夢は見る…とか───」

「夢じゃないですよ」

「!?」


自分の独り言に返事が返ってきたことに驚く。

周りを見渡す…が、誰もいなかった。


「どこ見てるんですか ここですよ」

「………うわっ!?」


声の主は、俺の足元にいた。

少女だ。

少女は、小柄だったので、俺を見上げる格好でいた。

まだドキドキしている。


「き 君…いつからそこに…」

「あなたがここに来るずっと前からですよ」

「……ここは?」


少女は、少々無愛想な顔だったが、俺が質問した事により、機嫌でも直ったかように無邪気な笑顔を向けてきた。

何なのだ?


「まず貴君に名を与えなければなりません」

「貴君って…俺のことか?」

「あなた以外に誰がいると言うんですか」


当然でしょう、と少女は鼻を鳴らす。

そして、どこから取り出したのか、何やら分厚い手帳を手に取り、頁をめくった。


「貴君の名は{佃煮}です」

「……は?」

「職業は…介護さんですか… 身長は172…微妙ですね」

「えっ ちょ……っ」

「ほぅほぅ ご結婚されてるんですね 娘一人 出身地は…うげっ 都会っ子ですか 趣味は合いそうにないですね…」

「な 何で俺の事…ていうか出身地なんてモロプライバシーじゃないか!何なんだお前 何でそんなこと知って───」


言い終える前に、俺の言葉を遮るかのように、少女は俺に向かって人差し指を向けた。

顰めっ面になっている。


「言葉を謹んで下さい ここは神聖な場所なんですよ?」

「いやだから ここはどこ?」

「第二の入り口ですよ」

「第二の…入り口?何の?」

「…本当に質問の多い方ですね…少しは黙っててください」


そう言って少女は手帳を閉じ、

俺に背を向けた。


「ついて来てください」

「は…はぁ」


曖昧な返事だったが、少女は気にせず前へ進んだ。

俺は、突っ立ってるわけもいかず、渋渋後に続く。

暫く歩いていると、細長い廊下が見えてきた。

二人並んで精一杯といったような幅だ。

壁には、何やら襖が綺麗に立てられている。

襖に描かれていた柄に見覚があり、記憶の中を掻き回したところ、それは花札の絵と同じものだと気づいた。

日の丸、鹿と紅葉、牡丹と盃といった鮮やかなものばかりだ。

その鮮やかさに、思わず見とれてしまう。

「この襖は 一体誰が造ったものなんだ?」と訪ねかけたが、やめておいた。

また質問すれば、何か言われそうだったからだ。

俺はその通路を無言で、死んだことも忘れかけ、少女の後に続いた。





「ここです」


そう言って少女は足を止めた。

俺も歩くのをやめる。

目の前には、三つの扉があった。

その扉に描かれていたのも、花札の絵だった。

左には鶴、真ん中には無地の丘、そして右には日の丸が描かれていた。

何かの意味があるのだろうか。


「確か貴君の死因は交通事故でしたよね」

「…やっぱり 死んでるのか?」

「死んでなかったらここにはいませんよ…札は持ってますよね?」

「札?」


そう聞き返したが、少女は黙ったままだ。

答えてくれそうもなかったので、取り合えずジーンズのポケットを漁ってみる。

すると右の尻ポケットに、何やら小さな厚紙が入っていた。

取りだし、見てみると、それは花札で、鶴の絵が描かれていた。

左の扉の絵と同じだ。


「これ?」

「何の絵札ですか?」

「…鶴の絵が描いてあるけど」

「はぁ?またですか」


少女は呆れ返ったような声を出した。

俺の手から花札を取り、確認するかのようにまじまじと見つめている。


「…寝惚けているんですかね…」

「は?」

「いえ こちらの話です…さてまあ 取り合えず本題にでも入りましょう」


はぁ、とまたもや曖昧な返事を返してしまった。

少女は俺に視線を向け、人差し指と中指の間に絵札を挟んだ。

そして、ゆっくりと話し始めた。


「ここに三つの扉がありますね?」

「…あぁ」

「これは 貴君の第二の人生を決める為のものであります」

「第二の…人生」

「ちなみに右の扉が地獄 左の扉が天国になります」

「…で その札は…?」


俺はそう言って、少女が持っている札を指差した。


「これは…貴君が天国逝きだということを示したものです」

「決定…してるんだ?」

「……しかし…意味がないんです」

「?」


少女の発した言葉に、首を傾げた。

意味がないとはどういうことか…。

そして少女は、天国逝きの扉に視線を変え、俺に背を向けた状態で…話し出したのだ。

{理屈にならない話}を。


「……只今 天国は満杯です」

「……」

「…」

「………満」

「杯 です」

「……それは…普通じゃあり得る話…なのか?」

「そうですね…ただ 今この状態はかなり深刻で こちらも困ってるんです」

「…」


やはり、状況が飲み込めない。

ファミレスの席が満杯です、とでも言うような雰囲気で放った言葉は、まるで現実味のないものだった。

何がどうなのか、反応に困る。

…と言うよりも、今この状態がまずあり得るのだろうか。

だが、夢を見ているとも思えない。

確実なのは…俺は死んでいるということだ。

あれは断じて夢ではなかった。

俺は、渋谷のとある交差点で、ワゴン車に跳ねられた…これは間違いない。

この少女も少女で、言っている意味が徐々に解らなくなってきた。

眉間に皺を寄せ、頭の整理をしていると、少女が先に口を開いた。


「困惑するのも無理はないでしょう ここ最近 天国逝きの人間が日に日に増えてきていましてね 逝かせようにも逝かせられないんですよ」

「…」

「なので…あなたには別の場所へ逝ってもらいます」

「別の…場所?」

「Normal worldです」

「のーまるわーるど…?」


俺は混乱しているせいか、発音があやふやになってしまった。

というより、少女の話を半分聞いていなかったせいか、そのノーマルなんたらが人の名前なのかなんなのか判別がついていなかった。


「天国でも地獄でもない空間です 一見町の様子は 貴君が生きていた世界と変わりありません ただ違うのが そこに住んでいる人間は全て死人ってことです」

「…最後に…一ついいか?」

「なんなりと」

「…夢じゃ…ないのか?これは」

「…自由です どう思おうが…次なる人生を決めるのは 他ならぬ貴君なのですから」

「そう…か……ぁ…その…ここまで ありがとう…説明とかいろいろ」

「!」


俺は、少女に向かって軽く一礼した。

それを見ていた少女は、大きな目をさらに大きくさせていた。

何がそんなに驚いたのかは解らないが俺は、自然と真ん中の扉の前に立った。

本当に自然と…身体が勝手に動いたのだ。

扉は、引き戸になっていた。

錆び付いたドアノブに手を掛けた時だ。

少女が俺の背中に向かって、少々照れ臭そうに鼻の下を擦り、言った。


「特別に……貴君の幸運を祈ってあげます…まぁ うまくやっていってください」

「…あぁ」


ぎこちない会話が、俺と少女の最後だった。

俺は、ドアノブをゆっくりと回す。

そして、何が何だか解らないまま…暗くも眩しくもない入口に、一歩踏み出してしまった………。

まぁ、こんなかんじにこの物語を書いていきたいと思いますw!

主人公の名前が佃煮と、おかしな名前ですがこんなかんじの名前のキャラクターがいっぱい出てきますのでお楽しみにw

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