[壱]話(6)劣等生とバケモノ
どうも鬼無里です
よろしくお願いします
~実戦場にて~
結局、その後哉夢は帰ってこなかったため唯火・真太と尚人・沙喜の2グループに分かれて調査することになってしまった。
その唯火と真太は実戦場で聞き込みを行っていた。
実戦場は、霧ヶ峰高校誇る設備の一つで1平方キロメートルの敷地に闘技場・工房・射撃場・異能訓練場の最新設備がととのっている。
午後の授業は、基本自習になり実戦場が開放されるためにたくさんの生徒が集まっていた。
「哉夢さん大丈夫でしょうか?」
唯火は、一緒に組んでいる真太に尋ねた。
「どうだろうな~。生徒会長の料理は人殺しの道具(味が)になるほどのすごさだからからな。哉夢は耐性ができているとはいえ全部一人で食べたら死んでしまうかもしれないな」
すでにその効力を体験したことのある真太が苦笑しながら唯火に答えた。
「…ご愁傷様です哉夢さん。それにしても悠子さんは哉夢さんと仲がいいんですね~……負けないです」
「ははっ……」
やっぱり真太は苦笑で返した。
「じゃあ俺は、闘技場の方に行くから」
「はい、私は工房の方に行ってみます」
唯火と真太は途中で二手に分かれることにした。
真太が闘技場に行ったわけは好戦的な奴らが集まるところに唯火を行かせない考慮があってのことだろう。
だがこれが一つの失敗の原因だった。
~工房前~
「はぁ~。悠子さんは強敵ですね。一体どうした良いモノでしょうか」
そんなことを呟きながら唯火は工房前まで歩いていた。
「やっぱり幼なじみというモノは強力なんですかね~」
“バン”
何かがぶつかるような音がかすかに唯火には聞こえた。
「?、一体なんでしょうか?」
その音が聞こえた工房裏の細い通路に唯火は行ってみることにした。
「っ!!」
そこには、壁に打ち付けられた生徒が血を流しながら倒れていた。
「――何だァ?誰だオマエ?」
通路の奥にその声の主はいた。
その足下には同じように男子生徒が一人ボロボロになって血を流しながら倒れていた。
「ったく、よオォ。めんどくセーなホンと。一体何がしたいんですか?」
血で髪を紅くした彼は、唯火の方を振り向いた。
「……」
唯火はすでに声を出せないほどの恐怖に包まれていた。
「まァいいや、すぐに終わらすからそこ動くんじゃねーぞ」
彼女は答えられない。
彼からにじみ出てくる恐怖が彼女を包み込んでいたからだ。
「あァ、そォダ。一応訊いといてやるよ。――どこから紅く染まりたいかをよォ」
~部室にて~
「はぁ、はぁ、――やっと逃げ出せた。」
哉夢はぎりぎりのところで悠子からの脱出を成功させなんとか部室に来ていた。
「部長、おつかれ~」
「よく逃げ切ったな」
尚人と沙喜は先に戻っていた。
「あれ、唯火と真太は?」
「ん~?まだ戻ってないよ。そろそろ来るんじゃないのかな?」
「それより樹里。おもしろい情報を仕入れたぞ。どうやら、この三人が木崎と接点があるようだ」
と、沙喜が三枚写真を示す。
「どれどれ……、この三人は確かこの前けんか売ったヤツだ」
「こいつらがそうだったのか。全く噂になってなかったから知らなかったぞ」
どうやら購買にいたAクラスの男子生徒の三人だったらしい。
「そんなことよりさ~どうするの。今からはかせようか?」
「ん、まぁ。早いほうがいいだろうし――」
“プルルルルル”
携帯の着信音が響く。
【From】:唯火
【本文】
助けて
今回は間違いがなかった。
文面を見た瞬間哉夢の顔つきが変わった。
それは少しばかり殺気を放っているようにも見えた。
「一体どうした?」
それを見た先が不安そうに哉夢に声をかける。
“プルルルルル”
もう一回着信音が響く。
「……もしもし」
『哉夢、俺だ。真太だ。大変なことになった』
急いで話しているはずの真太の声が、哉夢にはゆっくり聞こえた。
『唯火がさらわれた!』
“ピッ”
その言葉を聞いたと同時に電話を切り、そっと床に落とした。
その瞬間哉夢の雰囲気が変化した。
――完全な殺気のそれと変わった。
「すまないが、こっから先は《俺》一人に任せてくれないか?」
そういって哉夢は――、彼は部室を後にした。
尚人も沙喜も言葉を発することができなくなっていた。
哉夢の携帯の通話終了ボタンがつぶれてしまっていることは誰も気付かなかった。
~S・Aクラスの渡り廊下にて~
「ほんとに木崎さんは何をしているんですかね?」
「知るか!そんなこと」
「とにかく彼にはたてつかないことが一番賢い行動です」
と、再びAクラスの三人がそこを歩いていた。
“ドンッ”
「ああ、すいません」
完全なる棒読みでぶつかったことを謝った男子生徒が目の前に現れた。
それは見覚えのある姿だった。
「ああ、勝者のみなさんでしたか。奇遇ですね、こうやってまたあえるなんて」
棒読みのまま言葉を続ける。
そして――、
「あのーすいません。勝者のみなさんもとい敗北者のみなさん。ちょっと訊きたいことがあるんで体育館裏までいいですか」
二度目の喧嘩売りだった。
~体育館裏にて~
「全く君も懲りないね。もう忘れてしまったのかい?先日ぼくたちに手も足も出ずにボロボロにされたことを」
めがねの男子生徒が口を開いた。
「……うるせぇよ、とっとと《俺》の質問に答えてくんないかな?カスのみなさん」
今度は感情のこもった声で彼に尋ねる哉夢。
「てめぇ!ナメてんじゃねーぞ!」
三人の一人が哉夢に向けて、火球を投げつけた。
さすがはAクラス、直径50センチほどの火球が正確に哉夢へ襲いかかる。
哉夢はそれをさけられずに直撃してしまった。
が――、
哉夢に直撃した火球は水のようにはじかれ粉々に砕けて消失した。
「な!」
驚愕が目に走る。
「ならこれならどうだ!」
もう一人が哉夢に向けて雷撃を発射した。
今度は反応する暇さえもなく直撃し、砂煙が上がる。
だが――、
結果は同じだった。砂煙が消えるとそこには何事もなかったの用に哉夢は立っていた。
「くっ!どういうことだよ!」
悪態をつく。
「早く答えてくれませんか?」
うんざりしたような口調で哉夢催促した。
「甘いよ」
眼鏡の生徒が手をつきだした。
その瞬間哉夢は後ろに吹っ飛び地面にたたきつけられた。
空気の塊を圧縮し哉夢に投げつけたのだ。
もちろん反応することはおろか感知することもできなかった。
「あれぐらいの攻撃を防いで油断しているからそうなるんだよ。全く劣等生(Eクラス)ごときが僕たちAクラスに勝てるわけが――!」
彼は言葉を続けることができなかった。
――ユラリと、彼の目の前で哉夢が立ち上がったのだ。
あれだけ派手にたたきつけられておきながら全くの無傷――土埃一つついていなかった。
「ば、馬鹿な!防ぐこともできずに完全に直撃したはずだ!」
「…うるせぇよ、カス。いい加減しろ。ただでさえ苛立ってちゃんと制御できてねぇんだからさぁ。殺されたいのか?」
そしてゆっくり彼らに近づいていく。
「さっさと喋ってくんねぇかなぁ」
「く、くそーーーーー!!!」
最初の一人がさっきの三倍はある大きな火球を投げつけた。
「うぜぇ」
今度は、手で軽々しくはじかれた。
「…そうかいそうかい。そんなに喋るのが嫌なのか。だったら喋らせてやるよ」
その瞬間彼の背後から黒い何かが立ち上った。
それやがて形を作り、直径5メートルを超えるほどの闇のように漆黒の炎が現れた。
「ヒッ!ば、バケモノめ!」
眼鏡の生徒が恐怖の声を上げた。
「――確かに今の《俺》は平凡で平凡なただの人間じゃあねぇな。今はだだの――」
そこで哉夢は彼らをにらみつけるように言い捨てた。
「――バケモノだ」
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