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災悩人への贈り物  作者: 鬼無里 蟹
何やら続く[弐]話へ
26/26

[?]話くだらない裏事情

遅くなりました。

~いつまでアパート描写から脱しないんだよ!!~


「と、そんなわけでよろしく頼むぜ、

 樹里くん」

と、別に何でもないことのように、些細な誤差のように話す鬼無里だが、

「ッ!!…アンタ一体何が目的だ!!」

もちろんのごとく、樹里と悠子は驚愕を隠しえない。

鬼無里が近くにいることがどんな結果を生むかは、もう既に身をもって体験済な二人である。

「……何のことはない簡単な話だよ。

 さっき現れた『トワイライト』もそうなんだけどさ、

 樹里くん、

 君を周りにいろいろと物騒な、

 それでいてかなり厄介な人たちが集まりつつあるんだよ。

 今まではよかったんだけどね、

 ほら、

 この前狭間さんに頼まれ事をさせられただろう?

 その時【闇夜の支配者】の召喚術を使ったようだけどさ、

 【地獄の業火】や【嘘つきの剣・勇気の剣】ぐらいまではよかったんだけど、

 流石に【神を喰らいし魔獣】(フェンリル)はマズイ。

 いくら狭間が表を封じたところで裏のモノや、

 場合によっては運命そもそもが動きかねないことを君はしたんだ。

 実際【終焉を喰らうモノ】のところまでは情報が届いてるしね。

 

 オマエの能力がどれだけ人を傷つけるなんてもう既に解っているだろう?

 それこそ吸血鬼なんてとるに足らない、

 何せ本物の「化物」で比喩とかじゃあなくてリアルに「災害」なんだからさあ。

 なぁ?災悩人、

 今までに何を行ってきたか、

 「忘れました」とは、

 流石に口が裂けても言えないよねぇ。」

 「ッ……!」

 ――あくまで笑いながら楽しそうな口調で言葉を遣う鬼無里だが、その言葉に仕込んである刃は軽々と哉夢を追いつめていた。

 冷や汗がすうっと頬を流れる、春の暖かい季節の筈なのに背筋が凍えそうなくらいに寒くなる、手のひらに汗がにじむ、上手く手を握れないのは自分が震えているからだと途中で気づいた。

 だがそんな哉夢の心情を知ってから知らずか、

 ――いや鬼無里には全く関係がないのだろう。

 存在自体がそういった風にできている彼には、この世界の全てのモノから拒絶されるように創られている彼には、他人の心情などを考える必要はなかった。

 過去も、

 現実も、

 未来も、

 真実も、

 虚実も、

 才能も、

 愚鈍も、

 正義も、

 悪も、

 意味も関係も価値も、

 平等も公平も格差も差別も、

 ――そして運命でさえ、


 彼は平気で踏み潰していく、うっすら笑いながら人を人と見ない目線で見つめて、

 

 言葉でその人の存在をぐちゃぐちゃに陵辱する。


「今まで君のそのうっかりとした災いで何人を犠牲にしてきたんだい?

 どれだけの人が君の能力で墜とされたんだい?

 そしていつまでそんなことを続けていくのかなぁ?

 

 この××××××――」


――おそらく、誰一人としてその言葉を聞くことはできなかったであろう。

 たとえそれが言葉を放った鬼無里自身でも同じことだった。

 バキッ!!

 いつの間にか距離を詰めていた悠子が鬼無里の顔を思いっきりよく殴り飛ばしたからだ。

 完全に振り抜かれたその拳は、異能の力など全く持って使われてなかったためただの女子高生の拳にしかすぎなかったが、高校生(?)としては小柄な鬼無里を殴り飛ばすには十分な威力だった。

 ドシャッ、と地面に叩き付けられた鬼無里を見下ろす悠子の視線に隠すつもりのない荒々しい怒りがこもっていた。


「……たとえ、助けてくれた恩人だとしてもサイくんを侮辱するのだけは許さない。淡々と、まるで全てを知っているかのように語っても、結局はあなたはサイくんじゃあないのだから何も知らないでしょ!!」

激昂しながらもその瞳はうっすらと潤んでいる。

「サイくんが抱えている気持ちを何一つ知らないくせに!!」

今にも溢れてしまいそうなほどに瞳には水が溜まりだす。

「悲しみも!苦しみも!寂しさも!切なさも!怖さも!傷も!傷みも!弱さも!不甲斐なさも!劣等感も!そして何よりもその後悔を!あなたは何も知らないくせに!!」

――そして、とうとう限界を超えたその涙腺は、

「そんなあなたなんかにサイくんを責める資格なんて無いッ!!!」

大粒の涙の雫をこぼして、決壊した。


 彼女は人間を極度に嫌っている。

 それ故にほとんど人に興味を持たず、喋ることも少ない。

 生徒会長の仕事として挨拶や祝辞などを述べるとき以外は学校ではその声を聴くことすらできない。

 ただ、唯一の例外がいた。

 それが樹里哉夢であった。

 彼女が哉夢へと向けている感情は、もう幼馴染みや、親友のそれを遙かに越えている。

 信頼どころの問題ではない、心酔していると言っても過言ではない。

 愛や、恋、などの一言では片づけられないほどに彼の存在を求めている。

 彼女は、哉夢がその気になればこの世界の破壊にだって手を染めるだろうし、死ねと言われれば喜んでその命を投げ出す。

 それは彼女にとって哉夢は、この面倒でくだらない世界の中で、ただ一つだけ特別と言える存在だったからだ。

 だから殴り飛ばした。

 たとえ命を救ってくれた恩人であろうと、たとえ旧知の仲だった人物であろうと。

 その矛先が少しでも哉夢へと向いたのであれば既に彼女にとっては敵だったからだ。

 

「……悠子」

「……逢坂生徒会長」

「……」

この悠子の大胆すぎる行動には、流石の常葉でさえ驚いた。

 それもその筈である。先程あれだけの魔法陣を一瞬にして破壊してしまった得体の知れない鬼無里の力があるにもかかわらず、全くの怯えも見せず突っ込んだのだ。

 無謀すぎるが、それは単なる無謀ではない。

 もう既に、彼女は覚悟をしていた。

 哉夢のためというだけで彼女は、死ぬための覚悟が出来ているのだから。


「……ははは、

 やっぱり変わっていないねぇ悠子ちゃんも。

 初めてあったときからずうっと樹里くんだけの味方だ。

 こうも変わっていないと中学時代のことを思い出すよ。

 樹里くんが一番一生懸命だったし、

 悠子ちゃんが一番心配していたし、

 幸が一番幸せを願っていたし、

 鋼希が一番がんばっていた、

 {ボク}はそれらを引っかき回すことぐらいしかできていなかったねぇ。

 いやはや、

 流石に樹里くんのために向けてきたその愛とも言える殺気には{ボク}は反応すら出来なかったよ」

と、そんなことを言いながら鬼無里はいつの間にか立ち上がりいつものように笑う。

口元に悠子に殴られたときに口を切ったようで小さく血痕が付いてはいたが、全く痛がる素振りを見せなかった。

 いや、と言うよりは鬼無里優夜という人物は本当に『痛み』を感じているのかどうかさえわからない。

 果たして鬼無里には『痛み』の感情は残っているのだろうか。

 そんな疑問を生じさせてしまう。

 それほどまでに異端な存在なのだ。


“プルルルルル…”

 張りつめた剣呑な雰囲気の中、携帯の着信音が響いた。

「もしもし」

 奇しくもその発信源は鬼無里からによるモノのため、流石の悠子もこれ以上の糾弾はしなかった。

『もしも~し☆鬼無里さんどうも山ノ内です。』

携帯電話から陽気で朗らかな声が流れる。

「やあ、和地くん。

 こうやって報告してくると言うことは何かしら情報を掴んだってことでいいのかな?」

『そゆこと♪大方の目星はついたね。後は首謀者を取り潰せばいいだけなんだけどさ、それまでに潰した下っ端からこれまた面白いことが手に入っちゃったわけで☆


 どうやら鬼無里さんの言うとおり常葉ちゃんが“クロ”でほぼ間違いないね~』


「そうかいありがとう――じゃあ、

 また後で。」


“プチッ!!”


「さてと、

 そろそろちゃんとした仕事をしようかな」

 電話を切ってそう呟いた瞬間――鬼無里は哉夢と悠子達の目の前から消えていた。

「え?」

 気の抜けた声は誰のモノだったか、それは分からずじまいに終わることになる。

「…ぐ、ぐぎ……っ!!」

「【終焉を喰らうモノ】にはね、

 どんなことがあろうとも破っちゃいけないルールがあるんだよ。

 それは、

 信じるな(・・・・)

 そして、

 裏切るな(・・・・)だ」

 なぜなら鬼無里が常葉の首を掴み持ち上げていたからだ。

 男性としては小柄な鬼無里ではあるがその見た目を裏切るように軽々と右手一本で持ち上げている。

 だが、驚くべきところはそこではなく、鬼無里が【終焉を喰らうモノ】の一員――仲間の一人である常葉の首を絞めているということだった。

「{ボク}はね、

 これでもまがりなりにリーダーを務めているんだよ。

 だから当然ルールを破った君を放っておけないし、

 見逃すわけにもいかないんだ。

 そして、

 リーダー権限で場合によっては処刑(・・)も許されているんだよ。

 どうかな、

 {ボク}はあんまり話すことは得意じゃあないんだけど理解できたかな?

 つまり、

 今ここで君の、常葉緋美の生涯を終わらせたって良いってことなんだけど。」

「……がっ!!」

 どうやら手に力が更に加わったらしく常葉からは苦しそうな声が漏れる。

「ただでさえ君は“樹里哉夢の護衛”という任務を失敗させているんだ、

 独断専行がすぎるよ。

 本当に」

 常葉の声をモノともせずに鬼無里は絞め上げていく。


「――コロシちゃうよ」


「……やめろ!!」

 鬼無里優夜の凶行とも言えるその行動を止めたのは、鬼無里と同じようにいつの間にか消えており常葉を絞め上げている鬼無里の右腕を掴んだ、樹里哉夢であった。

「それ以上は、やめろ。」

と、哉夢の言葉をすんなりと驚くほどあっさり聞き入れて常葉を放す鬼無里。

「…優しいねぇ、

 本当に樹里くんは優しいねぇ。」

 睨み付ける哉夢と不適な笑みで言葉を返す鬼無里。

「君は彼女が何をしたか分かっているのかい?

 彼女はねぇ、

 {ボク}らを裏切って君たちの情報とそこにいる樹里くんの仲間の吸血鬼を狩ろうとしたんだよ。」

「だけどソイツは――」

「まだ何もやってはいない。

 確かに彼女はまだ何もしてはいないよ。

 だけどねぇ、

 今回はあまりにも異常事態が多すぎたんだよ。

 {ボク}は彼女に樹里くんの名前、

 年齢、

 そして通っている高校だけを教えたんだ。

 だけど彼女は樹里くん達とあまりにも縁を持ちすぎている。

 一昨日命令して今日転校してきたばっかりなのにいくら何でも速すぎる。

 正確柄を考えてもフライングスタートみたいに速すぎる。

 本当はもっと長期的なモノにしようと思ってたからさ、

 あまり情報を与えずに段々とお互いを知っていく仲みたいにしようとしていたんだ。

 だけど彼女の行動はおかしすぎた。

 いや、もちろんそんなことはおくびにも出さずに水面下で行動していたんだろうけども、

 それにしたってちょっとばっかり不自然だった。

 最初は違和感程度のものだったけどすぐさま疑問に変わったよ。

 だから保険としていろんなことを調べてみた。

 主に彼女が生まれてから現在に至るまでであった人物について。」 

と、そこで常葉の表情が変わった。

 表情に動揺が浮かぶ。

 恐らく生い立ちを調べられたことに反応したものであろうが、哉夢にとって常葉が見せる始めての動揺であった。

「これがさぁ、

 面白いことにヒットしたワケなんだよ。

 

 なんとまぁ、

 育ての親がいわゆるテロ組織の幹部だったんだよね。」

「……ッ!!」

常葉が鬼無里を睨み付ける。それは動揺より怒りが混じってるよう哉夢には見えた。

「ま、

 別に今回の事件に直接的に関わり合ったわけでもないからどうでも良かったんだけど、

 問題はそのテロ組織のお仲間さん達にあった。

 

 株式会社Absolutely。

 表向きには鉱山なんかで使うドリルやらクレーン車やらを製造してるけど、

 実態は違う。

 政府が黙認している兵器製造元だよ。

 


 ――そして少なからずやあの研究所と繋がっていた。」


「…………え?」



「そう、

 懐かしき{ボク}たちと哉夢くんが出会ったしまった凶言学者の研究所。

 

 人間兵器製造所――【厄災の原点】カラミティ・ファクトリィーだよ。」

どうも鬼無里です。


誠に勝手な話になるのですが、災悩人への贈り物は一旦凍結することにします。


お粗末様でした。

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