[弐]話(10)理不尽の始まり(下)
どうも鬼無里です。
さてさて、[弐]話クライマックスです。
よろしくお願いします。
~鬼無里優夜~
「やあやあ、みなさんお久しぶりです。
どうも鬼無里優夜です。
あまりにもこの小説の作者が更新速度が遅いから此処まで待つ羽目になってしまった可哀想なキャラクターでーす☆」
と、{ボク}は懇切丁寧に、約1ヶ月ぶりの登場でボクが誰だか分からない読者の方たちへと向け、「{ボク}ってこんなキャラです」的なことを話していた。
こんなことをいきなり話していたらイタイ人じゃないかって?
――それのついては大丈夫。
「少なくともこの場所には誰もいないからね」
なんて。
まぁ、誰もいないのにこんなことをいきなり口走っていたら流石にアウトかな?
「気にしない、気にしない」
そんなわけで、
――閑話休題――
今{ボク}は、霧ヶ峰市にある、とある木造アパートの前に来ています。
何故そんなところにいるのかって質問には追々答えていくことにしよう。
「それにしても、
やっぱりこの町はいいところだね。
いや、正確には市か……。
とにかく空気は澄んでいるし、
商店街は和気藹々としていたし、
路地裏では金髪のにーちゃん達がお金をくれたし」
何をとってもいいことずくめだ。
流石は逢坂家当主、逢坂銀鬼が直接納めている街なんだなと、とても感心してしまう。
何せ{ボク}のような異常が一人混じってることなんて、どうってこと無いぐらいに超能力者が多い。
逢坂銀鬼が学園長をやっている、霧ヶ峰高校の影響であることは一目瞭然だった。
全国で五本の指に数えられる、超能力者育成機関のエリート校。
「ま、御託や建前を並べたところで所詮は化け物育成機関であることには変わりないんだけどね」
結局のところ、{ボク}たちのようなヤツにしてみれば、一日中薬漬けにされて、体の至る所にメスを入れて弄くり回し、理科室においてあるホルマリン漬けの瓶みたいな培養液の中に閉じこめられ、毎日毎日軽く体長が四メートル以上はあるような巨大生物やワケの分からない殺人マシーンと戦わされ、挙げ句の果てにリアルな戦場へと送られることになるあの研究施設となんらかわりが無い。
――{ボク}はおもむろにポケットから携帯電話を取り出した。
ディスプレイには17:37と時刻が表示されていた。
太陽が西に傾き、そろそろ日没といったところだろう。
「このまま此処に立っててもしょうがないし、
そろそろ始めるとするかな」
そのまま携帯電話でとある番号を呼び出し、通話ボタンを押す。
“プルルルルル”という通話音が三・四回流れ、繋がる。
「……誰だ、こんな時にこの秘匿回線を使って掛けてくるヤツは」
「……う~ん、
そんな白々しい演技をしなくてもいいと思うんだけど。
この電話番号で掛けてくるヤツといったらあの軽薄な男か{ボク}ぐらいしかいないだろう?」
「っ!!貴様は――」
「あーごめん、
実はあんまり君とは話している時間はなっかたりするんだよ。
{ボク}も結構忙しい身でね、
モタモタしていたら後輩に迷惑を掛けてしまうからね。
だからできるだけ口答えせずに用件を飲んでくれるとうれしいんだけど?
まぁ、
君なら知っているだろう?
{ボク}がどんな存在かなんてさ。
ねぇ、
逢坂銀鬼くん?」
「……用件は何だ?」
「よろしい」
ボクはそこでわざとらしく間を空けて勿体ぶる。
「……そこまで難しい話じゃあないんだけどね。
まず今回の事件の解決のために、
{ボク}の異能の使用許可を出してもらいたいんだ。
銀鬼くんほどの権力者ならそれくらいのこと造作もないだろ?
無許可で使ってもいいんだけど、
ほら、
何か後ろめたいじゃん。
だったらちゃんと警察の許可が有ればそのあたりの心配も必要なくなるだろう?」
ま、それでも非合法なんだけどね。
「次に、君ら逢坂家の人間を何人か寄越して欲しいんだ。
{ボク}の予想だと二人ぐらい重傷人が出てくるはずだからさ、
それも病院じゃあ治せない系の傷を負ってる。
多分、
一人はとてつもなくラブラブカップルである治癒師がいるから問題ないけど、
もう一人の方はこれ……おそらく四巡の化け物の一人だ。
もともと忌み嫌われやすい四巡の家系だから、
多分治療してもらえないと思うんだ。
そんなわけで、
君ら逢坂家の《白》で天使とかそのあたりの治癒系能力者をお願いするよ。」
「……何をする――」
「あ、ちなみに場所は霧ヶ峰市にある《久々津》っていうアパートの敷居一帯ね。」
「貴様ッ!一体何をするつもりだ!?儂のシマを荒らした――」
「黙れ」
五月蠅いなぁ、ホントに。
「こっちは時間が無くて苛々していることぐらい察せないの?
せっかく{ボク}がこの事件を解決して、
尚かつ被害を最小限度にとどめてあげようとしているのにさぁ」
老人の激昂とか本当に苛々するんだよね。
「それとも、
君たちが{ボク}らにしたことをいちいち説明してしたほうがいいのかな?
流石にあのことを許せるほど{ボク}もできた存在じゃあないんだよ。
{ボク}が被害に遭った全員を率いてこの国を潰したって構わないんだよ。
――だからさぁ、」
そろそろ{ボク}が君を殺したくてしょうがないほどキレていることぐらい解ろうか。
逢坂銀鬼くん。
「……」
そこは流石の老人。
年の功って云うのかな?経験から引き際を心得てるなぁ。
雷堂くんみたいな若者とは格が違う。
と、適当に関心したところで話を元に戻す。
「それじゃあ手配をよろしく。
できるだけ迅速にした方がいいよ。
ぐずぐずしていたら『デットエンド』なんて、
オチになるかもしれないからね。」
まぁ、もう必ず『バットエンド』になるオチにはなってるんだけどね。
「…この、化物めが」
冷静沈着ながらこうやってしっかり怒りの炎を燃やしている。
実に老人らしい――頑固ジジイだ。
だけどね、その言葉はね、
「よく、君たちみたいな存在が、
{ボク}らにそんな言葉をかけられるよね。
――化物以下の屑が」
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「さてと、交渉も終わったとこだしそろそろ仕事をしようかな。」
ディスプレイを確認すると17:46と表示されていた。
気づけば液晶画面にヒビが入っていた。
少し強く握りすぎたかな?
また買い換えなきゃいけないな。
「それじゃあ、準備も整ったことだし可愛い後輩を助けにでも行こうかな」
{ボク}は先程路地裏で金髪のにーちゃんから譲り受けた鉄パイプを両手で強く握りしめた。
懐かしい感触。
少しだけゾクゾクする。
――そして、頭の上まで高々と挙げた鉄パイプを思いっきり振り下ろした。
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~逢坂悠子・樹里哉夢~
逢坂悠子に意識が戻ったのは、ちょうど大量の魔法陣が展開された瞬間だった。
もちろん、先程まで抜け殻のように放心していたので状況把握などまるでできていない。
しかし、彼女は一つだけ把握していることがあった。
「……サイくん」
微かに唇を動かしてぽつりと呟き、目の前にある黒く焦げた樹里哉夢の肉塊を見つめた。
いくら哉夢の怪我を治してきた悠子でも、これほどまでに破壊されている哉夢は見たことがなかった。
既にそれには原型が無く、人間だったのかすら判らないほどであった。
倒れた体の上半身を起こし、どうにか哉夢のそれへと手を伸ばそうとする。
精神的なショック故か、足は言うことを聴かない。
しかし彼女は這い蹲ってでも進み、どうにか哉夢にその手に捕らえる。
「サイくん」
それを両手で抱えてしっかりと抱きつく。
そして、彼女の背中から再び天使の翼が生えてくる。
その翼は彼女の強さであり、弱さであり、異常であり、彼女自身であった。
「私が必ず治してみせるから。私がサイくんを――」
フラッシュバックのように先程の光景が頭の中によみがえる。
何より印象に残るのは――、
あの死を喜んだ優しい顔だった。
「私はサイくんがいないと何にもできないから、いつも迷惑掛けてばっかりで、いつも困らせて、抱え込むような作り笑いまでさせて、…そんなんだから、生きるのをつらくさせてるのかもしれない。 …だけど、私は、サイくんを助けたい。…生きていてもらいたい。
だって私は、サイくんのことが……」
翼が輝きながら二人を包む。
今まで以上に慈愛に満ちた光だった。
しかし、同時に魔法陣の方も発動を開始した。
強大な光が更に彼らを包む。
そして――、
「大好きです」
強烈な閃光が放たれた。
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~とある木造アパート~
衝撃は一瞬だった。
しかしその一瞬で全員に驚愕が走る。
夕日が完全に山へと沈む丁度その時に、この敷地全体を覆っていた結界が壊され、それと同時に門の方から鉄パイプを持った少年が現れた。
これによって、二人の魔術師が警戒したため魔法陣の発動が遅らされる。
鉄パイプを持った少年が敷地に一歩踏み出す隙を与えることになった。
そして、足が一歩ついた瞬間――
ピーーーギーージィーーガーytgdサカウysァオ
そこにある全ての存在へとノイズが鳴り響いた。
二人の魔術師だけでなく、金髪の少女と、刀を持った少女も耳を塞ぐ。
頭が割れるだけでなく、体の全ての器官が歪んでしまいそうなほどの不協和音。
それはこの場にある空間にも例外なく通用し歪みが始まる。
そんな、唐突に起こったノイズが鉄パイプの少年によるのモノだと解った瞬間、全員が彼『敵』と見なすような感情を持つ。
――それとほぼ同時に、彼の背後からのびた黒槍たちが発動し掛けたまま停止していた魔法陣を紙を破るかのごとく貫いた。
あろうことか、敷地内に散らばっていた全ての魔法陣の真ん中を1㎜の狂いもなく的確に貫き通していた。
しかし、その驚愕的な光景は彼の二歩目が地面についたと同時に幻想のように消え去った。
ノイズも、
黒槍も、
魔法陣も。
驚愕。
停止。
呆然。
絶句。
沈黙。
――そして訪れるは、静寂。
だが、この中でただ一人だけ――、鉄パイプをぶら下げた少年だけが動きを再開する。
右手に持った鉄パイプを得意げに前へと突き出し、歪むように口角を吊り上げて笑みを浮かべ、言葉へと紡ぐ。
「……さて、理不尽の開始だよ。」
その口調は、純粋な子供のように楽しそうだった。
「……どっ、どういうことだ!!」
次に口を開けたのは――いや、開くことができたのは灰色の髪をした男の魔術師だった。
「…誰だ、テメェ。一体何をしやがった!!」
「その質問は“誰”じゃなくて、
“何”ってした方がこの場合は適切だよ。
まぁ、答えるとするならば、
“存在しないはずの存在、”
“理不尽”
“不幸な物語”
こんなところかな?
ま、そんなことは一先ず置いといて。
これでどうやら形勢逆転ってヤツかな?
危機一髪ってところだったけど」
「ハッ!!一人ぐらい増えたところで――」
「まあまあ、そう決めつけるなよ。
ヨーロッパ魔術結社トワイライト所属、コードネーム|《爆風》《バースト》くん。」
「なっ!!」
灰色の魔術師がたじろぐ。
「いや、だってほら、
もう日が暮れたろう?」
「…どういう意味だ」
今まで口を挟まなかった蒼い髪をした魔術師の少年が問う。
「……」
あえて何も云わずに彼は二人の魔術師の後ろを指さした。
そこに存在するのは、先程まで原形をとどめていなかった――
「……ありがとう、悠子。迷惑を掛けたね。とっても嬉しかった。だから、僕も――《俺》も、
――生きることにしよう」
【闇夜の支配者】、災悩人――樹里哉夢が全身に黒い炎を纏いながら立っていた。
区切りが悪いですがこれで一応[弐]話のくらいマックスとなります。
拙い文章ですが読んでいただき誠にありがとうございます。
感想等がもらえると、作者にとってはかなりの喜びになります。
そんなわけで、お粗末様でした。




