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災悩人への贈り物  作者: 鬼無里 蟹
何やら続く[弐]話へ
16/26

[弐]話(5)注意!この物語には残酷な描写が含まれています。

どうも鬼無里です。


最近いろいろ忙しく全く投稿できませんでした。

すみません。



拙い文章ですがどうぞよろしくお願いします。

~逢坂の記憶より~


 あれは確か八年前、私が小学三年生の時の頃だった。

 宿泊学習の登山かなんかで、バスで山道を登っているときだ。

 綺麗な紅葉が見えるポイント(私は実際には見ていないが)を通りかかったときだったと思う。

 

 カーテンを閉めている景色を覗いてた私は、ふと一人の男子が気になった。

 別に好意があったわけではない。

 ただ何となく私に近い感じがしたからだ。

 どんな感じかと聞かれると何とも答えずらい。

 共通点があるとすれば孤独という感じだろうか?


 そんな中、私は事件に巻き込まれた。

 マグニチュード7.0の大地震が発生し、バスの中にいる全員にも分かるほどの大きな揺れが生じた。

 バスは急ブレーキをかけ、バス車内は同級生らの悲鳴が響き渡り、その中の大人を含めたほぼ全員がパニックに陥った。

 

 私もかなりのパニックに混乱しそうになった。

 だがそこで彼の姿が見えた。

 そんなバスの中でも彼だけが全く動じずに窓の外の景色を眺めていたのである。

 

 こちらからでは顔を見ることはできないが、その後ろ姿からは少なくともパニックに陥ってるようには見えなかった。


“ゴゴゴゴゴゴ…”


 そんな観察をしている最中に胃の底からこみ上げるような地震とは違う地響きが聞こえた。

 その地響きに正体はすぐに分かった。


 彼が眺めているそれ――、

 

 地震によって引き起こされた崖崩れが土砂となってこのバスへと迫っていたのだ。


 土砂の一つと思われる巨大に岩が彼をめがけて飛んできた。

 その大きさから避けることは不可能だ。

 

 一瞬――刹那の時間がすごく長く感じた。


 少しだけ彼の横顔が見えた。


 私は見た、見えた、見てしまった。


 彼のその目は全くの不安や恐怖を感じていなかった。

 それどころか今の状況のことを全く気にしてないようにも見えた。

 

 その目は、この状況でさえも当たり前のことだと、この世界はこういうモノだと、理解しているようなような目だった。


 「くだらない」


――そんなことを考えてるような顔をしながら、


“グシャリ”


――と、彼はその巨大な岩に潰されていった。


⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔⇔


~逢坂の記憶その後より~


 どのぐらい経っただろうか?

 暗闇の中、私は目を覚ました。

 私は生きていた。ほぼ無傷の状況で。

 まぁ、自分で傷を全て治しただけなのだが。

 どうやらバスの中にあまり土砂が入ってきてないためにある程度空間ができていた。

 何故そんなことが分かるのかというと、バスの前側――、つまりは運転席のあたりに少しだスキマがあり、そこから日光が差し込んでいるからだ。

 何とかそのスキマから脱出できないだろうか?

 いや無理だな。

 スキマは小さすぎるし、広げるにしても私は力はほとんどなく、岩をどかすことはできない。


 結局手詰まりのようだ。

 助かったは良いものの私の力ではここから出ることはできない。

 しょうがないからここで助けを待つことにしよう。

 

 静かだ……

 なんだかこういう時って嫌でも自分の無力を思い知らされる。

 私の異能の能力は病や怪我を全て治すことができるというものだ。

 どんな難病であっても、生存できないような大怪我であっても、死なない限り治すことができる。

 まぁ、他にもいろいろなことができるのだが、ざっくり話すとこんなところだ。

 

 病を治し怪我を癒す、

 

 すごい能力ではある。


 しかしそれまでだ。

 

 

 それ以外何もできない。


 岩をも砕くような力や、闇を照らす光を出すことなんてできない。

 

 ご覧の通り私は無力だ。


 こんな能力を持っていたって今この状況では誰も救うことができない。

 こんな能力を持っていたって誰一人守ることはできない。


 ただ私は治すだけ。

 体を元の状況に治すだけ。

 

 そんなことをしても過去は変わらないし、取り戻せない。

 

 何も起きなかったときの体になるだけで、起きたことには変わりはないのだ。


 いけない!いけない!


 この考えは駄目だ。

 何が駄目かは分からないけどこの考えは駄目だと分かる。

 

 だけど、そう思えば思うほどにどんどん考えてしまう。


 落ちていく、何かが私から落ちていく。


 自分で作り出した思考迷路の落とし穴にはまりそうになり、それを必死で防いでいると


“ガララ……”


岩が動くような音が聞こえた。

 それと同時に荒い息づかいが聞こえた。


 どうやら誰かが目を覚ましたようだ。

 

“ピチョン”


今度は何かがしたたり落ちる音が聞こえた。


 水?まさかこんな場所であり得ないし。


“ズズズ……”


今度は何かを引きずる音が聞こえた。


 そしてそれらの音はゆっくりとこちらへ近づいてきていた。


 ナニかは分からない。

 でもナニかはしっかりと近づいてきていた。


 そしてそのナニかは私の目の前で止まりその姿がさらされた。


 「ッ……!」


 さてこの状況をどうやって説明したらいいのだろうか。

 はっきり言う、私は今混乱している。

 混乱しすぎて逆にこの状況で冷静を保てていた。


 まずこのことを説明する前に、それがナニかを理解する前に、先に注意事項を話しておこう。


 この状況の説明には残酷な描写が含まれております。

 苦手な方は読み飛ばしてください。


 何故私は頭の中でこんなこと思っているのかと疑問を抱き、それを答えた。


「一体全体――何が起きてるの?」


 さてまず、私の目の前にいるのは何か?と言うところから入っていこうと思う。


 これは多分……、恐らく人間だと思われる。


 こんな疑問というか、予測混じりの答えになってしまったわけは別に暗くて見えづらいかった……、というわけではない。

 

 むしろ光に当たってよく見えている。

 

 見えているからこそ疑いたくなる。

《本当にこれは人間なのか?》


 改めてここで警告する。

 注意!この物語には残酷な描写が含まれています、と。


 まずその人らしきものと思われる何かの顔、―いや、頭が半分無かった。

 潰れていた。

 ぐちゃぐちゃに、滅茶苦茶に、左半分だけ。

 目と思われる部分にはただ穴らしき形跡が残っているだけ。

 耳も頬も髪の毛の約3分の1もぐちゃぐちゃになって消えていた。

 皮膚だけが消えたわけでもなく、そこにあった脳、目玉、骨、それらが消えていた。

 そして残っている右半分から脳と思われる肉塊と、頭蓋骨と思われる白い破片が突き出ている。

 もちろんぐちゃぐちゃに潰れていたが。


 次に腕だ。

 右腕はとれていた。

 いや、この言い方には語弊があるかもしれない。

 右腕はあることにはあった。

 ――ぶら下がった状態で。

 詳しく説明すると、肩と肘のちょうど真ん中あたり、まぁ注射を打つあたりだろうか。

 そのあたりで腕がちぎれていて、皮一枚でぶら下がっている状態だ。

 切り口は無理矢理引きちぎられているという感じで、肉片と骨がギザギザとした形になっていた。

 ちぎれかけている部分は血の通ってない色に変色していた。

 

 左腕は右腕ほどではなかった。

 まぁ、強いていうのならば小指と薬指がなかったのだけれども。

 

 胴体は原形をとどめていた。

 右の胸から白く尖ったモノが突き出していた。

 左脇腹に鉄パイプのようなモノが突き刺さっていた。 

 それぐらい。


 足は二つともついてはいた。

 だが右足は折れていた。

 服の上からでは分からないが多分二箇所折れている。

 太股のあたりと、すねのあたり。

 そのためその右足を引きずって歩いていた。

 

 出血の量が異常だった。

 多分ほとんどの血を出してしまっている。


 ありえない。

 私は、私の能力故にたくさんのけが人を見てきた。

 だから、こんな頭を半分無くして、右腕がちぎれて、骨が胸から飛び出し、鉄パイプがお腹に刺さり、右足が二箇所も折れて、そしてこれだけの血を流しながら、


 どうしてこの人は生きている。

 

 どうしてこの人は立っていられる。


 

 混乱に混乱を重ねて、私は何故かこの目の前にいる人の正体が分かった。

 

 目線だ。


 この世界の全てがくだらないという目線。


 そう、彼だ。

 岩で潰されたはずの彼だ。


「えっと、君は確か逢坂さん?」

彼は、半分しか無い口を動かし私に尋ねた。

 

 私はそこで思いだした。

 この彼の名前を。


「…はい。…確かあなたは、樹里哉夢さんですよね?」

お粗末様でした。



ちなみにこの過去編はまだまだ続きます。

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