[弐]話(3)くだらない面倒な世の中で
どうも鬼無里です。
多忙のため疲れて書けずに投稿がかなり遅れたことをお詫び申し上げます。
そんなわけでよろしくお願いします
~樹里哉夢の過去1~
今日は小学三年の宿泊学習の出発日だ。
なんでも山登りをするとか何とかでバスで山道を移動中だった。
俺はそんなバスの中で、綺麗に紅葉する10月の景色を窓から眺めていた。
浮かれているわけではない。楽しむなんて論外だ。
俺の目は、せっかく旅行の和気藹々とした空気を全く感じさせないほど冷え切り、この景色をくだらないモノとして完全に見下す目だった。
実際には景色だけでなく、周りで楽しく喋るクラスメイト、疲れで寝ている教師、バスガイドや運転手に至るまで俺はくだらないモノと認識し、見下していた。
くだらないモノたちが面倒ごとを起こしそれを対処する、それがこの世の中だと俺は考えていた。
俺には災いと呼ばれるほどの力がある。
災いというと大げさに聞こえるかもしれないがこの力を発現させたときの見るも無惨な光景を今でも覚えている。
狂気が狂気を呼び周りがどんどん紅く染まっていく。
俺を見る人々の目は完全に恐怖し、俺を化け物扱いしていた。
その力は今では抑えられている。
そうすることで完全に背負い込んだ。
そして俺は今、平凡で平凡な人間としての生活を送っていた。
いや平凡とは言えないかな。世の中をこんな目で見る小三が他にどこにいるというのだ。
それ故だろう。俺はクラスメイトとはあまり好意的な関係ではない。嫌われてるかもしれない。
別にいじめられているわけではない。声をかけてくるヤツもいる。
避けられているのだ。
恐怖しているのだ。
樹里哉夢という未知なる存在に。
当たり前だ。
それが全て、気が狂ってしまいそうになるほどまともな俺の日常で、くだらない面倒な世の中だ。
まぁ、もう慣れてしまったから問題は何もない。
――忌み嫌う目線や、視界からはずされている環境にも。
ふと目線をバスの中に向けてみると、俺と同じように一人孤立している存在がいた。
確か逢坂という名前だったと思う。
彼女は俺と同じようにクラスメイトから目をそらしバスの外側を向いている。俺と違うのは窓にカーテンが掛かっていて景色は見えていないということ、人を見る目が完全なる拒絶の目だったということだ。
彼女の目は人を完全に嫌悪し侮蔑し拒絶している。
端から見ている俺でも解るくらいに明らかなモノだった。
似ている感じはした。
だがすぐに俺とは違う種類だと解った。
そんなことを考えているとバスガイドが右を指しながら何かを言い出した。
クラスメイトたちがその方向に目を向ける。
どうやら絶景ポイントを絶賛通過中のようだ。
――くだらない、心底面倒だ。
俺の感想は小三にあるまじきそんな乾いたモノだった。
そんなこんなで何もないまま終了すると良かったがそんな期待は簡単に覆される。
バスの中でも解るくらいに地面が大きく揺れた。
咄嗟に運転手がバスの急ブレーキを踏み回転する。
バスの車内からはクラスメイトたちの悲鳴が上がる。
バスが止まっても揺れは止まらなかった。
皆がパニックで混乱する中、俺はそんな様子を見ながら一人ため息をついた。
はぁ、そうなんだよなぁ。何も起こらずに終わる訳ないって、毎回何かしらトラブルが起こるって、しっかり体験して来て理解していたはずなのになぁ。
災いを持っている俺は極度に災いを呼び起こしやすいってことぐらい基本中の基本なのになぁ。
何で忘れちゃうんだろうなぁ。
窓からそとを覗くと山肌が震えているのが見えた。
次の瞬間、山肌が崩れて大きな岩が俺の目の前に迫っていた。
避ける暇さえないほど一瞬の出来事であった。
全く、月曜発売の雑誌を買うのが遅れたらどうすんだよ。
そんなことを嘆きながら、俺――樹里哉夢小学三年生は、
“グシャリ”
と、大きな岩の下敷きになったのであった。
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~霧ヶ峰高校の昇降口より~
はっ!!
今のは走馬燈ってヤツか!?過去のことを一瞬にして思い出した。
僕は、下駄箱に寄りかかってどうやら走馬燈を見ていたらしい。
たぶんギリギリ悠子と常葉から逃れることができ安堵し、また疲れ切っていたためここで一瞬気を失っていたようだ。
ていうかかなりヤバイ状態だったてことだよな。登校だけで気を失って走馬燈を見るってどんだけだよ!
そんなことを思いながら僕はゆっくりと立ち上がった。
また嫌な記憶を思い出されたもんだ。
何でこんな記憶を思い出してしまったのだろうか。
「常葉緋美か……」
アイツがどこまで僕のことを知っているのかは解らない。でもあの時のことを知っているというのならこのこともすでに知っているのかもしれない。
八年前のことになる僕の大きな傷のことを。
まぁ、誰がどう僕のことを知っていてもかまわない。
結局は僕自身の僕だけの問題なのだから。
思い出してしまったからには向き合わなければならないな。
そうやって背負い込まなければ。
いつまでも見ない振りをしているわけにはいかない。
そうやって立ち向かわなければ。
それは僕の過去なのだから。
それを思い出しちゃんと向き合えるのは僕だけなのだから。
誰かが僕を知って、僕の過去を知って、僕の代わりに向き合わないように。
向き合って、立ち向かって、そして受け入れる。
その過去も僕の一つなのだから。
誰かが傷つくその前に。
そんな端から見れば痛すぎることを考え、自分でも結構後悔しながら、それでも決心を固め、僕は教室へと歩き出した。
……途中でどこかから教師が何かを止めようとする声と、人間ではない何かの声と、無感情な声と、その後最後に教師の声が断末魔をあげているのが聞こえたがは軽くスルーすることにした。
お粗末様でした。
と言うわけで哉夢くんの過去編なんですが、この中に僕の大好きな「BUMP OF CHICKEN」のある歌の歌詞から引用したワードがあります。
そんなわけでBUMP最高!!!!!