後編
さて、数日後、悠三親子が佐藤家にやってきました。懍を預かってくれてありがとうと言いました。直人の母ちゃんは、懍のことを散々悪く言いました。大人が愚痴を言い合っている間に、直人と悠三は、縁側で話をしました。
「懍ちゃん預かってくれてありがとうな。家の御袋がそう言ってたわ。で、どうだい、楽しかったかい?」と、悠三は言いました。
「全然!恐ろしいやつだよ!あのドラゴンも恐ろしいわ!」と、直人は言いました。
「そうか、やはり駄目だったか。同じ血統の人間として、母ちゃんが、助けてやりたいっていっとったけど、無理だったんやな。」
「それどういうこと、」と、直人は聞きました。
「あんなあ、」と、悠三は言いました。「やつは家でとても不幸なんや。懍ちゃんの背は見たか?色々描いてあったやろ、」
「ええ。怖かった。恐ろしい怪物が描いてあったわ。」
「で、その、彫物に混じって、三つか四つ生傷があったの判った?そこだけはほらなかったんや。彫ったとき、やられたばっかりやったから。」
「そういえば、、、。」と、直人は思い返して見ました。青龍の顔に目が行ってしまったのですが、肩の辺りに、刃物で切られたような傷があった気がしました。
「思い出したか?あれは誰からやられたものか判るか?」
「ということはつまり、、、。」
「そうや、つまりや。あれは懍ちゃんのお袋さんが、やつがどこにも行かない様にって、やったんや。」
「どうしてそんなに!」
「嫉妬や。懍ちゃんは、親父さんのことうんと好きやったや、でも、親父さんとお袋さんが離婚して、親父さんはおいだされちまったんや。懍ちゃん、大胆にも、1人で飛行機のって、親父さん所まで会いに行って、、、。あと、わかるやろ。」
「う、うん、、、、。」と、直人はなんとなくわかるような気がしました。
「だから、直人さん達が、幸せに暮らしとるから、羨ましかったのやろ。」
「そうだね、、、。」直人は、あの時さよならを言ってあげればよかったと思いました。