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補欠は異世界でも甲子園の夢をみるか  作者: クリオアサト


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第5.1話 森奥からの帰還途中

第5.1話


木から降ろすときに結んだロープで、サクはB級冒険者を背中に固定して背負っていた。

重さは分散され、両手が自由になる。杖も使える。


自分より大きな男を背負って森を歩く。

そんな姿は、なかなか人に見せられたものではないな。

とサクは思った。


おそらく増援の冒険者たちは森奥の入口までは来ているはずだ。

そこまでは兎に角、背おって行かなければならない。


「俺がつくまで、少なくとも4匹は仕留めてたな。たいしたもんやで、B級は。

初めての森で山犬の群れ相手にして、なかなか出来デケへんで」


森は静かだった。

背中の男は一言も発しない。


サクはB級冒険者に声をかける。


B級冒険者は返事をしない。痛みと恥ずかしさと悔しさで言葉が出てこないのだ。


「木の上に逃げたんは正解や。山犬のやつら木には登られへんからな。熊やったらダメやけど。連中、木に登るからな」


B級冒険者は答えない。

しばらく沈黙がつづく。


サクは意を決したように口を開く。

「足も痛いやろうし、寝られてへん。疲れてるやろう。

それでもな、聞かせてほしいねん。」

「森に入った経緯と森奥でどんな事があったのか。

初心者が森奥で何を〝やらかすか”知っておきたいねん」


「手数料の一部や思うて、話してくれへんか」


それでもB級冒険者は口を開くことできなかった。

距離にして行程の半分くらい歩いたところで

「なめていた……。」

ぽつりと、背中で声がした。


「王都や北の依頼をこなしていた自信があった。

だから森に入って獲物を狩って帰ってくるだけだと思った」

と話はじめた。


それから森奥のことを途切れ途切れ言葉にし始めた。

「イノシシを矢で射貫いて、追跡を始めた。

そこから藪に入って……」

「……」


B級冒険者はそこからの動きを断片的に言う。

藪に入ったこと。

蛇にかまれたこと。

イノシシを見つけたが、山犬に囲まれていたこと。

簡単に追い払えると思ったこと。

ふくらはぎをかまれて出血したこと。

山犬が増えてきたこと。

木の上に逃げたこと。


B級冒険者はそれらを胃から絞り出すよう話した。


「……まぁ、生きて帰れたんや。

それだけで運はええ方やで」

サクは慰めではなく、本心から言った。


そしてつづける。

「蛇に噛まれたこと、山犬にふくらはぎを噛まれたこと、これは装備をしっかりしとれば防げる事や。

蛇や毒虫は藪とか沼地に潜んどることが多い。

多少重いとかあっても、牙の通らん靴を履くことやな。」

「山犬にしても膝関節くらいまで覆える防具とかあれば問題ない。

それとあいつら、獲物をみつけたら囲んで、しつこく足狙ってきよる。

まず、動きを止めて、弱るのを待つんや」


「群れて狩りをするケモノは山犬の他になんぼかおるが、基本、相手にせんことや、逃げること」

「それでもやらなあかん時は、届かんところからできるだけ削ることが必須やな。

あんたは短弓が使える。これを工夫して、腕磨いてもっと使えるようにすることやな」

サクは説教する訳ではなく淡々と話す。

「装備も情報も準備は大事ちゅうことやな」


しばらく沈黙の中、

「腹へったな」

頭を掻きながら、ぽそっとサクが言う。

「急いで出てきて、食料忘れとったわ」

……どの口がゆうとるんや。

と思いながら苦笑いし、歩をすすめていると、そろそろ森奥の入口につく。




「おおーい。着いたでぇー。ここにおるでぇー」

森の奥の入口は門や立札がある訳ではない。ただ漠然と冒険者たちが経験則から場所を知っているのだ。


すると横の林から声をかけながら4人の冒険者が顔を出した。

「おぉ、無事だったか。だめかもしれんと思ってたよ」


「どっこいしょ……」

と腰を下ろし、B級冒険者を降ろした。

「おおきに、みんな、ありがとさん。ところで水と、なんか食いもんないか?」


一人の冒険者が自分の背嚢からパンと水の入った革袋を差し出す。


「おぉありがとう」

サクはパンを2つに割り、片方をB級冒険者に渡した。

「あんたも食べとき」

それから

「これ飲んどき、痛み止めや。ちょっとは楽になるやろう」

と腰のポーチから赤黒い丸薬を取り出し渡した。


B級冒険者はそれを受け取りながら

「ランスだ、ランスという」

と自ら名乗った。


サクは『にやっ』と笑顔を返し、「サクや」と答えた。


そして冒険者を振り返り、

「ちょっと手伝って、即席の担架つくるねん」

サクは冒険者を引き連れて林に入った。

しばらくするとまっすぐの枝を数本と蔦を刈ってきて、持ってきたロープ、そして冒険者たちの上着などを利用して、簡易的な担架を作った。


そして、ランスをのせ、サクが先導して険しい道を町へ進む。

邪魔な枝や草はサクの持つ”フクロナガサ”で刈っていく。

担架は前後を2人で持ち、残りは警戒と担架の交代要員。


ランスはサクが与えた薬が効いてきたのか、助かった安心感と睡眠不足のためか、

担架の上でウトウトしていた。


そしてしばらくすると、後追いの後追いの形で3人の冒険者が現れた。

彼らはサクが先日持ってきた台車を引っ張ってきていた。

ギルドマスターが持っていくように言ったそうだ。


「さすがギルドマスターや、わかっとる。これで獲物を回収できるで」

サクはランスを4人にまかせ、台車を引き連れた3人と森に戻っていった。



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