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第3話『進撃の初心』

 変化の少ない森の中を、ただ移動するだけなのは辛い。

 僕は魔王のスマホを借りて、転生前に最後まで見ることのできなかったアニメの続きを観ながら歩いていた。


「おい、テュエよ。スマホ見ながら歩くのではない」


 魔王にそう指摘されるが、一旦観てしまえばアニメの続きが気になって仕方ない。


「やっぱ進撃の巨人、面白いなあ」


 そう呟くと、それまで僕を注意していた魔王は、明るく声のトーンを上げた。


「なんじゃ、進撃を観ておるのか! あれは確かに面白い!」


 そして聞いてもいないのに、ウンチクを語り出す。


「進撃の巨人1つで、講談社を立て直したとまで言われておる作品じゃからなあ」


 そういう、作品の背景なんかに興味はない。

 僕は魔王のウンチクを無視した。


「やっぱ、主人公が格好いいんだよなー。主人公のエレン・イレイザーガンが巨人に──」


 僕の言葉を魔王が遮る。


「テュエよ。イレイザーガンではない。エレン・イェーガーじゃ! イレイザーガンはギニュー特撰隊のリクームの必殺技じゃぞ!」


「マニアック過ぎるだろ、そのツッコミ」


 そんなサブキャラの必殺技名、よくすぐに出てきたな!


 僕は気を取り直して、進撃の巨人の感想を続けた。


「まあいいや。主人公もいいけど、ヒロインもいいんだよなあ。ヒロインのミタカが立体起動装置──」


「ミ・カ・サ! ミカサじゃ! 三鷹は吉祥寺の次の駅じゃ!」


「魔王……あんた異世界人なのに、そのツッコミはキモいな」


 ……ってか、関東人にしか分からないネタぶっ混んで来るなよ。

 ちょっと言い間違えただけじゃん。


「エレンとミカサと言えば、もう一人の幼なじみのピクミンが超巨大──」


 僕の言葉を遮り、急に歌い出す魔王。

 歌の冒頭を歌った魔王は、ツッコミを続けた。


「って何を歌わせるんじゃ! ピクミンじゃない! アルミンじゃ!」


「いやあの、オジサンしか分からないネタやめてくれる?」


 魔王は眉間にシワを寄せて返した。


「じゃあもう歌ってあげない!」


 なんでいきなりツンツン妹キャラ演じた!?


「オジサンの妹キャラとか、需要全くないけど大丈夫?」


「ちょっとした照れ隠しじゃ! 追及するでない!」


「じゃあ追及しないから、魔王もすぐ突っ込んでくるのやめてね」


「それはおぬし次第じゃな。おぬし、キャラの名前をよく覚えておらんではないか」


 それは心外だ。

 名前間違えたのなんて、ただの冗談だよ。


「えー、覚えてるよー」


 そう返すと、魔王は不適な笑みを浮かべてこちらを見た。


「本当か? じゃあ、人類最強と言われる人物の名前は?」


 いきなりクイズ!?

 ふん。そうやって僕が答えれなかったらマウント取るつもりだろう。

 でも、楽勝だね、こんなクイズ。


「そんなの簡単だよ。超人気の人だし」


「誰なんじゃ?」


「人類最強でしょ? あれだ」


 人類最強と言えば、この人しかいない。

 僕はドヤ顔で答えた。


「吉田沙○里」


 僕の答えに、即座に驚愕の顔で魔王が返す。


「霊長類最強ではないか!」


 僕は腹がよじれて痛いくらいに大声で笑った。


 くっそ! やられた!

 今の魔王のツッコミは上手かった!


「魔王、僕たち、漫才師目指せるんじゃない?」


 笑いながらそう言うと、魔王は怒鳴った。


「何が漫才師じゃ! ワシらが目指すべきは世界を闇に覆うことじゃ!」


 いや、それ目指してるの魔王だけだから。


「僕、それ手伝うなんて言ってないからね」


 僕の言葉を聞いているのかいないのか、魔王は前方を指差して言った。


「町が見えてきたぞ! シャーラプールの町に到着じゃ!」


 前方を見ると、魔王の言うとおり町が見えた。

 レンガ造りの家がいくつか見える。

 あまり大きな町ではないようだけど、とりあえずご飯!


 僕と魔王は、無意識に歩くスピードを上げ、森を抜けたのだった。

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