07手紙
「それじゃいっくよー!! えい!!」
「やったな、えーい!!」
「水を入れて、えいっ!!」
「やあんっ、当たったぁ!?」
私は神殿の孤児院の子どもたちと水鉄砲で合戦をしていた、そこは情け容赦は無用の戦いの場だった。皆で水をかけられて、かけかえして楽しく遊んだ。遊んだ後は濡れた服を夏の太陽で乾かした。
「おや、ティア。まだ服が濡れていますよ、よく太陽に当たりなさい」
「スフィア大神官様、もう大丈夫です。乾きました」
「ティアは孤児院の子どもと仲が良いですね、良い事です」
「はい、スフィア大神官様はどうされたんですか」
「私の大切な妹であるティア、貴女を抱きしめにきました」
「ふふっ、スフィア大神官様はお兄さまのようですね」
スフィア大神官様に抱きしめられていた、でもよくあることだったから気にしなかった。スフィア大神官様は今年で二十六歳だ、なんでも十歳という若さで大神官になったらしい、上級の回復魔法が使えるのが大神官になる決め手だった。それからスフィア大神官様にはずっと大事にして貰っていた、恋愛イベントは回避したけど私の兄のようなものだった。
「そういえばティアに手紙がきていましたよ」
「私に? 誰かなぁ」
「沢山きていたのでお友達ではないでしょうか」
「はぁ、一応読んでみます」
そうして私は手紙の束を渡された、一番豪華な手紙はウエイン王太子から王宮の秋のパーティの招待状だった。私は行きたくないなと思いながら、他の手紙を読んでいった。アクシス第二王子からも同じような手紙が届いていた、あとはキルシェ先生から夏休みが終わってからのスケジュールだった。リーリア様からは美しい華の絵が描いてあるしおりが届いていた、本を読むわたしにとっては有難かった。ロイドくんからも丁寧な近況を知らせる手紙がきていた。
「おー、こりゃいろんなところから手紙がきてるなぁ」
「サシュ、なんでいるの!?」
「俺は大魔法使いだぞ、星の乙女の魔力を辿るなんて簡単なのさ」
「それで何の用? 魔法の授業はないんだけど」
サシュが何か喋りかけた時、スフィア大神官様がこちらに来られた。そうして私とサシュを見て、首を傾げていらっしゃった。
「神殿の結界に穴をあけてくれたのは貴方ですか?」
「あんなちゃっちい結界、後で塞いでおくよ」
「結界はもうはりなおしました、不愉快です。どうぞ、お帰りを」
「せっかく星の乙女に会いにきたのに、もう追い返されるのかよ」
サシュは神殿から放り出されていた、結界に穴をあけて入ってきたのだから無理もなかった。私はウエイン王太子やアクシス第二王子からの招待状に、失礼にあたらないようにお断りの返事の書き方をスフィア大神官様に聞いた。スフィア大神官様は綺麗な字でお断りの返事を書いてくれた。
そして夏休みも終わり私は学園に行くことになった、スフィア大神官様が寂しそうな顔をしていられた。でも仕方がないので私はアストリア学園へと帰ってきた、帰って来てそうそうにウエイン王太子とアクシス第二王子から詰め寄られた。
「秋の王宮のパーティに不参加とはどういうことだ、ティア」
「兄上も私も楽しみにしていたのに」
「どうもこうもお手紙に書いたとおり私はパーティはお断りです」
「しかもお前の字じゃなかったぞ」
「いったい誰に代筆させたの」
「スフィア大神官様です、お綺麗な字を書かれるんですよ」
私はぎゃあぎゃあと煩い二人を放っておいて、私の安息の地である図書室へと逃げ込んだ。いつものようにリーリア様がいらっしゃったので、私は私なりに花を描いたしおりをプレゼントした。リーリア様は僅かに微笑みを浮かべて受け取ってくださった。
「ありがとうございます、大事にしますよ」
私はリーリア様ってマジで天使と思いながら自己学習に励んだ。途中でサシュがきて魔法の授業に引っ張って行かれた、相変わらず教室の風景が地獄のようで、これはサシュの機嫌がかなり悪いことを示していた。
「サシュったらどうして機嫌が悪いのかしら」
そうして階段を歩いている時のことだった、誰かに突き飛ばされた。私はとっさに両手をついて前転しコロコロと転がった、立って確かめてみたがどこにも怪我はなかった、私を突き飛ばした犯人はもういなかった。そういうことがあったので私は背後に気をつけるようになった。
「危ないなぁ、階段だって下手に落ちたら死ぬんだぞ」
私はブツブツいいながらまた図書室にもどった、リーリア様が読書に夢中になっておられた。さてロイドくんの出現によって私は誰のルートも攻略していないことが分かった、さすが私だ絶対に逆ハーエンドなんて目指さない、目指さないから私を突き飛ばしたりするのは止めて欲しかった。そうして数日後。私がまた階段を歩いていたら背後からの手が見えて誰かいたので捕まえた、捕まえたのはシンシア侯爵令嬢だった。
「シンシア侯爵令嬢、今私を突き飛ばそうとしましたね」
「なんのことかしら、全く分からないわ」
「誰を想っての行動か知りませんが、その想い人に告白したほうが良いですよ」
「うるさいわね、相手は王太子殿下よ、そんなこと軽々しくできるわけないじゃない!!」
ああ、この子はウエイン王太子が好きなのかと思うと、私の胸は全く痛まなかった。むしろ私に来た招待状をこの子にあげたいくらいだった、とにかく証拠もなかったのでシンシア侯爵令嬢は去っていった。
「ああ、ウエイン王太子のせいでこんなことに」
「俺がどうかしたか?」
「うわっ、どうしてここにいるんですか!?」
「お前を待っていたからだ、寮まで送りたい」
「いいえ、別に送っていただかなくて結構です」
「いや絶対に送る、以前に転んでいたな、お前はそそっかしい」
結局私はウエイン王太子に寮まで送ってもらった、寮にいる女性たちの視線が怖かった。私は寮に戻った後、シンシア侯爵令嬢をどうしようか考えた、考えに考えたのだが何も良い考えが浮かばなかった。今後も背後には気をつけようと思いつつ眠りについた。
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