05紳士
「ちょっと歩いただけで伯爵家がおとり潰しって王宮って怖いとこだわ」
私はいつものように図書室で自己学習をしていた、リーリア様がいるがいつもどおり本に集中していらした。この世の天国はここにあった、もうすぐ夏休み前の試験だし、しっかり勉強しておきたかった。試験でいい結果を残せば、良い就職先に巡り合えるはずだ。スフィア大神官様は学園を卒業したら帰ってきなさいと言ってくれてた、帰って神官になるのもまぁ一つの手ではあった。
「だから俺の授業を忘れんじゃねぇよ」
「サシュ」
「さっさと行くぞ」
「はーい」
私はサシュにみつかって魔法の授業を受けることになった、これはこれで面白いのだが私は自己学習を続けていた。サシュは幻覚魔法で教室をその時の気分で変えた、今日は何かなと思っていたら王宮の中だった。この前飽きるほど見たし、良い思い出が何もなかった。
「そういや、お前らパーティをするらしいな。羽目を外さないようにしろよ」
ええ、何それ初耳なんだけどまたパーティか、もうあんな体験は十分だ。でも周囲はパーティで盛り上がっていた、誰とパートナーを組むのかなどと皆そわそわしていた、私は先手をとった、リーリア様にパーティのパートナーをお願いしたのだ。
「私にですか? 他に良い方はいらっしゃらないのですか?」
「リーリア様にはご迷惑でしょうけど、どうかお願いします!!」
「はぁ、分かりました。それではドレスを贈っておきますね」
「いやいやいやそこまではお願いできません、制服で出ますわ」
「エスコートする女性にドレスを贈るのは当然のことです」
「うっ、それではお借りします。きちんとお返しします」
リーリア様は思ったよりも紳士でいらしゃった、ドレスの返却も必要ないと言われた。そうして私は図書室を閉めた後に、リーリア様と空き教室でダンスの練習をした。この前踊ったばかりだったから、思ったよりは上手にできた。もちろん他の攻略対象、ウエイン王太子やアクシス第二王子には文句をいわれた。自分たちが誘うつもりだったのにと愚痴られた、キルシェ先生にまでそう言われた。出来の悪い生徒を指導する良い機会だったのにと言われた、サシュにもお姫様にしてやったのにと笑って言われた。
「わぁ、綺麗。これを私が着るの?」
「お嬢様のお世話を承っております、もちろん貴女様が着るドレスです」
リーリア様が送ってくれたドレスはシンプルでとっても綺麗だった、宝石も僅かでドレスの美しさを引き立たせるものだった。私はドレスを着せられ、化粧をされて髪に宝石をつけられた。そうして私の寮の前でリーリア様が待っていてくださった、彼は驚いたように目を見開いていた。
「それではリーリア様、参りましょう」
「妖精のようですよ、ティア」
「それはさすがに褒め過ぎです」
「いいえ、今日の貴女は妖精のようだ」
私は照れながらパーティ会場に向かった、私とリーリア様の組み合わせを見て皆が驚いていた。リーリア様も格好いい紳士服を着てらしたから、それで驚いているなと私は思った。そうして学園のパーティは始まった、皆それぞれパートナーをつれてきていて学生服の者などいなかった、リーリア様のおかげで私は恥をかかずにすんだ。そうしてダンスの時間になるとリーリア様と踊った、練習していたとおりに綺麗に踊ることができた。何故か他の攻略対象たちの姿が見えなかった、探してみたら窓際の椅子に座り込んで何か喋っていた。おかげで私はリーリア様以外の攻略対象たちと話さないですんだ、パーティも終わり私は寮までリーリア様に送って貰った。
「今日は楽しかったです、リーリア様」
「私もですよ、こんなに楽しかったのは初めてです」
「ありがとうございました、リーリア様お気をつけて」
「私こそありがとう、ティア。貴女は素晴らしい人です」
べた褒めされて照れ臭かったが精一杯の笑顔で応えた、リーリア様は紳士で私に何もしなかった。この紳士さを見習って欲しいと他の攻略対象たちを思った、あの連中ときたら特にウエイン王太子とアクシス第二王子だが、目を離すと手にキスとかをするのだ。次に学園でパーティがあったら、またリーリア様を選ぼうと思った。
「お前はリーリアの奴が好きだったのか、ティア」
「私はリーリア様を尊敬しているだけです」
次の日に教室に行ったらウエイン王太子からそう言われた、だから私は本当にリーリア様を尊敬していると言い返した。
「尊敬が愛に変わることはあるからねぇ、私とは踊りたくなかったのかい?」
「アクシス第二王子のお相手なんて、恐れ多いことですわ」
ウエインが黙ったと思ったら今度はアクシス第二王子から絡まれた、私には恐れ多いとお断りをした。またその次にはキルシェ先生が絡んできた。
「君とリーリアは付き合っているのか、もしそうなら職員会議にかける」
「私はリーリア様と付き合っていません、ただ尊敬する人なだけです」
そうしてキルシェ先生が黙ったと思ったら、転移魔法でサシュが現れた。そうして教室で魔法の授業を始めた、それはいいのだが今日は教室の光景が地獄のようだった。教室の風景はサシュの機嫌で決まるから、何か余程面白くないことがあったのだろうと思った。そうして魔法の授業が終わると私は図書室へ速やかに移動した、リーリア様はいつもどおりお変わりなく本に集中していた。私がペコリと頭を下げると、自己学習に良い本達を渡してくれた。これぞ紳士、どこかの誰かさんたちに見習って欲しかった。
「寮の食事って美味しいのよね、攻略対象もいないし和むわ~」
私は寮の昼食をとったらまた図書室へ行って自己学習した、リーリア様は相変わらず顔色一つ変えなかった。これだよこれ私に無関心、なんて素晴らしいことだろうか、私はリーリア様を褒めたたえたいところだった。
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